写真提供:マイナビニュース

写真拡大

「桃太郎」や「浦島太郎」といえば、日本人で知らない人はいないおとぎ話だ。では、この2つの物語の舞台が愛知県だったという伝説があることはご存知だろうか? 知られざる犬山市の「桃太郎伝説」と武豊町の「浦島太郎伝説」を追ってみた。

○遠くから見ても分かる「桃太郎神社」

まずは、愛知県犬山市に伝わる桃太郎伝説から。物語の舞台とされる場所は現在、神社となっている。その名も「桃太郎神社」。鳥居の形は全国でも珍しい桃の形をしていて、見るからに強烈な印象だ。

「桃太郎神社は昭和5年(1930)に建立されました」と話すのは、元宮司の川治(かわじ)桃光さん。その名前が示す通り、桃太郎神社の生き字引的な存在だ。川治さんによると、神社が建つ場所から500メートルほど奥に入ったところに「桃山」という場所があり、元々はそこに桃太郎が祀られていたそうだ。

桃太郎神社建立の背景には、犬山の観光地化がある。1912年に名鉄犬山線が開通。同時期に、木曽川が日本八景に選ばれたことで、多くの観光客が犬山に押し寄せるようになった。加えて、童謡作家の野口雨情さんが桃太郎伝説の話を聞きつけて、面白がって「桃太郎音頭」という歌を作ったのだ。そんなこんなで、「桃山から移転して人の集まりやすい場所に桃太郎神社を作ったんです」と川治さん。

○物語の名場面も!

この周辺一帯には、桃太郎伝説を思わせる地名がたくさん残っている。例えば木曽川上流には、桃太郎の桃が流れてきたとされる「大桃」。桃太郎と鬼が取っ組み合いの戦いをしたとされる「取組」。戦に勝って勝どきをあげた山のふもと「勝山」などなど。ちなみに、「鬼ヶ島は木曽川の支流、可児川の中洲あたりとされています」と、川治さんは教えてくれた。

そもそも木曽川から顔を出す珍岩奇岩はまさに鬼のすみかを連想させる。木曽川を眺めていると「(この地が物語の舞台である節に)すごく現実味があるぞ」と思ってしまうほど、迫力のロケーションなのだ! さて、この桃太郎神社、みどころは何といっても「超」シュールなコンクリート像だ。

おじいさんおばあさん、桃から生まれた桃太郎、成長した桃太郎、お供のキジ・サル・犬、そして鬼。キャラクターたちがストーリー仕立てに点在しているが、どれも何ともいえない微妙な出来栄えなのが面白い。作者はご存知、浅野祥雲さん。そう、B級アートマニアの中では有名な作家だ。この神社の宝物館も強烈である。鬼のミイラやガイコツ、謎の「珍宝」など激レアでB級な展示物の数々に頭もクラクラ。是非ともこのパラレルワールドに接していただきたい。

●infomation
桃太郎神社
愛知県犬山市栗栖字古屋敷

○神社には玉手箱まで保管

続いて、浦島太郎伝説に移ろう。この場所があるのは、知多半島の太平洋に面した武豊町だ。今でこそ海岸沿いに工場や火力発電所が並ぶ武豊町だが、昔は海が近くて亀がよく浜に来たのだろう。犬山の桃太郎伝説よりかなり地味だが、ここにも浦島太郎伝説にまつわる地名が数多く残されている。

名鉄の駅もある「富貴」という地名は、かつて「負亀(おぶがめ)」と呼ばれていた。その所以(ゆえん)は、浦島太郎がこの地で亀を助けて「亀におぶさって」龍宮城に行ったこと。また、太郎が住んでいた辺りには現在では「浦島橋」がかかっているが、劇中、太郎は「浦島川」を下って竜宮城に向かっていったとされる。ちなみに、乙姫様が太郎を出迎えたとされる「乙姫橋」は、強烈なピンクに塗られていて龍宮城を連想させてくれるぞ。

また、亀の墓がある「真楽寺」のほかにも、知里付神社の中には浦島太郎をまつる「浦島神社」があり、何と太郎が乙姫様からもらった玉手箱まで保管されているという。真贋のほどはかなり怪しげだが……。

それにしても、何ともコンパクトに名所がまとめられているものだが、武豊町商工会の鈴木茂明さんからは、「観光協会でウォーキングマップを作成しています。それを片手に歩いてはいかがでしょう」とのオススメもいただいた。マップ片手に伝説のいまを探し歩くのも面白いもの。時間があれば是非!

●infomation
武豊町観光協会
愛知県知多郡武豊町長尾山58(武豊町商工会内)

(OFFICE-SANGA)