1月5日の金杯(中山金杯=芝2000m、京都金杯=芝1600m)からスタートする中央競馬(JRA)。注目はやはり、明けて3歳となる馬たちが競う、春のクラシック(牝馬=桜花賞、オークス。牡馬=皐月賞、ダービー)戦線だ。

 現在、牝馬、牡馬、それぞれの評判は、以下のような声が大半を占めている。

「牝馬は男勝りでレベルが高い。片や、牡馬は主役不在の大混戦」

 昨夏、函館(1着クリスマス/7月21日/函館・芝1200m)、新潟(1着ハープスター/8月25日/新潟・芝1600m)、札幌(1着レッドリヴェール/8月31日/函館・芝1800m)、小倉(1着ホウライアキコ/9月1日/小倉・芝1200m)で開催された2歳重賞レースは、すべて牝馬が制した。そのときから、そうした評価はまったく変わっていない。というのも、昨年暮れに行なわれたクラシックを占う主要なレース結果が、その評価を改めて実証するものとなったからだ。

 まず牝馬は、2歳女王決定戦となる阪神ジュベナイルフィリーズ(以下、阪神JF/12月8日/阪神・芝1600m)が、評判どおりハイレベルな一戦となった。勝ったのは、極悪馬場の札幌2歳Sで豪快な差し切り勝ちを収めたレッドリヴェール。新潟2歳Sを圧勝して、断然の人気を集めたハープスターとの叩き合いをハナ差制した。

 1分33秒9というタイムも優秀だったが、何より牡馬を蹴散らしてきた重賞馬2頭のゴール前の競り合いが圧巻だった。凄まじい迫力で、この世代の牝馬のレベルの高さを十分にうかがわせた。このままクラシックも、この2頭を中心にして、高い次元の争いになっていくだろう。

 一方、2歳牡馬の頂点を決する朝日杯フューチュリティーS(以下、朝日杯FS/12月15日/中山・芝1600m)は、1番人気に支持されたアトムが5着に沈んだ。また、例年クラシックとの関連が深いと言われるラジオNIKKEI杯2歳S(以下、ラジオNIKKEI杯/12月21日/阪神・芝2000m)も、1番人気のサトノアラジンが3着にとどまった。

 勝ち馬は、朝日杯FSが4番人気のアジアエクスプレスで、ラジオNIKKEI杯は7番人気のワンアンドオンリーだった。それぞれ2着馬も人気薄が飛び込んできて(朝日杯FS=6番人気ショウナンアチーヴ、ラジオNIKKEI杯=8番人気アズマシャトル)、馬連は朝日杯FSが7710円、ラジオNIKKEI杯は1万460円という高配当となった。この馬券の荒れ具合こそ、牡馬の混戦ぶりを物語っている。

 こうした状況にあって、牡馬クラシック戦線はいまだ未勝利の馬でもチャンスがあると言われ、競馬関係者の間では「牡馬がこの程度のレベルならば、ウオッカ(2007年)以来となる牝馬のダービー馬が誕生してもおかしくない」という声まで挙がっている。

 しかし、そうした見方に対して、異論の声もある。

 クラシック有力候補の牡馬に騎乗する、あるベテランジョッキーが、牡馬のレベルは決して低くないとして、こう語ったのだ。

「自分が主戦を務める馬と比較しても、『あの馬には勝てない』と思わせる馬が2頭いる」

 一頭は、ここまで2戦2勝で、オープンの京都2歳S(11月23日/京都・芝2000m)を勝ったトーセンスターダム。2012年のセレクトセール(競走馬のセリ市)で、2億5000万円で取引されたこの世代随一の高額馬だ。これまで「高い馬は走らない」と言われることが多かったが、この馬はそのジンクスにピリオドを打つと期待されている。

 もう一頭は、前走で500万下の黄菊賞(11月9日/京都・芝1800m)を勝利したトゥザワールド(3戦2勝)。名牝トゥザヴィクトリーを母に持つ、良血馬だ。

 前出のベテランジョッキーは、この2頭を高く評価して、さらに熱弁をふるった。

「トーセンスターダムとトゥザワールドは、どちらもゴール前の終(しま)いの脚に見るべきものがある。この先、まだまだ伸びるという成長力も感じさせる。この2頭は、クラシックに向けて有望ですよ。暮れの重賞を勝った馬たちは、現時点の完成度が高いだけ。素質は、この2頭のほうが上です。いずれ、重賞勝ち馬にも追いつき、追い越すはず。牡馬は『混戦』ではなく、この2頭の『2強』と言えるんじゃないかな」

 確かに、そのレースぶりや、血統に後押しされた競走馬としてのスケールの大きさでは、朝日杯FSを制したアジアエクスプレスや、ラジオNIKKEI杯を勝ったワンアンドオンリーより、トーセンスターダムとトゥザワールドのほうに魅力を感じる。ベテランジョッキーの見立てと、彼が言う"伸びしろ"も加味すれば、今後この2頭が「2強」と呼ばれる可能性は十分にあるだろう。

 ともあれ、今春のクラシックへの戦いが本格化するのはこれから。登竜門となるレースが目白押しで、牝馬、牡馬ともにますます熾烈な争いが繰り広げられていくはずだ。

 第一、牝馬にはまだ大物が控えている。女傑ブエナビスタを姉に持つ、サングレアルだ。デビュー戦(11月30日/阪神・芝1600m)を快勝し、今後は1月5日に行なわれる500万下の福寿草特別(京都・芝2000m)に出走予定。同レースの結果次第では、レッドリヴェール、ハープスターの「2強」に割って入る新勢力として、俄然注目を集めるに違いない。

 牡馬も、「2強」候補であるトゥザワールドに新馬戦で圧勝しているバンドワゴンをはじめ、抽選漏れした朝日杯FSに「出走していれば勝てた」と言われているミッキーアイル、さらにリーディングジョッキーの福永祐一騎手がその素質を絶賛しているガリバルディなど、重賞勝ちはなくとも期待の実力馬が控える。先の「2強」候補を含めて、1月〜3月にかけて行なわれるクラシックの前哨戦で、おのおの頭角を現してくるだろう。

 こうしてみると、2014年のクラシック戦線も、主役となるのはディープインパクト(以下、ディープ)産駒と言えそうだ。牝馬ではハープスター、牡馬ではトーセンスターダム、ミッキーアイル、ガリバルディ、そしてラジオNIKKEI杯では敗れたものの、まだ見限れないサトノアラジンが、同産駒。ディープも種牡馬4年目を迎えて、いよいよクラシック馬を多数輩出した偉大なる父サンデーサイレンス(以下、SS)の域に達した感がある。

 実際、それぞれの種牡馬1年目から3年目までの春のクラシック実績を振り返ってみると、SSは1年目に3頭(ジェニュイン=皐月賞、ダンスパートナー=オークス、タヤスツヨシ=ダービー)、2年目に1頭(イシノサンデー=皐月賞)のクラシック馬を輩出。3年目は0頭だった。

 対してディープは、1年目に1頭(マルセリーナ=桜花賞)、2年目に2頭(ジェンティルドンナ=桜花賞、オークス、ディープブリランテ=ダービー)、3年目に2頭(アユサン=桜花賞、キズナ=ダービー)のクラシック馬を送り出してきた。ここまでの実績では、偉大なる父に並ぶどころか、頭数も勝利数も上回っているのだ。

 やはり今年もディープ産駒の動向からは目が離せない。そして、2014年春のクラシックも「ディープ産駒vs非ディープ産駒」もしくは「ディープ産駒vsディープ産駒」という図式で展開されるに違いない。

新山藍朗●文 text by Niiyama Airo