By Amber Case

バーチャルリアリティ(VR)を実現するために開発されたヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」は、VRゲームの開発を大きく進めていますが、VR用ゲームコントローラーの開発競争もますます活発になっています。

Virtual reality check: why controllers haven't caught up to the Oculus Rift | The Verge
http://www.theverge.com/2013/12/23/5238118/virtual-reality-check-oculus-rift-hardware-ecosystem

Oculus Riftは2013年3月にリリースされると、たちまちその高性能ぶりが周知され、VRゲーム開発者がこぞってVRゲーム用ヘッドマウントディスプレイとして採用し、今やVR用ディスプレイのデファクトスタンダードになりつつあります。


しかし、Oculus Riftが満たしてくれるのはVRにおける視覚部分に限られるため、ゲームプレイヤーが手足や身体を使おうとすると仮想現実世界はたちまちに幻覚として崩れてしまいます。Oculus Riftの開発者であるパーマ−・ラッキー氏は、「仮想現実世界を完璧なものにするためには、バーチャルの世界を自然に体感できる絶対的なコントローラーが必要です。しかし、今のところ、この要求を満たす製品はありません」と話します。

唯一無二の存在とまでは言えないものの、VRゲーム用のコントローラーとして多くの支持を集めるコントローラーは現れつつあります。Sixense社の「Razer Hydra」はその代表格です。Razer Hydraは、磁気式モーションセンサーを利用したコントローラーで、球状のベースステーションがプレイヤーが両手に握ったコントロールグリップの動きを検知することで、モーションコントロールを実現します。


今ではVRゲームコントローラーの主役級に数えられるRazer Hydraも、リリース直後はまったくといっていいほど売れませんでした。しかし、Oculus Riftがリリースされるや否や、VRゲームに最適なコントローラーを探し求めていたゲーム開発者に価値が理解され、またたくまに売り切れ状態になりました。

Razer Hydraは当初、ベースステーションの検知能力の制限により使用できる範囲が3フィート(約91センチメートル)に限られるという制約があったところ、VRゲーム用に活用出来る潜在能力を認めたSixenseはすぐによりコンパクトで使用範囲を8フィート(約2.4メートル)に拡大させた無線バージョンのRazer Hydraを開発し販売量を伸ばしています。

Sixenseは、新たにSTEM SystemというVR用ゲームコントローラーを開発しKickstarterで出資を募集し、目標出資額の2倍を超える約60万ドル(約6300万円)の出資を集めることに成功しています。STEM Systemがどんなコントローラーかは以下のムービーで確認できます。

STEM System: The Best Way to Interact with Virtual Worlds - YouTube


Sixenseのアミー・ルービンCEOは、「STEM Systemは、ライセンスフリーで開発者が利用できるようにしています」と話し、VRゲームコントローラーのSTEM Systemをデファクトスタンダードに育てたいとの意向を示しています。

他にも、ユタ大学のウィリアム・プロバンチャー博士が設立したTactical Haptics社の開発する「Reactive Grip」もライセンスフリーを掲げています。Reactive Gripは、摩擦力や重量感を仮想的に体感できる新しいVR用ゲームコントローラーとして注目を集めています。残念ながらReactive GripはKickstarterで目標出資額を集めることには失敗しましたが、プロバンチャー博士はReactive Gripの改良を継続中で、現在も精力的に投資家を探しているとのことです。

Reactive Grip -- Touch Feedback for VR & Video Games - YouTube


また、「仮想現実世界を動き回りたい」という要望も強く、Virtuix社の「Virtuix Omni」のような歩行用のデバイスも開発されています。

What is the Virtuix Omni? - YouTube


さらに、スマートフォンと地面に設置するマーカーを使って、仮想現実世界のフィールドを再現するシステム「Atras」も提案されています。

Atlas Virtual Reality (KickStarter) - Oculus Rift - YouTube


VRゲームの視覚機能の主役をOculus Riftが担っているのと違い、VRゲームコントローラーにはまだスタンダードと言える製品がないのが現状です。そのため、Oculus Rift開発者のラッキー氏は、「いずれのコントローラーも可能性を秘めていると言え、どれが最も優れているかを判断するのは時期尚早です。また、まだ世に出てきていない優れたコントローラーもあることでしょう」としつつも、「もしも、私たちが求めるコントローラーが出現しない場合には、Oculus VR自身でコントローラー開発に乗り出すかもしれません」と話します。

しかし、Virtuixの創立者ジャン・ゴートゲルク氏は、ゲームコントローラーに唯一無二の製品がないのと同じように、ヘッドマウントディスプレイもOculus Riftが絶対的な製品であるとは考えていません。ゴートゲルク氏によると、今後1年のうちに、ヘッドマウントディスプレイの市場は開発費を回収でき利益を上げられる大きな市場になるとのこと。それを見越して、ソニーやサムスンなどのメーカーが独自のヘッドマウントディスプレイを開発中と噂されています。2014年は、VRゲーム用に多くの優れたデバイスがVRゲーム市場が大幅に拡大しそうです。