5日、中国を訪問したウクライナのヤヌコビッチ大統領は習近平国家主席と会談した。写真は中国第1の核兵器研究開発基地であった国営221工場の地下指揮センター、通称「原子城」。

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2013年12月5日、中国を訪問したウクライナのヤヌコビッチ大統領は習近平国家主席と会談。中国・ウクライナ友好協力条約を調印しました。韓国紙・朝鮮日報日本語版はその条約に「中国がウクライナに『核の傘』を提供する条項が含まれている」と報じています。(文:高口康太)

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まずは5日に発表された「中華人民共和国とウクライナのさらなる戦略的パートナー関係深化に関する合同声明」の該当部分を紹介します。
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国家の主権、統一、領土、領土の一体性の問題における両国相互の強い支持は戦略的パートナー関係の重要な内容であると両国は協調している。両国は互いに相手国がその国情に基づき発展の道を歩むことを強く支持する。互いの独立、主権、領土の一体性の擁護、政治・社会の安定の補償、民族経済発展の努力を支持する。

自国の法律や参加した国際条約に基づいて、自国領土内に相手国の主権、安全保障、領土の一体性を損なうような独立、テロ、原理主義の組織やグループの存在を許してはならず、またその活動を禁止しなければならない。

ウクライナは一つの中国政策を堅持することを改めて表明。中華人民共和国政府が全中国を代表する唯一の合法的政府であり、台湾は中国の欠くことのできない領土であると承認している。いかなる形式の「台湾独立」にも反対し、中台関係の平和的発展と中国の平和的統一の大業を支持する。

中国側はウクライナが一方的に核兵器を放棄し、非核兵器国家として1968年7月1日に調印された核拡散防止条約(NPT)に参加したことを高く評価する。中国は国連安保理984号決議と1994年12月4日に中国政府がウクライナに提供した安全保証の声明にのっとり、非核兵器国家のウクライナに対する核兵器の使用と核兵器を使った威嚇をしないことを無条件で約束する。またウクライナが核兵器の使用による侵略、あるいはこの種の侵略という脅威にさらされた場合、ウクライナに相応の安全保証を提供する。
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過去の共同声明では武力による侵略、威嚇をしないという相互の承認があげられているだけなので、核の脅威にさらされた時に安全保証を提供するというのは一歩踏み込んだ内容でしょう。ただし核兵器をウクライナに撃ち込まれたら報復で核兵器をぶっぱなすとは約束していないので、「核の傘」とは言えないのではないか、と。

面白いのがこの共同声明の第二段落、第三段落が中国側からの要求が書かれていることを考えると、第4段落はウクライナ側の要求で入れられた可能性が高そうな点です。第二段落、第三段落では一つの中国を認めるだけではなく、独立組織、グループを取り締まるとの文言も含まれています。まじめにこの条項に従うと、亡命チベット人や亡命ウイグル人が抗議デモをしたらアウトということになります。この踏み込んだ約束のお返しが第四段落ではないでしょうか。

報道によると、現在のウクライナが抱える最大の苦境は来年償還ラッシュを迎える外債とのこと。反政府デモが話題となっていますが、それもそもそもロシアの援助を求めて親ロシアの姿勢を政権が示したことが背景にあるようです。今回のヤヌコビッチ大統領訪中も資金繰りが最大の目的。ちなみに中国は80億ドルもの投資を約束したといいますが、国債購入といったもっとも効く処方箋については話題に上がっていないようです。リーマンショック当時もそうでしたが、中国は投資には熱心ですが、デフォルトでご破算になりかねない国債購入についてはかなりシビアです。

というわけで安全保障問題は主要な議題ではなかったとはいえ、中国の「核の傘」っぽいものが与える影響は軽視できません。ウクライナに核の脅威を与える国といえば、当面ロシアぐらいしか思いつかないわけで、しかもウクライナ国内に反ロシア勢力が相当数存在することを考えると、この条項はロシアを逆なでしかねない条項と言えるでしょう。

そうしたリスクを軽視したのか、あるいはそれでも独立派勢力取り締まりの約束が欲しかったのか、などなど中国の狙いが注目されます。

◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)
翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。