(写真)現職幹部の証言後の報告集会であいさつする遺族の母親=11日、東京都港区

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東京高裁 現職3佐が証言


 海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」の1等海士=当時(21)=が2004年に自殺したのは上司によるいじめが原因として、両親が国と元上司を相手取り損害賠償を求めた控訴審の第15回口頭弁論が11日、東京高裁(鈴木健太裁判長)で開かれました。

 現職の海自3佐が証言しました。3佐は、原告らが提出を求めた1等海士が自殺した直後に海自が実施した「艦内生活実態アンケート」について国側が「破棄して存在しない」としてきたことに対し「文書が存在する」と裁判所への意見陳述書で内部告発(12年4月18日)しています。

 3佐は、海自法務官としてたちかぜ裁判の一審(横浜地裁)を担当してきました。海幕情報公開担当者(2佐)が証人に「『アンケート』は存在しているが、破棄したことになっているのでフォーマットだけ開示した」と語っていたこと、06年4月ごろに証人自身が海幕法務官室で問題のアンケートの現物を確認していることについて具体的に証言しました。

 また同じファイルに「自殺直前に『自殺を示唆するやりとり』をしたという隊員の聞き取り文書があることも知った」と語りました。

 3佐は証言後、「情報保全と国民の知る権利のはざまで何ができるのかを考えるしかなかった」と振り返りました。

 原告の遺族の母親(59)は「証人の苦しい立場、葛藤ぶりがひしひしと伝わりました。秘密保護法が実施されていたら今日はなかったと思う。恐ろしい法律はやめさせなければと思います」と話しました。

現職海自3佐の証言

秘密保護法下では不可能

 3佐は陳述書に沿って海自側の文書隠しの実態を詳細に証言しました。たちかぜ訴訟の指定代理人でもある海自横須賀地方総監部の法務担当の事務官が10月に裁判所に提出した陳述書と重ね合わせたとき、海自の組織的な隠ぺいを動かしがたい事実として立証しました。

 法務担当事務官は海自が破棄したとする文書の原本を確認、海幕法務室に相談した際の先方からの指示をこう再現しています。「捨てろ。あれは無い書類だ。あってならない書類だから」

 しかし自衛隊は今、3佐に対し「文書のコピーを自宅に持ち帰ったのは規律違反だ」として懲戒処分の手続きをはじめています。3佐、遺族、原告弁護団は「政府が強行成立させた秘密保護法が動きだせば、こうした不当処分がまかり通る。自衛隊員への人権侵害、遺族の悲しみの行き場がなくなる」として争う構えです。 (山本眞直)