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基礎生物学研究所(NIBB)は12月9日、バーチャルリアリティ技術を活用した行動解析実験により、メダカは、動きによって仲間を引き寄せていることを明らかにしたと発表した。

同成果は、NIBB神経生理学研究室の中易知大 研究員と渡辺英治 准教授らによるもの。詳細は比較認知科学の専門誌「Animal Cognition」に掲載された。

基本的に多くの動物の群れや集団は同一種で形成される。これまでの研究では、色やサイズ、形といった形態学的情報に基づき、群れる相手が選択されることが報告されていた。

研究グループは、これまでの研究から、水槽周囲にコンピュータディスプレイを配置して、計算機によって自在に操作可能な魚の視覚的疑似環境を構築することに成功しており、今回は同技術を用いて、魚が群れの仲間を識別する場合において、動きの情報が重要な役割を果たしているのかどうかの調査を行った。

具体的には、生物を少数の点の動きのみで表現したバイオロジカルモーション刺激として、メダカ頭部の先端に1点、メダカの尾ビレの先端に1点を割り当て、体軸上に4点を均等に割り当てたデータを作製、それをディスプレイに映し出し、メダカに見せて行動を観察する実験を実施したという。その結果、6点で構成されるバイオロジカルモーション刺激の動きであっても、メダカが強く引きつけることが確認されたとする。

さらに、この結果がただの動く点に反応したのではなく、群れるべき相手として選択されたのかどうかを確かめるため、バイオロジカルモーション刺激を操作し、メダカの動きとしては不自然になる比較刺激として、以下の5系統11種類を用意して実験を実施。

1. 6点が直線で固定されていて魚の体軸情報が欠如した刺激が1種
2. ビデオフレームレートを落とした刺激(元刺激が60フレーム/秒のところを15フレーム/秒、10フレーム/秒、5フレーム/秒、1フレーム/秒の4種)
3. スピードを変化させた刺激(2倍速、1.5倍速の高速化した刺激を2種、0.5倍速、0.25倍速の低速化した刺激を2種の計4種)
4. 逆再生をした刺激が1種
5. ヒトのバイオロジカルモーション刺激が1種

結果、いずれの刺激も元の刺激よりもメダカを引きつける効果を減弱させることが確認され、メダカが群れの仲間を認知するために動きの情報を利用していること、ならびに同種の自然な動きを知覚する能力が高いことが示唆された。

この成果を受けて、研究グループでは、メダカがバイオロジカルモーション刺激を群れの仲間あるいは生殖相手とみなし寄って行ったのか、それとも縄張りを荒らす相手とみなし攻撃を行ったのかなど、その具体的な要因についてはさらなる研究の余地はあるとしながらも、魚類にも高度に抽象化された刺激を視覚的に認知する能力が備わっており、このような高度な認知能力が従来考えられてきたよりも進化的に広く保存されていることが示唆されたとしており、今回の知見が、動物の動きを表現することのできる数理モデル化への第一歩となることが期待されるとコメントしているほか、動物が群れを作る原理となる数理アルゴリズムの解明につながることも期待できるとしている。