寒い日にはほっとできる味わいです。

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寒くなると、洋食屋さんの売り上げがアップするそうだ。

あったかいハンバーグに、ふんわりオムライス、濃厚なハヤシライス。寒い日には何となく心惹かれる洋食メニュー。
そんな洋食のひとつ、ハヤシライスを町おこしに使っている町があるという。

その場所は、兵庫県朝来市生野町。瀬戸内海と日本海の、ちょうど真ん中に位置する町である。
ここはかつて、鉱山の町だった。全国各地から人が集まり、昭和30年ごろ、町の人口は1万人強にもなったそう。
鉱山といえば佐渡が有名だが、かつては“佐渡の金、生野の銀”と言われるほど、生野の鉱山も有名だった。
明治維新後には、官営鉱山となって日本の近代化を支援。その勢いは昭和に入ってもまだ続いた。高度成長を支えた土地だったのである。

そんな鉱山で働く男たちが好んだ食べ物がハヤシライスだった。
洋食屋で作られるハヤシライスではない。社宅で夫の帰りを待つ、都会育ちの妻たちが当時ハイカラだったハヤシライスを手探りに作りはじめた。生野ハヤシライスの誕生の瞬間である。
そうして鉱山で働いたあとにハヤシライスを食べるという文化がここ、生野に根付いた。

しかし時代は流れ、鉱山は閉山。それから50年近く経った平成20年、懐かしのハヤシライスを“生野ハヤシライス”として全国に広めよう、という動きがはじまった。

当時の味を知る人を集めてレシピを再現し、生野ハヤシライス部会が結成された。
昭和を思い出させる懐かしの味。それを復活するために決められた約束ごとがいくつかある。トマトソースベース、またはデミグラスソースベースを基本とした、懐かしい味を守ること。
そして、このハヤシライスが生まれるきっかけともなった、生野鉱山を周知させるということだ。

現在、生野ハヤシライスの加盟店は10店舗。
鹿肉を使った和風ベースのハヤシライスに、地元産の食材を使ったもの、昔の味を再現したもの……と様々だが、どれもかつて食べられていた家庭の味わい揃い。

さらに当時の味を思い出させる2種類のレトルトハヤシライスも、絶賛発売中だそう。
ハヤシライスが珍しかった昭和30年代を再現した、ケチャップ味のハヤシライス。
ハヤシライスが人の口になじんできた昭和40年代を再現した、デミグラスハヤシライス。
人だけでなく、この町ではハヤシライスも発展したのである。

歴史ある鉱山は閉じてしまったが、今でも生野の町は煉瓦作りの洋館など、昭和の雰囲気をたのしめる。
雰囲気抜群の町を歩きながら、目と舌でレトロな雰囲気をたのしんでみては。
(のなかなおみ)