ソーシャルメディアの特徴は、ユーザーからの声を聞いたり、ユーザーとのコミュニケーションができることです。

今回は、ユーザーの声を聞いたり、その声をカスタマーサポートに役立てたりする方法から、ソーシャルリスニング活用までがテーマ。今すぐ取り入れたい、ユーザーからのリアクションを増やすための投稿のコツも合わせてご紹介します。

○ユーザーからの声が聞けるソーシャルメディア

NTTレゾナントの「第4回 企業におけるソーシャルメディア活用に関する調査結果(2012年7月)」によると、ソーシャルメディア導入企業の目的は「企業全体のブランディング」「キャンペーン利用」「広報活動」が多い一方で、「製品・サービス改善(顧客の声を取り入れる)」ために利用している企業も増えてきています。

企業がユーザーから声を聞くことは大切ですが、なかなかその機会が少なく難しいものです。それ故これまで、アンケートやインタビュー、モニター調査といった取り組みが行われてきました。しかしどれも手間や時間、お金がかかりすぎて導入が難しい面があります。また、このようなやり方では模範的な回答が増えてしまって生の声が聞きにくいという問題点もあります。

ところが、ソーシャルメディアを通せば、ユーザーの声を集めることは容易になります。他の手法よりコストは抑えたまま、生の声が集められるのです。ユーザーの自発的な声を聞くことで、カスタマーサポート的に活用することもできます。例えば、前回ご紹介したアクティブサポートを行い、ソーシャルメディア上でのユーザーの声に対応・拡散することで、ユーザーの満足度を高めたり、宣伝につなげることもできます。

具体的には、コナミのようにFacebookでカスタマーサポートページを用意しているところがあります。FAQのほか、チャットでカスタマーサポートが受けられるようにもなっています。テレビ朝日のように、Twitterで人材採用用のアカウントを用意し、個別の質問に答えているケースもあります。

Google+を使ったケースもあります。2012年3月には、トヨタのFT-Bh コンセプトプロジェクトリーダーである槇野 浩司氏がハングアウトオンエアで超軽量カーについて話をし、ヨーロッパや米国のユーザーたちから車の特徴や技術的な質問を受けました。

FAQを用意する場合は一覧性の高いFacebook、ユーザーに個別対応したい場合はユーザーの生の声が多く聞けるTwitter、映像で見せたり直接話をしたい場合はGoogle+などと使い分けるといいでしょう。

○ユーザーの声を聞くことは重要か?

ところでそもそもの問題として、ユーザーの声を聞くことは重要なのでしょうか。

T型フォードを普及させて一般大衆が車が持てるようにしたヘンリー・フォードは、「もし顧客にほしいものを訊ねていたら、『もっと速い馬』と答えていただろう」と言っています。また、iPhoneを世に出したスティーブ・ジョブズは、「多くの人は形にして見せてもらうまで自分がほしいものを分かっていない」と言っています。

ユーザーの意見をすべて取り入れてもいい製品になるとは限りません。ユーザーは一素人であり、いい商品やサービスが分かっている訳ではないのです。ユーザーにはニーズや不満の部分こそを聞くべきであり、そしてそのニーズや不満を具体的に解決・実現する方法は企業が考えるべきなのです。

また、声を上げないサイレントカスタマーの存在もあります。潜在的なニーズは調査では出てこないことも忘れてはなりません。一部のユーザーの声だけで決めるのではなく、ユーザーの行動を分析し、総合的に判断するようにしましょう。

○リアクションを増やす投稿のコツは?

ユーザーからリアクションがほしい場合は、リアクションを求めたり問いかけたりするのがお勧めです。例えばアンケートやクイズ形式にしたり、「〜と思う方は『いいね!』お願いします」「分かった方はコメントしてください」のように能動的なアクションを求める文章を入れることで、ユーザーのリアクションが増える傾向にあります。

孫 正義氏が行ったように、Facebookで写真を複数アップし、選んだ写真に「いいね!」してもらうという方法もあります。これなら参加も簡単で、しかも拡散が期待できます。

コカ・コーラでは、「○○の人は『いいね!』、△△の人は『シェア』してね」と投げかけています。「いいね!」よりシェアはされにくいので、意見を聞くというよりも拡散してもらいやすくなる仕掛けと考えられます。

○レッツ・ソーシャルリスニング!

ソーシャルメディアは、ソーシャルリスニングにも利用できます。「ソーシャルリスニング」とは、アンケートの質問に左右されたりせず、ユーザーの生の声が聞けるというメリットがあるマーケティング手法です。ソーシャルメディア上の情報を分析することで、トレンドを知ったり、ニーズを把握するのに役立ちます。

ガイアックスの調査(2012年5月)によると、購入・利用した商品やサービスに解決しない不満やクレームがあった場合、48.6%が「他社の商品・サービスに乗り換えた」と回答しています。

また、友達やフォローしている人が企業への不満や批判などのネガティブな投稿をしているのを見たことがある人は36.8%でした。そして、「今後、その企業・ブランドの商品やサービスの購入を控えようと思った」という人は、なんとその約半数の49.5%に上ったのです。ソーシャルメディア上のユーザーの声を把握して分析することの重要さがよく分かる結果だと言えます。

ユーザーの声の把握・分析には、様々なツールが用意されています。クチコミ係長(ホットリンク)、ブームリサーチ(トライバルメディアハウス)、ソーシャルインサイト(ユーザーローカル)、ADPLAN SM(オプト)、コミュニケーションエクスプローラー(サイバー・コミュニケーションズ)などがあるので、自社に合ったものを導入するといいでしょう。

(高橋暁子)