『パカパカファーム』成功の舞台裏<番外編>
連載●第24回

JRA(日本中央競馬会)では今年も注目の2歳馬が次々にデビュー。来年のクラシックに向けて、早くも熾烈な戦いが始まっている。その中には、もちろんパカパカファームの生産馬もいる。今回は"番外編"として、そんな牧場期待の素質馬たちを紹介しよう。

 今年の新馬(2歳)戦線は6月からスタートし、すでに5カ月半が経過。注目の素質馬や、セリ市で話題を集めた高額馬たちが続々とデビューし始めている中、パカパカファームで生産された2歳馬たちも素晴らしい活躍を見せている。

 今年デビュー可能となる、2011年生まれのパカパカファーム生産馬はちょうど20頭。その中から早くも13頭がJRAのレースでデビューし、すでに5頭が勝利を挙げている。しかもそのうち3頭は、その後のオープンクラスのレースでも好走しているのだ。

 最初の勝利を飾ったのは、牝馬のマイネグラティア(父ネオユニヴァース)だった。同馬は6月23日の2歳新馬(東京・芝1600m)でデビューすると、ラスト3ハロン(600m)を33.9秒の豪脚で駆け抜け、大外から他馬を一気に差し切った。

 続くオープンクラスのダリア賞(8月3日/新潟・芝1400m)では、初戦より直線が短く、追い込むスタイルの馬にとっては不利なコース形態ながらも、勝ったマキャヴィティからクビ差の2着と好走。安定した末脚の持ち主であることを証明した。

 その後、3戦目に新潟2歳S(8月25日/新潟・芝1600m)、4戦目にアルテミスS(11月2日/東京・芝1600m)と重賞に挑戦。それぞれ7着、8着と振るわなかったが、新潟2歳Sは道中力んだシーンが見受けられ、アルテミスSでは馬体重がマイナス14kgと体調面が万全とは言えなかった。ともに、力負けとは言い難い内容で、今後の重賞、さらにはGI戦線での巻き返しが期待される。

 一方、2歳牡馬でパカパカファームの大きな期待を背負っているのが、クラリティシチー(父キングカメハメハ)だ。同馬は8月3日の2歳新馬(新潟・芝1800m)でデビュー。ディープインパクト産駒の評判馬ガリバルディやオリハルコンを蹴散らして、その名をとどろかせた。

 2戦目は、2カ月半の休養を挟んで臨んだいちょうS(10月19日/東京・芝1800m)。出遅れ気味のスタートから、直線では進路が開かず苦しい展開を強いられた。結局、僅差の3着に敗れたが、進路さえうまく確保できていれば、十分に勝ち負けできるレースぶりを披露。素質の高さはうかがえた。

 そして11月16日、GIII東京スポーツ杯2歳S(東京・芝1800m)に出走。パカパカファームの代表馬ディープブリランテも勝った出世レースで奮闘したが、惜しくも3着に敗れた。それでも、この世代を代表する評判馬たちを退けて、1着イスラボニータとも差のないレースを見せた。これからの成長次第では、クラシック戦線でも活躍できる存在と言えるだろう。

 パカパカファーム3頭目の勝ち上がりを決めたのは、牡馬のキンシノキセキ(父フジキセキ)。初戦(7月27日/小倉・芝1200m)こそ、のちに重賞(小倉2歳S、デイリー杯2歳S)を連勝したホウライアキコ(父ヨハネスブルグ)の2着に敗れたものの、2戦目(8月18日/小倉・芝1200m)できっちり勝利。3戦目となったオープンのカンナS(9月17日/中山・芝1200m)でも、勝ち馬からコンマ2秒差の2着と好走した。4戦目のかえで賞(10月20日/京都・芝1200m)では1番人気を裏切って9着に沈んだが、短距離路線での活躍が期待できそうだ。

 3頭に続いたのが、牡馬のゼウスバローズ(父ディープインパクト)と牝馬のオフェーリアシチー(父アドマイヤコジーン)だ。

 ゼウスバローズはディープブリランテの弟で、デビュー前から評判になっていた一頭。牧場長のハリー・スウィーニィ氏が「兄のディープブリランテよりは、父のディープインパクトに似ている」と評した"大物"で、10月27日の2歳新馬(東京・芝2000m)で満を持してデビューした。500kg前後の雄大な馬体を持っていた兄よりも、458kgとスリムにまとまった馬体で登場し、一番人気でレースを迎えた。

 しかし、このレースにはディープインパクト産駒のラングレー、ベルキャニオンという、世代きっての素質馬も参戦。直線で3頭が抜け出すレース展開となったが、ゼウスバローズは勝ったラングレーからコンマ1秒遅れの3着に敗れた。

 黒星スタートになったものの、続く未勝利戦(11月9日/京都・芝2000m)では、中1週のローテーションや、マイナス14kgの馬体減をものともせずに快勝。ゼウスバローズの能力の高さは疑う余地がなく、来春のクラシック戦線に乗る逸材と言えるだろう。

 そして、ゼウスバローズが初勝利を決めた日に、オフェーリアシチーも未勝利戦(福島・芝1200m)を逃げ切り勝ち。同じ牧場で育った同世代の2頭が、同日に白星を挙げたのだった。年間20頭ほどの生産規模の牧場で、このようなことが起こることは極めて珍しい。生産馬の能力の高さはもちろん、順調に使える丈夫さを兼ね備えているからこそ、実現した快挙だろう。

 そのほか、叔父にGI2勝のブラックホーク、叔母にNHKマイルカップを勝ったピンクカメオがいるユニコーンバローズ(父マンハッタンカフェ)も目が離せない存在。デビュー戦(9月15日/阪神・芝1800m)は4着に敗れたとはいえ、一時は先頭争いに加わるなど見せ場を作った。いつ結果を出してもおかしくない。

 今年のパカパカファームの生産馬はまさに粒ぞろい。来春のクラシックに向けて躍動し、大舞台の中心に君臨する馬が登場しても何ら不思議はない。

ハリー・スウィーニィ
1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。

河合力●文 text by Kawai Chikara