日本のAV界において、決してメジャーではないけれど、ファンからひそかに愛され、長い歴史を持つジャンル、それが「催眠」だ。催眠術師の巧みなテクニックで“堕ちる”女性の痴態が、その人気の理由だ。

ただ、ここでひとつの疑問が湧き上がる。女優は本当に催眠術にかかっているの? それとも演技? AV界の“やらせ問題”を探るべく、複数の業界関係者に話を聞いた。

まず答えてくれたのは、AVライターの大坪ケムタ氏。

「う〜ん、なかなか答えづらい質問しますね! 催眠AVの歴史は古く、1985年には代々木忠監督の『サイコ(催眠)エクスタシー』(アテナ映像)がヒットしています。それ以来、定期的にリリースされてますが、正直、『これはガチだ!』と思えるものもあれば、『どう見ても設定だろ!』ってのもある……としか言えません」

次は、ドラゴン西川監督。女のコが催眠効果で感度がアップさせられてしまうという内容の『催眠AVデビュー 浜田友香(18歳)』(ピーターズ)を撮影したばかりだ。

「ガチですよ。僕もコレが初の催眠AVの撮影だったんですけど、反応が明らかに変わるところは、やっぱりナマで見ると驚きました。ただ、催眠術師の人に聞くと『予備催眠までは皆かかるけれど、やはり裸になるような指示から先は、人によってかかりに深い浅いがある』って言ってましたね」(西川監督)

予備催眠とは、術師の暗示がかかりやすい状態に導く初期の誘導テクニックのこと。テレビなどで行なわれる催眠術ショーも、予備催眠がすでに行なわれた状態であるケースがほとんどだ。

お次は、匿名を条件に取材を受けてくれた制作スタッフのA氏。「3作くらい催眠をテーマにしたAVで仕事しましたけど、明らかにやらせでしたね(笑)」とのこと。ではなぜ、“催眠要素”をAVに入れたのか?

「一作で何回かセックスするなかで、やっぱりバリエーションをつけたい。といって、ひとつだけなんの説明もなく激しく反応しまくるのもおかしいじゃないですか。その“理由づけ”として、催眠術は都合がいいというのは確かにありますね」(A氏)

最後は、立ち上げから13年もの間、催眠AVをリリースし続けているAVメーカー、アウダースジャパンのプロデューサー・小林和道代表。同社の催眠AVは海外の催眠術師のサイトでも紹介され、「ここのは本物だ」と評されるなど“ガチ系”として名高い。

「うちで活躍している催眠術師さんは10年くらい前に全国から催眠術師を募集して『催眠王王座決定戦』ってAV出したんですが、それで準優勝した方で本物のプロです。私たちの作品はメイキングとして予備催眠シーンや催眠をかけるところもしっかり映しています。そこを見て判断してほしいですね」

つまり、“ガチ”だ。他社から明らかなやらせ作品が出ているのは「本格派」のメーカーとして不満に思わないのだろうか?

「そのメーカーが見せたいのが女優の『白目』や『ヨダレ』で、そのために『催眠をかけました』って設定をつけるのは別にいいと思うんですよ。そういうお客さんが買えばいいので。ただ、フィクションもノンフィクションも同じ『催眠』とまとめられてしまうのは、どっちのお客さんにも不幸だなあとは思いますね」(小林代表)

結論は「催眠AV」には“ガチ”も“やらせ”もある! 自分はどっちのほうがヌケるかで選んでください。

■週刊プレイボーイ47号「催眠AVのエロ奥深い世界!!」より