卵子の老化は止められない。でも、そのスピードを遅らせるコツがあるって本当?

私たち女性の体内では、卵子が育まれています。女性がお母さんのお腹の中で胎児だったころ、一生分の卵子がつくられ、卵巣の中に貯蔵されます。その後、排卵や細胞死によって卵子の数は減少していきます。その大切な卵子を育む卵巣の機能はとても大切なもの。でも卵巣機能は、加齢とともに衰えるそうです。

では、私たちは卵巣と卵子の老化に対してまったく打つ手がないのでしょうか? できることなら「老化を少しでも遅らせたい」と思う女性は多いはず。

そこで、不妊症など生殖医療に詳しい産婦人科医の船曳美也子先生に、卵巣と卵子の老化を防ぐコツについて聞きました。

―先生、ズバリ「加齢による卵巣と卵子の質の低下」は防ぎようがないのですか?

「『卵巣と卵子の老化は避けられない』のは事実です。でもまったく打つ手がないわけではありません。日常生活に気をつけることで、『老化を少しでも遅らせる』ことはできます。

―加齢による卵子の質の低下は、どのようなメカニズムで起きるのでしょうか。

「カラダのすべての細胞は、呼吸により取り込まれた酸素からエネルギーをつくり出しています。しかし、エネルギーをつくるとき、同時に活性酸素と呼ばれる物質もつくってしまうのです。活性酸素がまわりの分子を酸化させることが、女性の大敵のしみやしわの原因になるばかりか、動脈硬化や脳梗塞、がんの原因になります。

それを防ごうと、体内では酸化ストレスに対抗する酵素がつくられているのですが、この酵素をつくる能力は、年齢とともに低下します。

そして、卵巣の中でできた過剰な活性酸素の影響で、卵子に染色体の異常が起きてしまうことが、30代後半から急速に妊娠率が下がっていく最大の理由です。ですので、卵巣と卵子のアンチエイジングとは、なによりも『抗酸化力を高める』ということになります」

―抗酸化というのは、美容でよく聞くアンチエイジングと同じことですよね? どんなことに注意すればいいんですか。

「まず、もしタバコを吸っているなら禁煙しましょう。喫煙者は活性酸素を必要以上に産生してしまい、1〜4年閉経が早くなってしまいます。ちなみに、男性のも22%精液所見が低下します。それから、できるだけ、運動もしましょう。週2〜3日散歩などの軽い運動だけで抗酸化力が高まります。

―食事で気をつけることはありますか?

「抗酸化には食生活も大切ですよ。避けたほうがいいのは、食べ過ぎと、脂質や糖質のとり過ぎです。反対に、とったほうがいいのは、抗酸化力のあるアルギニンを含む緑黄色野菜、オメガ-3脂肪酸を多く含む魚です。

ボリューム満点のこってり洋食ではなく、玄米や野菜に魚と肉を加えるといった、質素なほうが妊娠力によいという報告も出ています。レスベラトロールとう物質を多く含む赤ワインは、抗酸化力があることがわかっています。ただし、ハーフボトル以上を連日飲むと、妊娠力は4割落ちるという報告がありますので、連日はやめましょう。ちなみに、カフェインも500?を連日摂取すると、不妊率が1.5倍になるのがわかっています。コーヒーは1日2杯までにしてください。

―はい! 適度な運動、健康的な食事、コーヒーの飲み過ぎに注意して……。

「とはいえ、あまり神経質にならないでください。いちばん大切なのは、『前向きな心』ですよ。実際、ネガティブな考え方をする人のほうが細胞の老化が早いことがわかっています。ですから、ポジティブシンキングでいきましょう」

みなさん、いかがでしたか? 気にし過ぎるのもよくないけど、一度生活を見直してみるのもいいかもしれませんね!

(聞き手:小池直穂)

船曳美也子 
150名の女性医師がボランティア活動を行うEn女医会所属。1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、認定産業医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚で43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2013年10月9日、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(主婦の友社)を上梓。
現在は、オーク梅田レディースクリニックを中心に診療にあたっている。
医療法人オーク会HP http://www.oakclinic-group.com/