『AKB48 じゃんけん大会 公式ガイドブック 2013』光文社

ファンのあいだでは、毎年その開催を迎えるたび、秋が来たなーと思うくらい、イベントとして定着したじゃんけん大会。今年で4回目を迎えた。ガイドブックの表紙の左側には昨年の優勝者の島崎遥香が写っているが、今年は3回戦で敗退している。初期メンバーを含め多くの卒業生が出た今年、優勝したのが将来の48グループを背負って立つことが期待される松井珠理奈というのが何だか象徴的だ。

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9月18日、日本武道館にて、AKB48の34枚目のシングル曲を歌うメンバーを決める「AKB48 34thシングル選抜 じゃんけん大会」が開催された。そのテレビ生中継(フジテレビ)では、副音声を、SKE48の松井玲奈とNMB48の山本彩、それからこの8月にAKB48研究生から正規メンバーに復帰した峯岸みなみが担当している(3人はそれぞれSKEとNMBとAKB研究生の予選で敗退し、本選出場はならなかった)。中継中、峯岸がふと、こんなことを口にした。

「思いが強くなるとグーになるんです」

この言葉が出たのは、ベスト16まで残ったメンバーから準々決勝に進む8人を決める試合の8戦目、大場美奈(AKB48・SKE48兼任)と大家志津香(AKB48)の対戦時。このとき、グーで1回あいこになったあと、大場がふたたびグーを出して勝利したのだ。ほかならぬ峯岸自身、3位となった2011年の大会では、準決勝で篠田麻里子(同大会の優勝者)に敗れるまでずっとグーを出し続けている。

峯岸の言葉はその後、準決勝に進んだ大場と上枝恵美加(NMB48)の対戦でも証明される。このとき、両者はグーで5回あいこを繰り返し、けっきょく最後までグーで勝負した上枝が大場を制した。

だが、優勝したのは上枝ではなく、初戦から決勝までずっとパーを出し続けた松井珠理奈(SKE48・AKB48兼任)だった。準々決勝前に「こんなにドキドキしたじゃんけん大会は初めて」と語っていた珠理奈だが、そう言いつつも最後まで自分のペースで進めていけたというのが今回の勝因といえるのではないか。パーは彼女の余裕の表れともとれる。

……と、ついマジメに試合を分析してしまったが、じゃんけん大会は、同じくシングル曲のメンバーを選ぶイベントとして定着している「AKB48選抜総選挙」とはやや異なり、お祭りという性格が強い。メンバーたちが思い思いの衣裳で参加するのも、やはりお祭りならではだ。

前出の大場美奈は、コント番組での博士の格好(ハゲヅラとメガネをつけ白衣を着る)というアイドルらしからぬ出で立ちだったし、小嶋陽菜(AKB48)は、これまで赤いドレスで試合にのぞむことが多かったが、今年は大好きな「ふなっしー」の着ぐるみをまとい、ふなっしー本人を連れて会場に現れた。しかも自分の出身地・埼玉県のマスコット「コバトン」のぬいぐるみも持って。

さらにわかりやすく祭りを体現したのは、AKB48の選抜常連である大島優子だった。金ピカのはっぴにねじり鉢巻きという出で立ち、そして御輿に乗って登場という、文字通りのお祭りスタイルを貫いた。とはいえ、肝心の対戦では白間美瑠(NMB48)に敗北を喫している。この時点で、今年の総選挙での選抜メンバーが珠理奈を除き全員敗退というのが、じゃんけんの神様のいたずらを思わせる。

もともとシングルのメンバーを運営側やファンが選ぶのではなく、運の強さだけで選ぼうという発想から生まれたこのイベントでは、毎回、世間的にはまだ無名のメンバーが選ばれることも少なくない。

今回の大会でいえば、2位の上枝恵美加(カミエダエミカと読む。AKBの武藤十夢、SKE卒業生の今出舞、乃木坂46の中田花奈と並ぶ回文名前!)をはじめ、平田梨奈(AKB48)・名取稚菜(AKB48)・阿部マリア(AKB48)・田野優花(AKB48)・湯本亜美(AKB48研究生)・佐々木優佳里(AKB48)・土保瑞希(AKB48研究生)・古畑奈和(SKE48・AKB48兼任)・鵜野みずき(NMB48研究生)と、明日の48グループをになうであろうメンバーが並ぶ。このうち土保と湯本は、今年6月にお披露目されたばかりの新人中の新人だ。12月リリース予定のシングルは、珠理奈をセンターに、若手メンバーを先輩である北原里英・大家志津香・菊地あやか・藤江れいな(いずれもAKB48)といった先輩たちががっちり固める布陣となる。

この大会前には、研究生予選を勝ち抜いた小嶋真子(8月に正規メンバーに昇格)にも期待が集まっていたが、惜しくも3回戦で敗退。試合直後にグーグルプラスに投稿された、舞台裏で彼女が泣いている写真が印象に残った。でも、来年もじゃんけん大会があれば、たぶんこじまこちゃんは予選なしに出場できるはずだし、もっと余裕をもってのぞめばいいんじゃないかと思う。AKB48グループの総監督・高橋みなみの名言を借りるなら、「遊びな、遊びな」である。

個人的にくやしいのは、ドロンジョ様風のセクシー衣裳で登場した佐藤聖羅(SKE48)の対戦が、テレビ中継ではあろうことかCMが入って見られなかったことだ。思えば、昨年も彼女はビキニ姿で出場したものの、その試合はテレビでは見られなかった。まさか2年連続で同じことが起こるとは……。このようなことが二度と繰り返されぬよう祈りたい。聖羅クンも、来年もまた予選を勝ち抜いて絶対に本選に出てくるように!
(近藤正高)