彩りも鮮やかなリス料理

写真拡大 (全2枚)

そろそろ味覚の秋が近づいて来る頃。欧州ではシカやイノシシ、キジなどジビエ料理がレストランに並ぶ時期に突入する。以前のコネタでは雷鳥を食べたが、今度はピーターラビットの世界、英国でリスを食べてみた。そう「チップとデール」でご存知の、かわいらしいリスちゃんです。

訪れたレストランは英ケンブリッジにあるセント・ジョンズ・チョップハウス。伝統的な英国料理と地ビールを売りにするケンブリッジ市内でも人気あるレストランの一つだ。インテリアもあか抜けており、普段も特別な日も使える感じ。値段は良心的だ。名前の「チョップハウス(肉料理店)」が示すように肉料理がスペシャリテ。店内には解体用の包丁も飾られている。

メニューは肉屋らしいナインナップ。カモのパテにハトとチョリソの盛り合わせ、ウサギの薄切り衣揚げなど。ハトもウサギも日本人的には少し抵抗あるが、今回の目的はもっと特別。えーっと、リスは……あった! 「ポット入りリス 7ポンド(約1100円)」。「ポット入りリス」という字面はかわいいけど、つまりペースト状になったリスのこと。それにヘーゼルナッツバターと赤キャベツのコールスロー、トーストが添えられる。

運ばれてきた料理は、外見からだと、まさかここにリスが入っているとは思えない感じ。「これリスですよー! 」と言われない限り確実に分からない。上部に少しリス肉らしきものがはみ出ているが、見なかったことにして食べ始めた。

口をつけた瞬間に独特のにおいがするのかと思いきや、あまりしない。よく嗅げば「これがリスか」と思えるような香りはあるも、気になるレベルではない。食感は弾力があって硬め。肉自体も鳥肉のようなツナのような感じ。強い主張は無い。しかし料理の中には小骨が交ざっているので、リスを食べているんだということを否応無しに感じさせてくれる。リスの骨なんて初めて見ました……。

「リス食べた! 」なんて言うと「かわいそう……」という声も聞こえそうだが、じつは英国でリスは害獣の一つ。駆除対象になっている。ただしリスと言ってもすべてのリスではなく、北米原産のハイイロリスのこと。英国では1876年にこのハイイロリスが外来種として入ってきて以来、在来種だったキタリスは減少を続けた。

英ガーディアン紙によれば、現在ハイイロリスは全英で500万匹いるといわれる。一方で、キタリスは推定12〜14万匹だ。ハイイロリスに追いやられた結果、キタリスの75%はスコットランドに住む。中でもイングランド南西部コーンウォールはキタリスの保護区を作るなど特に力を入れており、英チェールズ皇太子もキタリス保護を目的とした「キタリス・サバイバル・トラスト」の後援者だ。

もちろん英国世論はハイイロリス駆除に賛成ばかりではない。英動物保護団体アニマルエイドはチャールズ皇太子の支援に反対し、「ハイイロリスを毒殺、銃殺または袋の中で撲殺するのは理性的、非人道的であり失敗する運命にある」として皇太子が設立した自然食品ブランド「ダッチーオリジナル」の購入をボイコットする運動を2010年に起こしている。
(加藤亨延)