ブレない生き方をどうやって手に入れるか。発売1カ月で3万部を突破した『ケチケチ贅沢主義』の著者・muccoさんに、その秘訣をたずねた。

■「なんとなく同僚とお茶」をやめる

最近、経済環境が大きく動いています。株の売買で儲かったり、会社の業績が好転している読者さんも多いのではないでしょうか。少し景気がよくなりそうな気配ですが、だからこそ、しっかりお金を管理し、いつもと同じように暮らしたいと私は思っています。

というのも、私の年上の夫は1980年代のバブル期に投資用マンションを買い、バブル崩壊後、値段が大きく下がりました。9.11やITバブル崩壊のときは、外資系企業に勤務する夫が職を失うかもしれないと、とても心配しました。私自身も金融系の派遣社員でしたから、2人同時に職を失ったらどうしよう、と。それで、それなりに収入があるうちに借金をなくし、資産運用で働かなくてもささやかに暮らしていける経済的基盤をつくる、というのが私たち夫婦の目標になったのを“なんとなく”買って、結局上手に着こなせず、「ああ、失敗した〜」と後悔した経験が何度もあります。その頃、買う瞬間は楽しいけれど、その楽しさが長続きしないと自分は居心地が悪いのだと気づきました。

買ってよかった。行ってよかった。食べてよかった。後からでもそう思えそうなもの・ことを吟味し、お金を使うようにしたら、気持ちがすっきりし、貯金もどんどんできるようになりました。そして“なんとなく”で買ったものがほとんどない、好きなものだけに囲まれた暮らしは実に快適でした。

私が自由に使えるお金のうち、もっとも優先しているのは貯金です。半分、夫婦共有の口座に貯金しています。

その次がおしゃれ代です。母が洋裁をしているからか、私は子ども時代からおしゃれが大好き。自分に似合う気に入った服に身を包んでいると気分がシャンとしますし、たとえば夫など、私の周囲にいる人も、似合う服を着て気持ちよく過ごしている女性と一緒なら気分がいいと思うのです。

ただし、“なんとなく”欲しい程度の服やバッグや靴をすべて買っていたらお金が足りません。そこで私は1日で1番長い時間を過ごすオフィスで着る服に投資することにしました。幸い、カジュアル服よりきちんとした服のほうが似合うので、好みと“似合う”と必要性が一致しています。

読者の皆さんも日々“なんとなく”使っているお金があると思います。たとえば私はランチ後に同僚と行っていたカフェ代がそうでした。ずっと同じ人たちと一緒でそれほど楽しい話をするわけでもない。それよりも自宅で丁寧に淹れたお茶をタンブラーに入れて、自分の席でのんびり過ごすほうが性に合っていました。仲間はずれにされたら困りますが、皆さん、大人ですからそんなことはありませんでした。カフェやお付き合いの飲み会を減らし、会いたい人とたまに美味しいランチをする生活のほうが気分爽快で、無駄遣いもしないですむようになりました。

小さな出費でも、積もれば山となります。もちろん、ランチ後に同僚とコーヒーを飲みながらおしゃべりするのがとても楽しく欠かせないひと時なら、それは意味のある出費です。要は、小さな出費であっても、その出費を意識するかしないかが大切だと思うのです。

■1年間貯金できたら、1割ペイバック

以前、友人から「ケチなの?」と冗談めかして言われて「うん、ケチなの」と笑顔で返事したことがあります。自分自身が「今」をちゃんと楽しみながら、「将来」に備えている実感を持っているので、ケチと言われても気になりません。実際、価値観が異なる人から見ればケチなのでしょう。でも、他人にどう思われるかではなく、自分がどうありたいか。そちらのほうが“ケチケチ贅沢”のライフスタイルを志向するようになった私には重要です。

先ほどお話ししたように、若い頃は流行っているからと自分に似合わない服を“なんとなく”買ってしまう失敗もたくさんしました。お金を使って着られない服が残る。なんてもったいない消費でしょう。

貯金に慣れていない頃は、ちょっと辛かったですが、最初に貯金分を「ないもの」として分けたら、だんだん慣れました。ただし、ひたすら貯金するのも辛いので、1年間、きちんとルールを守って貯金できたら1割ペイバックして好きなものを買ってよし、という「ご褒美ルール」もつくりました。経済用語で言うところのインセンティブですね(笑)。そうすることで、ますます「頑張ろう」というモチベーションが上がりました。

でも、不思議なものです。バジェット内でやりくりすることに慣れ、本当に欲しいものにお金を使う生活を続けていたら、そのインセンティブを使ってまで欲しいと思うものは、それほどないのです。節約して我慢しているという意識もなく、ふだんの消費で十分に満足できるようになっていました。ですから、ペイバック分も結局、貯金に回しています。

もちろんこれは、私の場合は、です。人それぞれ、快適な状態、楽しみは異なりますから、ご自身の志向とライフプランに沿った快適さを追求されればいいと思います。

強調したいのは、目的なく節約しても、ちょっとお金が入ったら気持ちが揺らぐ可能性があるということ。何のための節約、貯金なのかを考えることは、ライフプランを見直すことと同義です。自分と家族の今の幸せ、これからの幸せはどんなものか。誰とどこでどんなふうに暮らすのが幸福か。思い描く幸せのカタチを実現するには、どれくらいのお金が必要で、時間はどれくらいかかるのか。1度、じっくり考えてみることをお勧めしたいです。

■「ケチケチ贅沢」に暮らす7つのルール

1.消費そのものは悪ではない
2.ライフプランを見つめ直す
3.お金の使い道に優先順位をつける
4.「なんとなく」で買わない
5.「他人」目線ではなく「自分」目線で
6.「なんとなく」で節約しない
7.貯金を楽しくする仕掛けをつくる

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mucco
人気ブロガーで、AFP2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を持つ。著書『ケチケチ贅沢主義』のテーマは「おしゃれ×お金」だが、多くの読者の心に刺さっているのが彼女のブレない生き方だ。運営するブログ「ケチケチ贅沢日記」は月間100万PVを誇る。http://mucco.exblog.jp/

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(ブログ「ケチケチ贅沢日記」運営 mucco 構成=中沢明子)