女子高生が探る!男の世界。キャバクラに入る男性はどんな感情なの? 個室ビデオってなに? なぜ立ち飲み屋に入るの? 仮性包茎矯正リングってどう使うの? 『をのころん』には、男たちの哀しくも滑稽なブルースが詰まっている。

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男性の知らない女性の生態白書、って割りと頻繁に出ていると思いますが、その逆ってあまりないと思うんですよ。
いや、あるけど。アンアンのアンケートとか。
ただ、そこに赤裸々なセックス話等はあっても、絶対的に欠けているものがあります。
それは、ブルースです。

ルノアール兄弟・高本ヨネコ『をのころん』は、女子高生が男の生態を探っていく、というマンガ。
ああ。「どんな女性が好みか」とか「童貞は何歳で捨てたか」とか「恋愛白書」とか、そんなのは載っていません!
だってそれは、男の本当の生態じゃないでしょ? 上澄みでしょ?
男の生態はね、もっと汗臭くて、ドロリとしていて、煙たくて、哀愁を帯びているんだよ。

たとえば今でも日本各所で見られる「個室ビデオ」。
女子高生・小野緒乃子(15)に男の世界を教えるべくやってきた妖精メシベルは、個室ビデオについてこう語ります。
「ここに来る人はみんなシコリに来ているのよ……!」
いや、うん、知ってる。
わかってたけど言葉にされるとやりきれない。けどそうだよね。なんだろうこの複雑な感情。

そもそもなぜ、このインターネット全盛期の時代に、個室ビデオで男たちはシコるのか?
メシベルは語ります。個室ビデオのメインユーザーはサラリーマンが中心。つまりお父さんたち。
お父さんが家でシコれるでしょうか。
否! まして息子がいるようであればなおのこと。
そんな、仕事で頑張っている男がくつろいでシコれる、ささやかな場所。それが個室ビデオなわけです。
ここでなら、シコってもいいんだ! やったねお父さん!

とはいえ、個室フロアは廊下が異様に狭い。
となると、ドアが開くと「シコリ終わった男」と「これからシコる男」がすれ違うという、独特の文化が生まれます。
その瞬間こそが、男達の知られざる一瞬なのです。

性の話でいうと、男独自の文化として「オナホール」がありますね。
オナホールとは、男性がオナニーを上質なものにするために作られた、言うなれば「快楽の研究の結晶」ですね。
TENGAとかオシャレになりましたね。すばらしいですね。ここで表紙もチェックしてね。

しかし、オナホールで一番重要なのは、オナホールの種類ではない、とこの作品は語ります。
どんな種類でも必ず行きつくのは、オナホールの洗浄です。
おわかりいただけるだろうか。
使用後の達成感と倦怠感。キレイに洗いたいという責任感と安堵感。それに伴う憂い、慈しみ、虚脱、惑い……。
オナホールの洗浄の時に生まれる感情こそが、男の心を磨くのです。

その他にも、酒と対峙する男たちの物語も描かれます。
コンビニおつまみの充実と金欠による、路上飲みという男たちのリラックススタイル。
女性や一見さんが決して入れないバリアに包まれている、タバコでいぶされた立ち飲み屋。
店員でも純粋な客でもない、勝手に注文をとって店員に混ざりこむ、なぞの常連の存在。
絶対に王手を打てないとわかっていてもキャバクラに入ってしまう男たちの哀愁。

え、もっとオシャレに飲んでる人もいる? 女の子とだって飲む?
ぼくもそうだと思います。でもそちらに興味がある人は、他の本読めばいいんです。
この本は、男たちのどうしようもない飲みの生態の哀しさと滑稽さを、慈しむように描くことに徹底していますから。
ちなみに作者いわく、路上飲みはサンクス周辺が多いそうな。

男たちに眠る性欲と、日々のストレスと、酒と、哀愁。
きっとこの本を読んだら、男の本当の部分がわかるはず。
……というのは建前で、ぶっちゃけ女子高生が男の恥ずかしい部分を見て恥じらうのを楽しむセクハラマンガです。
そして、セクハラされている女子高生を見てニヤニヤしている自分の姿に気づいて憂うまでが、ワンセットです。

これが、男の世界です。


ルノアール兄弟・高本ヨネコ『をのころん』

(たまごまご)