潮騒のメモリー(初回限定紙ジャケ仕様~アナログEP風レトロパッケージ) [Limited Edition]
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夏ばっぱー! お盆の日本が大絶叫。
「あまちゃん」20週「おらのばっぱ、恋の珍道中」(8月12日〜17日/115回〜120回)は、夏ばっぱ(宮本信子)に関するあれやこれやが「じぇ」に次ぐ「じぇ」の連続でした。

まず、夏が、66年間生きてきてはじめて東京にやってきます! (1じぇ)
そして正宗(尾美としのり)のタクシーに乗って強行軍で東京観光。
東京行きの目的だった、娘時代に北三陸市にリサイタルに来たことのある橋幸夫(本人)と再会することを達成!(2じぇ)
46年ぶりのデュエットをして帰途につき、アキ(能年玲奈)のオーディション当日、今度こそ本当に倒れてしまう!(スリーじぇ)

夏が元祖北三陸のアイドル、なっちゃん(某飲料水のCMヒロインのようだ)だったことが判明したことも「じぇ!」でしたが、橋幸夫と「いつでも夢を」のデュエット、そして海女さんの衣裳、と来て、そうか、夏に投影されているのは、タモリさんも憧れる国民的女優・吉永小百合さまか! 小百合は安部ちゃん(片桐はいり)の名前に使われていただけではなかったのか! と、どれだけ「じぇ」をつけてもつけても止まらないほどの衝撃でした。
いやあ、一回から「いつでも夢を」がかかっていたというのに、洞察力がまだまだ足りません。反省反省。

小百合さまは、渋谷区出身の都会っこでいらっしゃいますが、「潮騒のメモリー」がオマージュを捧げているに違いない実在する映画「潮騒」の64年版のヒロインで、62年には「いつでも夢を」を橋幸夫と歌って大ヒットをとばしていたのです。


これで、20世紀、80年代アイドル、21世紀、00年代以降のアイドルだけでなく、60年代のアイドルと20年ごとのアイドルが集まって、「あまちゃん」は昭和の高度成長期から平成アイドル史ドラマというようなムードも濃厚になりました。
アイドル史に関しては中森明夫氏という専門家がいらっしゃいますので、ここでは多くは触れませんが、それにしても娘時代の夏っちゃん(徳永えり)がかわい〜。清純そう〜。

夏ばっぱのウニ柄の着物、斬新〜。宮本信子は着物着慣れてない感じに着崩しているそうですね。余談ですが、夏はきれいなブルーの石指輪を中指にしています。結婚指輪じゃなくてオシャレ指輪なのかな。結婚指輪はしてないのかな。

橋幸夫は、「夏ちゃんだよね」と、46年前に一度会ったきりにも関わらず気付きます。
そしてものすごく優しく接しますが、反対に、友情出演した「潮騒のメモリー」のヒロイン鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)のことを全く覚えてないというエピソードも楽しく見ることができました。
ひろ美のことを忘れてしまったのは、イベントで橋の名前を由紀さおりとシャッフルして、幸橋夫と呼んでしまったからなのでしょうか。
この名前呼び間違い事件は、過去にNHKの紅白歌合戦であった名前呼び間違い事件を思い出し、ちょっと苦い気持ちになりましたが。
実際にあった名前間違い事件で間違えて名前を出されてしまった歌手は、戦後を代表する大スターであったのです。偶然にもそれを思い出させる名前間違いエピによって、戦直後、高度成長期、バブル期、今のアイドル(スター)が出そろったと思うのは、完全に妄想です。ただ、国民の人気者を描くのに戦直後のあの人のことも盛り込まれていたら鉄壁だった気もするのです。

さて、夏の会いたい人が「ゆきお」という人であるという話になって、
鳩山由紀夫? 青島幸男? と来て、ゆきお?ゆきお?・・・と引っ張って、
鈴鹿さんに「Wの悲劇」つながりで「蜷川幸雄?」と言ってほしかったです。
あ。「潮騒」の三島も由紀夫!  あ。あ。由紀さおりの中にも ゆきお が! 

ゆきおの中のゆきお・橋幸夫と夏が、無頼鮨でデュエットするとき、最初は夏の声が出にくかったのが、だんだんのびやかになっていく感じも良かったなあ。

で、満足して北三陸に帰る夏は、東京に逃げてきていたユイ(橋本愛)のママよしえ(八木亜希子)を連れ帰ります。
ユイの父・功(平泉成)が倒れ、リハビリ生活になったことに疲れて失踪したよしえによって、ユイの東京行きの夢は完全に絶たれたので、戻ってきたよしえを許せないユイでしたが、激白タイムを経て丸く収まります。

19週で春子(小泉今日子)が「逆回転なんかできない」と言っていましたが、
ユイはアキに「逆回転してよ」とメールします。
そして、功は「元通りなんかならなくていいよ」と言う。
変わってしまったところからまたはじめようという考え方は、染みました。

とってもいい話なんですが、ちょっと待て。足立家に関しては、ユイを東京に行かせない作劇上の都合で動かされている印象は否めません。
功があまりにも早く復活し過ぎていて、よしえのやっていることがあまりにも短絡的に見え過ぎちゃう。八木亜希子の生きることに疲れた主婦演技も迫真で良かったのですが、だからこそ余計に、そんなに思い詰めて東京に来たのに、もう旦那回復してきちゃってるんだよ? と思ってしまうんですよ。
そうするといきおい、ユイが高校辞めて東京行きも諦めてグレて・・・と抱えているものまで、やや重みに欠ける感じがしてしまうんですよねえ。
功がずっと闘病していても、そこに比重がかかっても描ききれないでしょうし、こうするしかなかったのでしょうけれど。

そうまでしてユイを東京に行かせていないのですから、ついに東京に行くときが「あまちゃん」の最大盛り上がり地点となってほしいものです。

などと少々小姑目線で見てしまいましたが、なんだかんだで、ユイのふっきれヘン顔によって、すっかり気分はリセットされ、その先に向いてしまいました(単純)。
種市(福士蒼汰)とアキとユイの、ヘン顔。
顔も変ですが、三人の関係も変わっていき、恋人が板前になって、金曜日119回では、
アキが「恋人がお仕事です」失言。
水口(松田龍平)に、恋愛していることを指摘されるほど、アキがキレイになっています。
メイクの違いでこんなにかわいくなるんだなー。
能年玲奈もこの数か月で成長した(痩せたと思う)のでしょう。
キレイになったアキですが、アキの部屋にあるたくさんの犬のぬいぐるみにもちょっと似ている気もします。アキは犬タイプですね。ちなみにユイは猫タイプ。夏の飼っている三毛猫は美猫だにゃ〜。

そして、太巻映画祭のプロジェクトが発動。春子が「太秦」と読み間違えたのがツボりました。
その映画のオーディションにアキも参戦することに。

土曜120回、純喫茶アイドルで、太巻(古田新太)と水口(松田龍平)が語り合う中で、
適宜挿入されるマスター甲斐(松尾スズキ)の視線がよかった。
「悪いようにしないからって悪いやつのセリフだよね」のセリフも効いていました。
甲斐、65歳って、夏が66歳だから、甲斐もけっこうなじっちゃんなんですね。じぇじぇじぇ。

そして、太巻です。
太巻を演じる古田新太がダイワハウスのCMで演じている振り付けのできる監督と太巻が元ダンサーという設定が微妙にリンクする上、尾美としのりと塩見三省までCM出演しはじめたことが「アマちゃん」ファンには話題です
さらに、20週の金曜日の「笑っていいとも」では、古田新太から有村架純へ電話がつながりました。ふたりの会話が終わるか終わらないかのところで、昼あま(12時45分の放送)がはじまってしまったという、これまた微妙な重なりがありました。

週刊誌のインタビューで古田新太が、脇の下に手をいれるのは「トレインスポッティング」のオマージュと明かしていたことも興味深いです。
そんなふうに話題に事欠かない太巻が、鈴鹿はおそらく影武者のことに気付いているはずだと予想し、
「知ってて25年も騙されたふりしてるんだからたちわるいよ
罪滅ぼしなんかしなくていんだよ悪いのは全部おれなんだからさ」と言います。
なんかこういうセリフだと、実はいいひと? と思っちゃうのに、そうじゃないのかも。わっかんない〜。さすが一筋縄ではいかないプロデューサーです。

基本的には、見る人に親切な「あまちゃん」。フラグのわかりやすさ(20週だと、寝ている夏が半目をあけていてユイが心配する。が、土曜日に本当に夏が倒れる)や、無頼鮨のギャグのところでししおどしがカーンと鳴るわかりやすさ、登場人物の気持ちもほぼだだ漏れですが、太巻だけはどうも読めん。食えない人です。クドカン先生のセリフと古田新太の芝居が素敵にからみ合った結果ですな。

いろいろあって、20週の土曜の終わりに、夏ばっぱが倒れてしまいます! ここは緊迫感ありました。
かかってきた電話を春子とアキがわれ先にとろうとするところが、何かいやな予感が働いている空気が出ていましたね。

演出は20週にして「あまちゃん」初参加の桑野智宏(「梅ちゃん先生」などを担当)。
この電話とるところをはじめ、無頼鮨やリアスでの広角めのカットをわりと多用している感じとか、純喫茶アイドルの窓超しから撮るカットや、水口と河島など、ちょっとシリアス感ある週でした。

純喫茶アイドルといえば、ブルー系の照明の中にいる水口が海の底にいるように見えました。底は深いのだろうな、まだ。早く浮上してきてほしいですね。
21週は「おらたちの大逆転」。夏の体調、出来レースらしいオーディション、いろんな負の要素に、逆回転、はじまるのでしょうか?(木俣 冬)

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