あまちゃん 歌のアルバム [Limited Edition]
ビクターテンターテインメントより8月28日発売
「潮騒のメモリー」のいろんなバージョンや「地元に帰ろう」「暦の上ではディセンバー」など劇中歌満載

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連続テレビ小説「あまちゃん」を毎週おさらいしているこの連載があまちゃんファンブックおら、「あまちゃん」が好きだ
に加筆修正の上、再録されることになりました。

本には16週のおさらいまで収録されていますが、ドラマはすでに20週へ突入です。

19週「おらのハート再点火」(8月5日〜10日/109回〜114回)では、東北なまりのアイドルの卵・アキ(能年玲奈)が、いよいよ人気アイドルの波に乗り始めました。
アキが子供番組でブレイク、CMキャラクターにも選ばれます。

19週の展開はとてもめまぐるしくて。春子(小泉今日子)、正宗(尾美としのり)、アキの親子で芸能事務所を設立し、ミズタク(松田龍平)も加入し、太巻(古田新太)マジックでGMT5がブレイクして、アキとミズタクがちょっと落ち込んで、でも奇跡の巻き返しがはじまって、アキと種市先輩(福士蒼汰)が両思いになって、夏ばっぱ(宮本信子)がついに東京に来て・・・と駆け巡ります。
(まったくの余談ですが、正宗がウニのパスタをつくるときに「クレソン」を出してきて、「風立ちぬ」ファンの心も釘付けにしました)

おまけに北三陸市では、ヒロシ(小池徹平)とつきあってた栗原ちゃん(安藤玉恵)がなんと吉田正義(荒川良々)と結婚という意外な展開まで! ユイママ(八木亜希子)も現れるは、ユイ(橋本愛)が黒髪に戻るわはという怒濤の展開で、これまで起こったいろいろな出来事を覚えていると、感慨深さ倍増なんですよ。

そんなジャストタイミングで、「あまちゃん」総集編が放送されます。今のうちに過去の出来事をおさらいしておけば、きっとこれからますます楽しめそうってことで、朝は当然、深夜も「あまちゃん」を見てしまいそうです。

★8月16日(金)午前1:10〜3:55【15日(木)深夜】
 第1〜8週を放送

★8月17日(土)午前2:20〜4:00【16日(金)深夜】
 第9〜13週を放送

★8月18日(日)午前1:35〜4:00【17日(土)深夜】
 第14〜20週を放送
(いずれもNHK総合テレビ)

というわけで、今週のおさらいでは、19週の展開に関わる過去の様々なエピソードも振り返っていきますよ。
そしたら、ちょっとおもしろい発見があったんです。
なんと19週は、故郷編・11週(61〜66回)と密接なつながりがありました。

まずは、19週113回のアキのセリフ「盛りのついた猫背のメスの猿なんです」。
これは、11週66回で、春子がアキを泣かせた「猫背の貧弱なメスの猿」の変形です。
あのときは傷ついて泣いていたのに、今じゃ自ら認めてしまっているアキ。「欲求不満」とまで言って鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)にたしなめられるほど、あけすけな娘に成長してしまいました。
ここまで恋にドリームフィルターがまったくかかっていない表現は清々しいですね。

で、この11週66回で、夏が春子に「朝からギスギスするな」と注意するのですが、19週109回で、大吉(杉本哲太)が「変わっちまったな ギスギスしやがって」と芸能事務所の社長になった春子のことをなじると、菅原(吹越満)が「正確にはギスギスした女がいっときだけやさしくなってまたギスギスに戻ったんだけどな」と言うのです。
つまり春子は基本ギスギスした女なのだということがよ〜くわかりますね。

それから、11週61回で、ミズタクがユイを東京に連れ出そうとして失敗して、北三陸のひとたちに責められるとき、春子は「要するにうちら田舎者をばかにしてるんでしょ」と怒りをぶつけます。
そして、19週114回で、ユイママに春子はこう言います。
「家出の先輩として一言言わせてもらうね。田舎なめんなよ」
春子はなんだかんだいって田舎にプライドをもっているようです。

さらに11週61回で、春子とバトルしたミズタクが、春子の事務所に入って一緒にアキを売っていこうとすることも不思議な因縁を感じさせます。
61回でミズタクは「歌手をめざしてたんですよね。そういう親が一番厄介だというのはスカウトマンの常識です。反面、自分のかなえられなかった夢を娘にたくそうとする親も多いので味方につければ心強い」とズバリ指摘しています。
結局、春子はこの通りになっていきます。
そして、19週111回でアキに「それはまるでアイドルになれなかったかつての少女天野春子の復讐劇を見ているようでした」と語られるのでした。

また、11週64回で、東京に帰ったミズタクがテレビ局の営業まわりしている場所と、19週109回でアキを連れていくテレビ局の場所も同じ。ロケ地・NHK(当たり前)と思われます。

109回で、ミズタクがユイに電話して「ぼくは諦めてないよ。いつかふたりでまた『潮騒のメモリー』歌ってもらう」というくだりも、11週にふたりが東京行きに失敗しているところとつながっているわけです。

このようにいくつもの非常に深いつながりをもつ11週と19週、同じ吉田照幸演出でした。

さらにさらに発見がありました!
吉田照幸演出週には、ヒロシネタが多いのです。
3週で「ヒロシです」(ガラスの部屋ネタ)が登場。
6週で「ルイガトヒナキス」ネタで、ヒロシがアキに完全に失恋。
8週で ヒロシが栗原ちゃんとつきあいはじめます。
そして19週で ヒロシが栗原ちゃんに捨てられて、失恋レストランの片隅で涙の味のチャーハン食べることになります。
そして、ガラスの部屋 がまたかかります。

「失恋レストラン」や「ガラスの部屋」のかかり方などを見るに、吉田演出は音楽ネタが巧み。
アキと種市の告白シーンで「南部ダイバー」や「地元に帰ろう」を効果的にかけてもいます。
吉田演出週8週は、「その火を飛び越えて」とヴァン・ヘイレンの「JUMP」を使った演出がありました。11週は、伝説のレディオ・ガガ(フレディ) ネタの週です。
音楽と笑いを重ねるテンポがいい。
笑いに関しては「サラリーマンNEO」などを手がけているから慣れているのでしょうか。アメ女マネージャーの河島(マギー)の「アメリカのコメディアン」みたいな動きも面白かったです。
それと「のど自慢」も担当されていたようで、歌は世につれ世は歌につれ感に長けているのかもしれません。

また、19週111回でアキがトンネルに向かって「おらもアイドルになりてえぞ」と叫ぶのは、3週17話でユイが「アイドルになりた〜い」と突然叫ぶところと重なっています。3週も吉田演出です。
このときのアキの顔がユイにちょっと似て見えてドキリとしました。

同じく19週111回で、種市がユイとは別れたと言いますが、11週48回では、種市がアキにユイとつきあっていると告白していました。
アキが、種市が海の底深く潜っている(ドン底状態の例え)ときに叱咤激励する14週も吉田演出。ユイがぐれたのも14週。
演出家とエピソードの関連性を見事にすり合わせているのは神業のように思いますが、まあ、同じ演出家の担当したエピソードを一気に19週にまとめちゃったってことなのでしょうか。だから、駆け巡ってるのかもしれませんね。

こんな感じで、過去のエピソードと今をつなげていた19週ですが、土曜日114回で、北三陸から逃げたユイのママに対して春子が(過去にやったことは)「取り返しがつかない」と断じます。「逆回転できないもんね人生は。壊れたら壊れっぱなし。もう元には戻らない。残念でした」ってキツーイ。18週ではアキにコースター回転させてたくせに。でも真理ですよね。ずずずずーん。

土曜は、ようやくユイが東京に行けそうになったものの、またしても行けなくなって、とっても残念回。
ここまでユイを東京に来させないのは、相当重要な伏線なのだろうと想像できます。
「いつかふたりでまた『潮騒のメモリー』歌ってもらう」というミズタクのセリフと関係あるかなあ。とすれば、アキが「地元に帰ろう」でメジャーデビューしなかったことも意味がある気がします。
アキにとってのほんとうの歌は「潮騒のメモリー」なんじゃないでしょうか。

20週は「おらのばっぱ、恋の珍道中」。夏ばっぱが過去を取り戻そうとするようですが、取り返しつくんだろうか。(木俣 冬)

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