マキシマム ザ ホルモンの6年ぶりフルアルバム『予襲復讐』は、150ページ越えの本の付いた変な体裁のCD。そこを開けば、煮えたぎるマキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)の中学パワーの叫びがびっちり詰まっています。買え!聞け!全部読め!

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堂々オリコンランキング一位をとったアルバムは、やたら分厚くて、ひっくり返すと、漫☆画太郎の描いたババアがまんぐりがえししています。
何の話かというと、マキシマム ザ ホルモン(以下ホルモン)のフルアルバム『予襲復讐』の話。

このCDすげー分厚いんですよ。
だって、150ページ越えの本がついているんだもん。値段は2889(つばはき)円。
この本、マンガと、亮君の曲解説。
このマンガが面白い。亮君が音楽やるようになった半自伝的な内容で、同時に「お前ら俺の隅々まで理解して味わえ!」というエゴイズムの塊なんです。

ホルモンの曲はハードでややこしいものが多く、歌詞カードなしで空で歌える人はほとんどいないでしょう。
マンガでも書かれていますが「マキホル最高ー! 歌詞意味わからなくて、マジうけるんですけどー」とかって人も、事実います。
(※ファンの間では「ホルモン」と呼ぶのが一般的)

でも実は、歌詞カード見ると、すごい凝って作っているわけですよ。
例えば『my girl』って曲、陽気に歌ってるけどそれ歌詞「Please 膣 Give me the膣」とかだよ、とか。
でも、生粋のラブソングだよとか。
ここまで歌詞に意味あるんだぜ、というのをなんとか伝えるために、毎回亮君がCDに解説を入れるようになりました。

音楽は曲で語るものでしょう、受け取り手が自由に受け取るものでしょう?……という声も当然出てきてもしかたない。
だが! 亮君の考え方は違う。
マンガの中の亮君は言います。
「だまらっしゃい! そんなのは億も承知なんだよ! ミュージシャンの常套句だろうがそんなもん! でも本当はみんな自分のこだわって作ったもん隅々まで味わって残さず食べて欲しいに決まってるんだよ! で、食べた後に大満足にゲップしてもらいたいわけよ!」

だから亮君は、毎回ぎっちり書きます。あることないこと、全部書きます。
今回はわざわざマンガのために、形がDVDサイズになりました。
お前ら理解してるか、ちゃんと曲聴いてるか、ここの歌詞素晴らしいだろ!……というエキスが、150P超のマンガと曲解説対談で語られます。

実際、この本読みながらCD聞くと実に味わい深いんですよ。
亮君が音楽をはじめ、今も便所サンダル履いている理由を描いた「便所サンダル物語」。
中学の思い出からの流れ、結構グッと来ます。曲『便所サンダルダンス』を聞きながら読んでいただきたい。

にしても、随分無茶苦茶なことするなあ、という感じのアルバムではあるんですが、今までも色々やらかしています。
2012年2月、『小さな君の手』というMVが公開されたことがあります。子供を生んだから、幸せだよね的な、ホルモンらしくないポップス。
結局それはウソで、MVは一切売られることはありませんでした。
この曲でみんなを騙すため、スタッフにまでウソをついたので、ブチギレられたりとかね。
もうほんと、中学生みたいなんです。

思いついて、これサイコー!と言いながらやる。堂々と自画自賛する。
時に客に相当なムチャを強いる。
「聴く人が自分の思っているとおりに受け取ってくれない、というのが許せない(本文より)」という動機が常にある。
それがオリコン一位になって売れている。

でも紅白とかには出ない。
「恥ずかしがり屋さんなんだよ!」が理由と書いてますが「ていうか紅白出てるやつらより何気に俺達の方がCD売れてんだかんね!」とも書いちゃう。
亮君の中の悶々とした、いい意味で利己的感情を、「音楽」と「文字」と「パフォーマンス」全部通じて表現しているのが、マキシマム ザ ホルモンというバンド。
集大成として、歌詞をじっくり見せ曲を聴かせるるために、とことん仕掛けをしてこだわった一枚が、『予襲復讐』なのです。

ちなみに、『ROCKIN'ON JAPAN 2013年 09月号』では、ナヲちゃん・ダイスケはん・上ちゃんの3人が、アルバムを作った後姿を消してしまった亮君に手紙を書いた、という架空の手紙が掲載されています。
よくそんなもの思いつくなあ。あー楽しい。

(たまごまご)