これがレトルト版「逗子なぎさホテルカレー」。1箱630円とセレブ価格だが味はお墨付き。ひとくち食べれば、古き良き昭和の逗子にタイムトリップできるかも?

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8月に入り、暑さのレベルがさらに一段上がった感じで、蝉の声もますます激しくなってきた。雑誌やテレビでカレー特集をしょっちゅう目にする今日この頃、食欲がないときも不思議とカレーだけは食べたい気持ちになるから不思議ですよね。

そんな中、束の間の避暑気分が味わえる、「逗子なぎさホテルカレー」なるレトルトカレーを発見した。「逗子なぎさホテル」だなんて、まるで小説に出てきそうな名前だけれど、大正15年から平成元年まで逗子に実在した日本初のリゾートホテルなのだとか。しかも、葉山の御用邸近くということもあり皇族の休養施設として使われたり、政財界のVIPがお見合いや食事の場所として使ったり、作家の伊集院静氏が若き日に8年余り滞在したことでも知られる、なんともロマンチックな物語を秘めたホテルなのである。

残念ながら、このホテルは昭和という時代と共に壊されてしまったのだが、今なおそのクラシックな佇まいやゆったりした空気感を懐かしむ人も多く、「伝説のホテル」として語り継がれているのだそう。私も御茶ノ水の「山の上ホテル」とか横浜の「ホテルニューグランド」など歴史のあるクラシックホテルが大好きなので、今も「逗子なぎさホテル」があったならぜひ泊まってみたかったなあ……としみじみ。

ちなみに、なぎさホテルのカレーというのは、マレー風のチキンカレー。今上天皇がまだ皇太子様であられた頃に、裏メニューとしてつくられていたものという。それがどうして、平成の世に出ることに? 仕掛け人の内田こづえさんにお話を伺ってみたところ、
「私は今、逗子駅前で『凜桜(りおう)』という手打ち蕎麦の店を営んでいるのですが、その前は逗子海岸沿いで『サロン・ド・ナギサ』というレストランをやっていたんです。ある日、そこに来る知人から、献上カレーっていうのがあったの知ってる?と聞いて。その人は、あるパーティで「なぎさホテル」の最後の料理長だった人がつくるカレーを食べたことがあるというんですね。そこで、私もそのカレーを食べてみたい!料理長さんを紹介して欲しい!と言い続けて(笑)」

その後、やっと料理長とコンタクトがとれてカレーを作ってもらえることになったので、「サロン・ド・ナギサ」で期間限定メニューとして出したところ大評判に。
「全国紙にも取材されたところ、『真空パックでいいから送って欲しい』というご要望があり、それなら、本格的に逗子のまちおこしとして取り込んでみようと。納得のいく味ができるまでに、3年くらいはかかりましたね。陛下は鶏をソテーしたものにソースのようにしてカレーをかけ、パンと一緒に召し上がっていたそうですが、ごはんにかけてももちろんおいしいですし、好きなように召し上がっていただければ……」とのことだった。

味のポイントはじっくり炒めたたまねぎ、そしてつなぎに炒めた小麦粉ではなく、すりおろしたじゃがいもを使っている点だそう。ごはんにかけてみると、黄色っぽい色合いがいかにも昭和のカレーといった趣き。ひとくち食べていたみたところ、野菜の甘みが暑さでバテ気味の体にじんわりと染みる、なんとも優しい味わいであった。ヨット遊びなどで心地よく疲れた体に、このカレーはさぞおいしかったことだろうなあ……と想像がふくらむ。

「逗子の人たちにとって、なぎさホテルにまつわるエピソードは、昭和と共に、砂に埋もれた古い宝石箱のようなもの。それぞれに、ホテルにまつわるマイストーリーがあるんですね。私は今、砂をかきわけてその宝石箱を掘り返しているような気持ちです」
さらに、このカレーの売上げでいつか、逗子なぎさホテルを蘇らせたいという夢も抱いているそう。
「逗子には今、人を呼んでゆっくりできるようなホテルがないんです。それって、応接間のない家に住んでいるようなものですよね。このカレーを第一歩として、逗子というまちを盛り上げていけたら……と考えています」と内田さん。

そんなわけで、もし「逗子なぎさホテル」が再建した暁には私もぜひ、駆けつけたい所存。夏休み、特にどこへも行く予定がないという人は、この「逗子なぎさホテルカレー」で、のんびりと優雅な昭和の逗子へタイムトリップしてみてはいかがでしょう?(野崎 泉)


*ネット通販は自然派カフェ「ノムリエル」のオンラインショップで受付中。
*スーパーマーケット「スズキヤ」ほか、逗子周辺の小売店でも販売中。
*「凜桜」「アズィル」といった飲食店では、ご当地メニューとして食べることができる。詳しくは公式サイトへ。