『イラストでよくわかる日本のしきたり』ミニマル、ブロックバスター (著)/彩図社

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私たちの生活には昔から続くたくさんのしきたりや風習がある。

ひとつ例を挙げると七夕もそうだ。昔よりは少なくなってしまったけれど、願いを書いた短冊などを竹に飾り、夜は織姫と彦星に思いを馳せながら空を見上げる。七夕行事は本格的な夏の到来を感じさせるもののひとつだ。

この七夕。もとは手芸・裁縫技術の上達を願う中国の行事が起源だということをご存知だろうか? 子供のころから(大人になった今でも機会があれば)七夕の短冊には“身長が伸びますように”と書いてきたが、そのルーツからすると習字などの習い事の上達を祈願するのがふさわしいらしい。それじゃ私の今までの願いは……と、ちょっとだけ悲しくなってしまったが、この願い事は諦めて今後は何かの上達を願うことにしよう。

七夕の話はイラストでよくわかる日本のしきたりに書かれていたのだが、編集を担当した権田さんが一番驚いたのは、おみくじの作法だという。
初詣などでおみくじを引いて、その結果に一喜一憂することは多いと思いますが、現役の宮司さんいわく、“気に入らないなら、何度引いても構わない”と」

2回も3回も引いては意味がないと思っていたが、そうでもないみたいだ。これは確かに驚きだ。大吉、凶などその結果ばかりを覚えているが、本当に大切なのはそこに書かれている言葉のほうだ。
おみくじは、いわば神様からのメッセージ。結果よりも書かれている内容を心に留めて、1年を送るのが大切なんだそうです」

こんな風に、たくさんある行事や慣習の中で、本来の意味や正しい作法は知らないことが多い。権田さんが『イラストでよくわかる日本のしきたり』を作ろうと思ったのも“意外と知らない”がきっかけだったそうだ。

「社内の雑談で、小さい子供がいる先輩社員が“お食い初め”をやったという話をしていたんです。そこで“お食い初め”ってなんだ? と疑問に思い調べたのですが、そのときに日本には意外と知らないしきたりが多いなと感じました」

ちなみに、“お食い初め”とは、一生食べ物に困らないようにという願いを込めて、子供が産まれて100日目に行うお祝いのことだ。

でも、最低限の作法やマナーは知っているに越したことはないけど、覚えるだけで精一杯。結婚式や葬儀はもちろん、お中元・お歳暮、厄年と厄除け、初詣やお盆、さらにはお座敷の作法などたくさんあって、正直、面倒くさいと思うことが多々ある。

「しきたりというのは、日本の伝統的な文化であると同時に、人と人とのつながりを再確認するイベントなのだと感じています。しきたりのために家族が集まる、近所の人にも協力してもらうということが、少し前の日本では当たり前に行われていました。人間関係が希薄になっていると言われる現代だからこそ、もう一度、しきたりの持つ役割に注目してもいい気がしますね」

確かに、しきたりや風習を見つめなおすことで、四季の変化や人生の節目、お世話になった人たちのことをあらためて考えるきっかけになる。その意味を知ることで、そのしきたりや風習に興味が持てるかもしれない。「やらなくてもいいか」と思っていたしきたりや風習、一度見つめなおしてみてはどうだろう。
(上村逸美/boox)