キリリと冷たいそうめんに、温玉とみょうが、みぞれおろしをトッピングした人気メニュー「冷しぶっかけ」490円。

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四谷三丁目に昨年12月にオープンした「そうめんや」は、文字通りそうめんメニューの専門店だ。そうめんと聞けば夏場に家で食べる冷しそうめんか、関西エリアの人なら温かい“にゅうめん”を思い浮かべる人もいるかもしれない。
誰もが知っているがメジャーとはいえないメニューであるこのそうめん、外食で食べたことのある人はほとんどいないのではないだろうか?

現在のお店のメニューにもあるようなオリジナルレシピのそうめんを作っては、「なぜ安くておいしいそうめん屋が出てこないんだろう?」と不思議に思っていたのが「そうめんや」の店主。
蕎麦やうどんに比べて麺が細く伸びやすいこと、夏場以外は需要が少ないことなどもあり、そうめんは外食メニューとしては扱いが難しい。「誰もやらないんだったら、自分でそうめん屋を」と決意し、仮店舗での試験的な営業を経て、新宿の地下のスペースで2年前に「そうめんや」の0号店(現在は閉店)をオープンさせた。このたび四谷三丁目に移転オープンした1号店でも0号店と同様に、サラリーマンやOL、学生に気軽に食べてもらえるよう、単品メニューはすべてワンコイン以下で値段を設定している。

「メニューはオリジナルレシピのものがほとんどなので、初めてのお客さんには結構ビックリされるんです。例えば温泉卵をかけた『冷しぶっかけ』(490円)は、うどんでは定番のメニューですけど、そうめんは麺が細くて卵がよく絡むから合うと思うんですよ。珍しがられるのは『卵かけ冷し』。冷たいそうめんにオリジナルのダシを入れて生卵を溶いたものをかけて、それをつゆにつけて食べます。ほかにもなめこやオクラをトッピングした『○○○○(まるまる)ぶっかけ』(490円)、オニオンスライスとワカメやツナをユズ七味とマヨネーズであえたトッピングの『☆☆☆☆(ほしほし)ぶっかけ』(490円)はサラダ感覚で味わえるので、暑い時期にはかなり数が出ますね。温かいメニューは、しょうゆと塩ベースのスープに温泉卵をのっけたり、卵でとじたり、トッピングでもいろいろと変化をつけています。薬味にも、一般的なみょうがやしょうが、大葉のほかに、大根ときゅうりを一緒におろした“みぞれおろし”を用意しました。肉や油を使ったメニューがほとんどないので、女性を中心にヘルシーだと評判がいいんです」
ちなみにこちらでは、温かいそうめんを“そうめん”、冷たいそうめんを“冷しそうめん”と呼んで区別している。

「そうめんはお店がなかったがゆえに、みんな家庭でしか食べたことがないメニュー。ほとんどの人にとっては暑い夏のお昼に食べるもので、味は既製品のめんつゆを薄めて、好みの薬味を入れて食べるようなイメージですよね。それがみんなにとってのそうめんの味の基本なんですが、麺のゆで加減やダシや薬味にもしっかりこだわった、“そうめんや”のそうめんを知ってもらいたいと思っていました」

筆者もここで「冷しぶっかけ」をいただいたのだが、しゃっきりと茹で上げられたややコシのある麺の食感と、添加物を一切使わないオリジナルのつゆのうま味は、食べ慣れたはずのそうめんとはまったく別ものの味わいなのだ。提供されるときの冷たさも絶妙で、暑い時期になればなるほどクセになりそうな一品でもある。

お店は11:30〜14:00はそうめんメニューを専門にした「そうめんや」、17:30以降はアルコールも楽しめる「そうめんやバー」として、日本各地の名物そうめんを2種類ずつ食べ比べできる「食べ比べナイト」を毎晩行っている。
6月からはこの食べ比べが自宅でもできる、奈良の三輪そうめん、兵庫の揖保乃糸(いぼのいと)、香川の小豆島そうめん(オリーブ風味)、長崎の島原そうめん、愛媛の松山五色そうめん(梅、ゆず風味)の6種を組み合わせたユニークなセット「そうめんやセレクション」(¥3980)を店頭で販売。また、このセットを購入した人も含めて投票に参加できる、おいしいそうめんを決める「S-1グランプリ」も開催するとのこと。

0号店の頃から広告などは一切出さず、リピーターによる口コミでお客さんを増やしてきた「そうめんや」。リピーターの半分は女性を中心とした社会人だが、学生の集まりに使われることも多い。そうめんが大好きな東大生による任意サークル「東大そうめん部」の“部室”としても解放されているため、そのオフ会に利用されることもあるのだとか。

食の大国である中国からその昔、初めて伝わった麺類はそうめんなのだそうだ。ラーメンやそばに比べればマイナーな麺といえど、歴史をひもとけば奥が深い食べ物でもある。しかしそういった細かいことはさておき! まずは味覚が研ぎ澄まされるような“こだわりのそうめん”を一度食べてみてほしい。話はそれからだ、と思う。
(古知屋ジュン)

■そうめんや
住所:東京都新宿区荒木町8 木村ビル1F
TEL:03-3356-4675
営業時間:月〜金11:30〜14:00、17:30〜23:00(一部メニューはなくなり次第終了)
休日:土・日・祝
アクセス:東京メトロ丸の内線四谷三丁目駅4番出口より徒歩3分、都営新宿線曙橋駅A1出口より徒歩3分