『40代、職業・ロックミュージシャン』は、筋肉少女帯の大槻ケンヂが、90年代バンドブーム全盛期に輝いていた40代から50代のミュージシャンに、この惑いまくりの40代をどう乗り切るかインタビューしてまわった本。アンジー、リンドバーグ、ラウドネス、バービーボーイズ、ユニコーン、たま。数々の懐かしバンドが、決して懐かしくなく現役なのを感じられる熱い一冊。

写真拡大

リンドバーグの渡瀬マキ、44歳。
爆風スランプのサンプラザ中野くん、52歳。
JUN SKY WALKER(s)の宮田和弥、47歳。
すかんちのROOLY、49歳。
筋肉少女帯の大槻ケンヂ、47歳。

90年代に火が着いたバンドブームの立役者達。
その面々は、次々に40代、50代へと突入しています。
40代前後のロックミュージシャンと大槻ケンヂ(以下オーケン)が対談したのが、『40代、職業・ロックミュージシャン 大人になってもドロップアウトし続けるためにキッチリ生きる、'80年代から爆走中、彼らに学ぶ「生きざま」の知恵』です。
このタイトルである「ドロップアウトし続けるためにキッチリ生きる」ってのが、いいんだー。
 
20代の時はみんな無茶をしたんです。
若いバンドは、多少のムチャが楽しいし、頑張っちゃう。
バンド始めた理由は、音楽が好きだから。モテたいから。目立ちたいから。色々です。
まあ30代でもギリギリムチャはきく。でも40代になったらムチャはききません。

身体が辛くなります。家族ができることもあります。
性欲やら出世欲やらの欲望も弱まります。
さーて、ドロップアウトし続けるために、どうする?
オーケンは、インタビュー当時40代のロッカー達にインタビューします。
 
たとえば、元たま、現パスカルズの石川浩司(51)。
たまでランニングシャツを着て「ついたー!」って叫んでいたドラマーです。
彼の口から出たのは、テレビの嘘の部分。
テレビでは山下清のイメージにするため、くちごもった所以外全部カットにされた経験があると語ります。

石川「オレも前に、同い年の芸人だのアナウンサーだのといっしょに、「同い年スポーツ対決」みたいのにでたことがあってね。さいしょは「ガチで」ってことだったの。だけど、やっぱりさほどほかの出演者と差がつかなかったから、最後の最後に、「スミマセン、転んでください」って言われて」
大槻「エー! ほんとに!? それでどうしたんですか?」
石川「転んだよ。大人だから(笑)」

40代になってややこしくなるのは、人間関係とお金。
特に人間関係は、ロックな人ほど上下横のつながりがあってなかなか難しい。
そこで、石川が選んだのは、テレビでは大人として振る舞うこと。
ただしミュージシャンとしては、オーケンいわく「前衛、アングラ、アヴァンギャルド!」なことを思い切りやっており、ロック魂を全く失っていない。
テレビでわざと転んでくださいと言われた人が、移動式パーカッションに乗っているのを見てたまげてほしいものです。こっちが本物だから。

ユニコーンのドラマー川西幸一(53)は、無理し過ぎない生き方を見せます。
ユニコーン再結成について、川西は「曲つくる!?」と軽いノリで美容院の二階の狭い場所になんとなく集まった、なんて話を語ります。
ゆるい! 
みんな年をとってきたから、無理をしない。再結成するぜー!って力をいれない。
いまだに「どのコがカワイかった」という話をする。

川西「20代は熱く燃えてるでしょ。でも、30〜40になると「自分の生き方はこうだが、これでいいのか?」っていう焦燥感とか、「あいつの生き方と違う」みたいな認識が出てきて揺れたりするんだけど、それを過ぎると「そんなことはどうでもいい♪」ってなってくるんだよね(笑)」

40代ならではの、かなりキツい話しも山ほど出てきます。
ニューロティカのアツシ(48)は、バンドを法人化して会社にしています。
これは事務所に所属していると潰れたり未精算のお金が出てくるため。
アツシもオーケンも、事務所の社長が逃げちゃってる。ルーズな音楽業界のの裏話ぼろぼろ出てきます。
だからこそ自分たちのバンドにあったグッズの売上を考える。原盤権で権利を守る。若者向けには安いものを。決算期にはライブを増やす。
お金のため、じゃなく、お金がないとそもそもロックができない。

他にも、アンジーの水戸華之介(50)は、自分たちの親の世代のために年金を払う大切さについて述べます。
バービーボーイズのKONTA(52)は、不愉快な状態にならない選択をすれば、楽しめるようになる、と語ります。
ZIGGYの森重樹一(49)はアルコール依存症の話をし、それがまじめだったからのものだということ、いかに横すべりさせて他に楽しいことができるかを考え、戦っている様子を話します。
40代は、いろいろ考えたり楽しんだり、大変だ。

ロックミュージシャンとしての40代50代は、テクニック的にも大御所になりつつある時期。
確かに体力は20代にかなわないし、責任も多い。
だからこそそこで頑張りたいという話を、すかんちのドラマー小畑ポンプ(48)は語ります。

小畑「上は70過ぎてもやってらっしゃる方もいるし。ジャッキー・チェンの映画に出てくる老師みたいに、「このおじいさん、大丈夫かな」って近づいたらバッとやられるみたいなね(笑)。だから50歳なんていったらまだ脂のりきってますわ。ここで気を引き締めてがんばらないと」

楽しいことするためにきっちり生きる。ロックをやるために健康に気を使う。40・50代を楽しむ。
ドロップアウトしたロッカーとして生きるために、どうすればいいのかの知恵といきざまが、びっちり詰まっています。

一つ一つの対談は短いので、サクサク読めるのがとてもいい。
通勤・通学の電車で読むのが一番オススメ。読むと、元気がモリモリ出てきます。
思いっきりはっちゃけるために、真面目に生きよう。うーん大人になるって、こういうことなんだなー。


大槻ケンヂ 『40代、職業・ロックミュージシャン 大人になってもドロップアウトし続けるためにキッチリ生きる、'80年代から爆走中、彼らに学ぶ「生きざま」の知恵』

(たまごまご)