EXILE USA/1994年・ダンスチーム「BABY NAIL」結成。1999年・ダンスユニット「J Soul Brothers」に加入。 2010年「J Soul Brothers」から「EXILE」と改名しデビュー。役者としても活動の幅を広げ、劇団EXILE「DANCE EARTH〜願い〜」、映画「京都太泰物語(山田洋次・阿部勉監督)」などに出演。「ダンスは世界共通言語」をテーマに「DANCE EARTH」の活動を続け、旅本『DANCE EARTH』『DANCE EARTH〜BEAT TRIP〜』、『地球で踊ろう!DANCE EARTH〜Change the World〜』、DVD『DANCE EARTH』、絵本『ダンスアース』、『ダンスアース2』を作品化。映画『DANCE EARTH〜BEAT TRIP〜』でも、出演・総合プロデュースを務める。

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「“世界のリズムを全部乗りこなしたい!”という壮大な夢から始まったプロジェクトなんです」

発言の主はEXILEのパフォーマー・USAこと宇佐美吉啓。2006年よりライフワークとして活動し続けるダンスプロジェクト“DANCE EARTH”が今回、初の劇場作品「DANCE EARTH〜BEAT TRIP〜」として全国公開される。「ダンスという共通言語」で世界7カ国の旅を繰り広げるUSAが、この映画で表現したかったこと、そして「パフォーマー・USA」自身について聞きました。


《自分の感性ぐらいは自分で信じたい》

─── “DANCE EARTH”プロジェクトは、そもそもどんなキッカケでスタートしたんでしょうか?
USA 世界にはダンスがない民族も国もない。だったらこのダンスで世界とつながれるんじゃないのかな、と思ったのがキッカケですね。「全世界をダンスフロアにして踊りたいな」と思って旅に出たんです。そして、その冒険を表現していくのが“DANCE EARTH”。自分が旅しただけじゃなく、その冒険をいろんな表現に変えていこうということで、書籍にしたり、映像にしたり、絵本にしたり、ミュージカルをやったり、ヴィレッジを作ったり。それが今回は映画という表現になった、ということですね。
─── 今回の旅では7カ国を巡りますが、旅先を選ぶ基準って何かありますか?
USA 今回は「BEAT TRIP」というのがサブタイトル。サーファーが世界の波を求めて旅をする「SURF TRIP」のように、ダンサーだったら、世界の最高のビートを求める「BEAT TRIP」だなと思ってタイトルをつけました。そこでまず、最初に行きたかったのが、リズムのルーツ・アフリカ。人類のルーツであるという説もあるし。
─── タンザニアに行き、いきなりマサイ族とのジャンプ競争。
USA マサイのジャンプって、飛べば飛ぶほど高くなるんですよ。そして、マサイの村は人間よりも動物のほうが数が多い(笑)。でも、そういうところに身を置きたかったんですよね。旅をしていないと、どうしても人間中心になっちゃうんで。そこから始まって、あとはもう、僕がピンと来たとこに行くという。
─── 「ビンと来る」というのは例えば?
USA なんか「呼ばれたところ」みたいな。よくテレビ番組なんかである、セッティングされた上で「芸能人が踊りに来ましたー」みたいのじゃなくて、一旅人として「次どこ行く?」「いま、何を踊るべき?」と、自分の感性を大切にしようと思っているんです。
─── じゃあ、準備も綿密にするわけじゃなく、あえて出たとこ勝負で行こうと。
USA 出たとこ勝負ばっかりですね
─── それこそ、ジャマイカの旅では、コーディネイターがトンデモない人間だったじゃないですか。
USA トンデモなかったですねぇ(笑)。そういう事件も結構ありますね。そもそも、タンザニアの後にケニアに行く予定もなくて、たまたま飛行機が取れなかった時に聞こえてきた噂で、「太鼓と踊りだけで暮らす村があるらしい」「80歳を超える伝説のおじいちゃんダンサーがいる」と聞いて、それヤバくない? といきなり旅先を変えてみたりとか。
─── 映画の中でUSAさん自身が話していたことですが、「フリースタイル」という自分のダンススタイルと「旅」と「人生」がイコールであるという、まさにそのままですね。
USA 僕の旅の行き先がわからないように、人生もこの先どうなるかわからない。だけど、自分の感性ぐらいは自分で信じたいというか。それは誰に教わったものでもなく、話を聞いた時に胸がドキドキしたかどうかとか、そういうのに従っていこうとは思っています。


《僕の中での「グレート・ジャーニー」》

─── 今回の作品では、ダンスのルーツとしてアフリカを訪ねたり、USAさんのパフォーマンスのルーツであるニューヨークを訪ねたりと、「ルーツ」がキーワードになっているのかなと感じたんですが。
USA あぁ、確かにそうですね。それは……結果的にそうなった、という感じかもしれないですね。まあ、最初にリズムのルーツ・アフリカに行ったのがすべての始まりで、そこから世界最速の電子音で踊る「フットワーキング」を求めてシカゴに辿り着く……だから、人類の進化の過程も辿っているような感覚はありました。僕の中での「グレート・ジャーニー」というか。
─── 人類の足跡を辿る、という?
USA 「グレート・ジャーニー」って、人類最強の旅ですよね。だって、この地球上に何があるのかわからないまま旅を始めて、例えばいきなりイグアスの滝とかに出くわしたらトンデモない衝撃を受けたと思うんです。今の人間では、他の星に行くことがないかぎり同じ感動には出会えないのかもしれない。でも、地図に描いてあることとか、雑誌やインターネットに載っていることだけが本当のことかどうかはわからないし、自分の目で見て、聞いて、触って、ニオイをかいでこそ本当の体験。そして、体感こそすべてだな、と僕は思うから旅を続けていると思うんですよね。
─── で言えば、インドの旅は映像的にも、USAさんの表情も含めてまさに「行ってみないとわからないこと」でしたよね。
USA そうですね。よく「貧しい=不幸」って捉えがちだと思うんですけど、インドの子ども達と触れ合ってみたら、もう目の輝きがあるし、「今を生きる」っていうパワーが溢れてる。だから、「貧しい=不幸じゃない、そこでどう生きるかは自分次第なんだ」ということをすごく感じました。日本みたいに豊かで、夢を選べる状態にあると、「何になったらいいかわからない」とか「好きなことができなくて」と悩んだりしがちだと思うんですが、「選べるという時点で幸せ」ということをまず思わなきゃいけないなって。
─── インドの子ども達の「Choo Choo TRAIN」がまたいいですよね。
USA バッラバラでしたけどね(笑)。あそこがもうインドらしいというか。久々に頭抱えましたね、「振り付け一切できねー」みたいな(笑)
─── いろんなダンス・歌があると思うんですが、「Choo Choo TRAIN」を選んだ理由は?
USA やっぱり「つながってる感じ」が……みんなのチームワークでつながる感じが「Choo Choo TRAIN」の振り付けにはあるんで、面白いかなぁと思ったんですけど。まあ、バラバラだったなぁ(笑)。
─── いや、可愛かったです。
USA でも、不思議なんですよね。振り付けがあるものはなかなか踊れないのに、授業が終わったら「USA踊ろー!」と言って外に出てスピーカーで爆音かけて、なんか変な踊りを編み出して、ずーっと踊ってましたよ。「さっき振り付けできなかったじゃん」って思いましたけど、それが面白かったですねぇ。「今、その瞬間楽しむ」っていうエネルギーはズバ抜けてましたね。自分の直感を本当に信じてるんですよ。そこが本当に気持ち良かった。


《人間が踏める最速のスピードで》

─── 先ほどちょっと話題にも出た、シカゴの「フットワーキング」。第一人者であるキング・チャールズとのダンス対決が最後に描かれていきます。
USA あれは間違いなく、今現在、人間がステップを踏める最速のスピードなんじゃないかなと思っているんです。僕らのライブなんかでも、「結構速いな」と思う曲でもBPM(beats per minute)は120〜130くらい。でも、彼らが踊っているのはBPM165とか。
─── そんなに違いが。
USA 緊張感ありましたよね。なんかこう、向こうの畑というか土俵で踊るから、相当ハードルが高いんですけど、だからこそ飛び込んでみたくなちゃうんですよね。「行けるっしょ!」みたいな(笑)。でも、ひっさびさにビックリしたというか、あんなに速い音で踊ったことはなかったんで、普段やっているムーブが出ないんですよね。普段やってた動きだと追いつかないから、踊りに繋がりがなくなってきちゃったりとか、足が本当についていかないくらい速い……それは結構衝撃的でしたね。
─── でも、あそこまではずっと「ロードムービー」だったのが、いきなり「バトル漫画」みたいになって……「そこにスゲー敵がいるから戦いたいんだ」というUSAさんの台詞がまさに。
USA 漫画チックですよね(笑)。そういうところはあるんですよね。「ワンピース」とか「ドラゴンボール」にかなり影響を受けてるんで。「世界中のリズムを乗りこなして、ダンス王に俺はなる!」みたいなね(笑)。


「DANCE EARTH〜BEAT TRIP〜」
5月18日(土)よりTOHOシネマズ系ほか劇場にて公開(1週間限定上映)
出演・総合プロデュース:EXILE USA/監督:佐藤徹也/語り:ロバート・ハリス/上映時間:95分/音楽監修:DJ KIRA
製作:LDH、LDH DE/制作:monos、オフィスクレッシェンド/宣伝・配給:ニッポン放送、ELECTRO89 (C)2013LDH INC. ALL RIGHTS RESERVED.

(後編に続く)
(オグマナオト)