Jリーグ20周年を振り返る名波浩「百年構想は持ち続けるべき」

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 Jリーグは15日で、開幕20周年を迎えた。1993年5月15日に行われたヴェルディ川崎対横浜マリノスの一戦で産声を上げてから、10000試合以上の熱戦が繰り広げられてきた。節目のシーズンを迎え、ジュビロ磐田などで活躍した元日本代表MFの名波浩氏が、『Jリーグ サッカーキング』4月号内のインタビューで、これまでの振り返りと今後への期待を語った。

「Jリーグが開幕した頃はクラブハウスがなかったり、公共施設を借りてトレーニングするチームが多かったですが、徐々に自分たちの練習場やクラブハウスを持ち、選手寮を作り、アカデミー組織を充実させるなど、整備されていったように思います。浦和レッズや横浜F・マリノスのように、20年間でしっかりと形を作ったクラブが、新興クラブの目指すべきモデルケースになる流れになりつつあるんじゃないかな」

―現在、全国に40のJクラブがあります。プロサッカークラブが増えていることについてはどんな印象をお持ちですか?
「選手のクオリティーが分散される懸念材料があるとも言われますが、一方で地方や育成年代のレベルは上がっている。特に小さな子供たちの進化はすごいです。子供は見よう見まねで覚えていくので、 プロの選手を見て襟を立てたり、シャツの裾を出したり、同じスパイクを履いたりすることから始まる。プレーでも『あのフェイントからのシュートはすごかったね』とか『あのボレーシュートをやってみたいから、クロスを上げてくれ』と友達同士で話す機会が増えるなど、身近にJクラブがあることで、上達する環境が整ったとは思います」

―それは全国にJクラブがあることによる好影響の一つですね。
「それは間違いないですね。今後は地元の強豪校から地元のプロチームに入る流れができるとよりいいでしょう。そういう意味では全国に40のJクラブがあって、他にJリーグ加盟を目指しているクラブが10以上もあることはいい傾向なのかなと思います。もちろん、優れた選手が集まって、周りから目標とされるようなクラブが出てきてほしいところではありますが、先ほども言ったように戦力が分散している感がある。クラブ数に比例して選手数も多くなるので、セカンドキャリアを含めた雇う側の責任も、開幕当初より大きくなっているのではないでしょうか」

Jクラブの育成についてはいかがでしょう。
「これはクラブ間で温度差がありますよね。J1のトップクラブは非常に充実しています。サンフレッチェ広島、横浜FM、柏レイソルなどは選手をトップチームへ昇格させる流れが構築されていますが、それ以外はまだこれから。高校卒業から3〜4年、つまり育成組織から計算して7〜10年のスパンで育てることを考えているクラブがどれだけあるか。そういうビジョンを持っているクラブは当然、将来性があります」

スタジアムの雰囲気はいかがでしょう。
「Jリーグにはヨーロッパのような殺伐とした“完全アウェイ”の雰囲気はないですね。その温かさや、女性や子供が足を運びやすい点は日本の良さでしょうね」

その他にJリーグが世界に誇れる部分は?
「スタジアムのピッチは素晴らしいと思いますよ。あとは地元企業から協賛してもらえるようになったことかな。“おらが町のクラブ”というスタンスが、全国で確実に浸透しているように感じます。ホームタウンとの密着性も高くなっていますしね」

―Jリーグは20周年を迎えました。ここから先には何が必要でしょうか?
「百年構想などの基本的な考え方は、絶対にそのまま持って行くべき。ただ、時代は変わっていくので、新しいものをどれだけ取り入れられるかが課題になるでしょうね。あとは選手の質。地元出身の選手が成長していけばファンは応援したくなるだろうし、クラブとしてはその人数を増やして、さらに質を上げていかなければならないと思います」

今後のJリーグに期待することは?
「地域密着という意味で、地元の子供たちを育てるための環境作りや資金投入を惜しまないでもらいたい。もちろんトップチームが強くなければ意味がないので、そこにお金を掛けるのは当然ですが、日本サッカー全体の発展を考え、育成や地域に様々な還元をできるクラブが増えていってほしいですね」