国民的作品「ドラえもん」に体罰を思わせるシーンがある、との問題提起があるニュースサイトに掲載され、議論を巻き起こしている。

ドラえもんといえば日本はもちろん、アジアを中心に海外でも広く人気を集めている。体罰問題が騒がれる中でふってわいた論争に、ドラえもんも困惑――?

先生のゲンコツは是か非か

問題の文章は「夕刊アメーバニュース」で配信された「『ドラえもん』で先生がゲンコツふるうシーンは体罰か」。国際線の機内でドラえもんのアニメ版をたまたま見たという「都内在住の30代男性」の感想を記者が聞いた、という形で記されている。

あらすじの内容から、男性が見たのは「ニセ宇宙人」の回だと推測される。ジャイアンとスネ夫に騙されたのび太がドラえもんの道具を使い、2人を偽のUFOと宇宙人で脅して懲らしめる、というストーリーだ。なおアニメは1979年と2012年の2度製作されているが、男性が見たのがどちらかは定かではない。

話の結末、ジャイアンとスネ夫は、担任の先生から「いたずらをした挙げ句ウソを言っている」と叱られてゲンコツを食らう。男性はこの場面に「体罰」を想起したとして、

「アニメの内容にいちいち目くじらを立てることを『世知辛い』と認めつつも、『国際線で見せなくてもいいのでは』とも思った」

という。記者も文科省の「体罰の定義について」という文章を引き、のび太がしばしば廊下に立たされることは体罰に当たる可能性がある、と指摘している。

体罰をめぐっては2012年12月、大阪・桜宮高でバスケットボール部生徒が自殺する事件が起こり、全国的な議論を巻き起こしたばかり。今回の記事はあくまで個人の感想が主体とはいえ、多くの人が敏感に反応した。

オリジナルは40年近く前の話だが…

やはり目立ったのは、安直に「体罰」扱いすることへの憤慨の声だ。

「全体を見たら教育的な内容だろドラえもんは。ひとつのシーンだけを抜き出して批判するならポケモンだって動物虐待だと言ってるバカ団体と同じ」
「(北斗の拳の)ケンシロウは殺人鬼か? というのと同じくらい無意味な話」
「のび太が親に言いつけてパパとママが教育委員会に乗り込んで先生が懲戒免職で首になって市長が教員総入れ替えするアニメにすればいいよ」

一方、体罰と見られても仕方がないが、原作の時代背景を考えればやむをえない、とする人も少なくない。同話の原作が発表されたのは1976年、今から40年近く前になる。なお原作漫画を収めた『藤子・F・不二雄大全集』(09年から刊行中)では、セリフなどの「不適切な」表現についても、極力そのまま収録する姿勢を取っている。今回の話題は、いわば世代を越えて愛されていることの証明ともいえそうだ。

この件について、原作の刊行元でアニメ版DVDも発売している小学館に問い合わせたところ、問題の記事はあくまで一個人の見解ということで「こちらからお答えするということはございません」とのことだった。