爆発しなくていいリア充。余裕料理の幸せ『リア充ごはん』
まーぶっちゃけ、イラストの女の子がかわいいから入手しましたその時は。
あとで分かったのですが、イラストはマンガ『めくりめくる』の作者・拓でした。
そりゃかわいいよね。
さて、それの大幅リニューアルとして作られた本書。
一体どういうレシピ本で、誰向けなの？
中身を見ると、焼きうどん、豚汁、しょうが焼きといった、比較的簡単な料理がまず目に入ります。
しかし、中には「海老とアボガドの冷製パスタ」「スパイシーフライドチキン」のような、ちょいと手の込んだもの載っています。意識しないとアボガドなんて買わないです。
「牛すねのスペッツァティーノ」とか、名前見ても何が何だか。ジョジョの新キャラかと思った。
かと思えば、「まかないロールキャベツ」というレシピは「巻かない」の方。
ものすごく難しいことはしない。
でも完全初心者向けでもない。
これはどういうことだ？？
首を傾げながら読み直していたのですが、謎が解けました。
材料の部分にすごいこだわりがあるんです。
というのも、使っている材料に、ある時点までできていて買ってくるものを使っている。
特に面白いのが「クレイジーソルト」と「味覇（ウェイパー）」を多く使っていること。
あー、わかる。わかるわー。
クレイジーソルトと味覇あったら、なんとかなるなる。ちょっと料理っぽくなる。
でも、確実に、美味しく作れるように書かれています。
手はこんでいるけど、テクニックのいることはしていない。よほど無視しないかぎり美味しくなると思います。
ただし決して、お手軽三分クッキングではないです。結構手間かかります。
それを「大人の力」で、極力手軽にするように意図されています。
ならクレイジーソルトとか買ってこようよ、にんにくはチューブでいいよ。オリーブオイルかけようよ。
要するに、この本はいつもより手の込んだ料理をすることで、ちょっと楽しくなろうという本なんです。
日曜大工と似ています。本格的な材料買ってきて職人になるわけでなく、簡単に、でもちょっと手のこんだものを「作る」事自体が楽しいじゃないですか。
同じように、あらゆる文明の利器を利用して、少しだけ手の込んだ料理をすることで、楽しい日々をすごそう、という生活活気づけの本なんです。
同人誌時代からずっと喉に引っかかってたのは「リア充」という言葉でした。
「リア充」って言葉から受ける印象は、出始めの頃は、ぼくは割りといいものじゃなかったのです。
リア充っていわれたら「爆発しろ」って続くじゃないですか。
あとリア充という言葉とくっつくのが恋愛。彼女・彼氏がいたらリア充、っていう感覚もありました。
どちらかというと、幸せそうな人を攻撃する言葉だと思い込んでいました。
しかし、最近あちこちで「私リア充！」とプラスイメージで使われていて、びっくりしています。
街で見かける広告でも「リア充になろう！」なんてのが増えてたり。まじでー。自分で言っちゃうの？ 爆発しちゃうよ。
同時に、恋愛至上主義的な、恋人がいたらリア充、という考え方も、あるにはありますが、「日々が楽しければリア充」という感覚が強くなってきているように思います。
この『リア充ごはん』には、恋愛とか恋人とかの要素が一切ありません。「これでモテる」とか書いてません。
２人前のレシピはありますが、１人前のレシピも多め。
一番「らしい」なあと思ったのが、「万能ミートソース」。これ色々な料理に使えるミートソースを大量に自作して、冷凍して保存しておこう、という一人暮らし料理前提です。もちろん少々手がこんでいて、かつそこまで難し過ぎない。
イラストも多数掲載されていますが、ほとんどが女の子一人で作って、一人で食べている。
自分のための料理なんです。
マンガも載っているのですが、これがうまい。ある女の子が男性のために、ちょっと手の込んだ料理を作るんですが、これ妹と、結婚している兄なんですよ。
これが恋人同士だったら「爆発しろ！」ってなるんですが、この関係だとちょっと背伸びして頑張って作っている妹かわいくて仕方ない。
実によろしい！ ベリーグッドリア充！
メインターゲット層は、ちょっと生活に余裕のある成人男女向け。
材料部分には大体の目安の値段も書いてあるので、参考になります。
一応初歩の初歩にあたる、具材の切り方や調味料の測り方も書いてますが、この本は「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ステップ」にあたるものです。
さらに手の込んだものを作りたい人は本格的な本を。
少し料理を楽しもうかな、という人にオススメな本です。
しかし、料理作ってる女の子もいいけど、モリモリ食ってる女の子のイラストがかわいくてねえ……。
食べるって幸せなことね。
COSMIC FORGE・拓 『リア充ごはん』
（たまごまご）
