入学式・入社式が終わり、いよいよ新しい生活がスタートした人も多いことだろう。慣れない環境や知らない人たちの間で、新しいことを覚えていかなければならない。新生活は冒険の連続だ。学生は友達作りに、社会人なら人間関係の地固めが重要な時期。なかなか時間もとれないだろうが、一人暮らしを始めて一人の時間が増えた、という人もいるかもしれない。せっかくだからネットサーフィンで時間を費やすよりも、趣味を見つけてはどうだろうか。
ここでお勧めしたいのは小説の投稿だ。近頃では、ライトノベルの賞が数多輩出され、出版社らがしのぎを削っている。あまりに多くの賞があって、どれに応募したらいいかわからない! という方のためにも、特に新入生・新社会人にうってつけと思われる賞をまとめてみた。

 
●おすすめしたい新人小説賞
まずは電撃小説大賞。泣く子も黙るラノベ賞の筆頭だ。倍率はほかの賞の10倍近くあるが、その分間口も広い。1994年アスキー・メディアワークスにより創設された新人賞だ。過去の受賞者は『ブギーポップは笑わない』の上遠野浩平や『アクセル・ワールド』の川原礫など。2011年募集開始の第19回では応募総数6078点。規模や性質にもよるが、1年間に1度開催されるラノベ賞の応募数は300-600点あたりが平均的だ。破格の人気の理由はいくつか考えられる。
まず、受賞後にデビューを約束されている『電撃文庫』のメディアミックス展開が圧倒的にうまいこと。作品が人気を得て、漫画化・アニメ化されるまでのタイミングが実にスムーズで旬を逃さない。アニメ化や映画化された作品は更に盛り上がり、小説作品の人気そのものに還元される。ヒット作を作り出す意欲が感じられるレーベルだ。
また、この賞ひとつで多くの部門が設けられていることも特徴だ。副賞300万円の「大賞」以外に「金賞」「銀賞」「メディアワークス文庫賞」「電撃文庫MAGAZINE賞」が設けられている。4月20日に応募の締め切られた20回では「20回記念特別賞」という特別枠が設けられた。選外であっても最終選考に残れば必ず担当がつく。『キノの旅』の時雨沢恵一や『とある魔術の禁書目録』の鎌池和馬もこうした選外から輩出された作家だ。一次選考を通過した作品にはプロの編集の選評が必ずもらえる。これだけの応募総数を誇りながら万全のサポート体制が整えられているのは、投稿者にとって頼もしいだろう。

少々異色だが、講談社プロジェクト・アマテラスも面白い。オンラインの特質を利用した講談社独自のプロジェクトで、編集者が直接アドバイスをくれるスレッド式の投稿が話題だ。さまざまなテーマごとのスレッドが設けられ、雑誌巻末の「読者お便りコーナー」といった風情で、投稿されるイラストやテキスト作品も玉石混交。しかし、必ずプロの編集者が目を通してくれる安心感がある。

このプロジェクトの目玉が、小説新人賞ワルプルギス賞。審査方法も変わっている。まずは投稿したい作品の作中から「原稿用紙2枚分の抜粋文」をスレッド板に投稿。他の投稿者や編集者から続きをリクエストしてもらえれば、全文を投稿できる。つまるところ、賞の参加資格を得るには、リクエストがなければならないという仕組みだ。着目すべきは、抜粋文の投稿時点では作品が未完でも構わない点。賞の締切までに書き上げればいいので、読者の反応を見ながら仕上げていくことが可能だ。賞金はないが、編集者の目に留まれば電子書籍や書籍化の交渉が為される。

最後にお勧めしたいのが主婦の友社のラノベ作家になろう大賞。新設されたばかりの賞だ。これからの成長が見込まれるという点で、ねらい目と言えるだろう。知名度の低いためだろうか、2013年2月21日だった締切が4月15日に延長されていた。