4月8日に行なわれたマンチェスターダービー(マンチェスター・ユナイテッド対マンチェスター・シティ)から一夜明け、イングランド国内各紙は、このビッグマッチを大きく取り上げていた。

 試合はセルヒオ・アグエロの卓越した個人技でのゴールにより、マンチェスター・シティが2―1で勝利を収めた。このダービーで浮き彫りになったのは、マンチェスター・ユナイテッドが独走する今季のタイトルレースは、「ただの『シティの自滅』だったのではないか?」ということである。ロベルト・マンチーニ監督自身、「今季は過ちを繰り返した。だが、来季は優勝する」と語っている通り、ダービーマッチでのパフォーマンス面は、明らかにシティがユナイテッドを上回っていたからだ。

 では、首位を快走するユナイテッドはどうだったのか。

 この試合、ユナイテッドのフォーメーションは4―4―2。中盤の構成は、ライアン・ギグスとマイケル・キャリックを中央に、右ウイングがダニー・ウェルベック、左ウイングがアシュリー・ヤングのイングランド代表コンビ。そして2トップが、ロビン・ファン・ペルシーとウェイン・ルーニーだった。注目は、FWの最強デュオ。彼らふたりがどのようにシティのゴールを脅かすのか、そこに視線が注がれた。

 だが、フタを開けてみると、ユナイテッドは2トップに対するサポート面で脆弱性を露呈した。かねてから指摘されていた「強い相手との対戦になると、攻撃面で手数不足となる」という、今季の悪しき姿をさらけ出してしまったのだ。とりわけ、サイドの選手の出来をシティと比較すると、その差は歴然としていた。ダービーの翌日、『テレグラフ』紙はユナイテッドのウイング陣を酷評。特にヤングには、「シティを困惑させる切り崩しのプレイが展開できず、枠外から無意味なシュートに終始」と指摘して『4点』(平均点は6点)。右のウェルベックにも、「ルーニーをまったくサポートできなかった」として『5点』という評価だった。

 一方、シティの評価は、「プレミアリーグ最強の中盤を誇る」と大絶賛。「5人で構成する中盤が、今季最高の安定感を披露した」と評した。ダービーでは、ヤヤ・トゥーレとギャレス・バリーの屈強な守備的MFがユナイテッドの攻撃の芽を摘み、トップ下ではダビド・シルバが自由を謳歌し、そして右のジェイムズ・ミルナーと左のサミル・ナスリが両サイドを切り裂いていた。試合後、マンチーニ監督が「我々は『フットボール』をした」と胸を張ったのは、ユナイテッドよりも質の高いプレイを展開できたという強い自負が込められている。

 ところでこの試合、香川真司はベンチスタートだった。そして出場したのは、後半終了間際のアディショナルタイム。負傷したヤングに代わっての投入だった。このような状況下で、結果を残せる選手は世界中探してもほとんどいない。香川は珍しくミスキックをするなど、不完全燃焼のまま、自身初となるダービーをわずか数分で終えた。

 試合後、アレックス・ファーガソン監督が「もう一度、やり直す必要がある」と語ると、『タイムズ』紙はその点について、「ファーガソン監督はヤングにさらなるレベルアップを求めてもいい」と厳しく指摘した。シティのように中盤の構成力が高く、単純な崩し方では通用しない相手に効果的なのは、スペースの少ない状況でも瞬時にスペースを見出し、味方とのコンビネーションで打開する選手ではないのだろうかと。

 首位快走で霞んでいたが、今季のユナイテッドは攻撃の戦術において、課題を引きずったままだったのだ。前述した「強い相手との対戦になると、攻撃面で手数不足となる」という課題。それは、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦、アウェイでのレアル・マドリード戦(1−1)で再び浮き彫りとなり、今回のダービー敗戦によって決定的となった。