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 草食化、クルマ離れ…など、「今ドキの若者は○○」「若者の○○離れ」とよく言われる。そもそも高齢化社会という時代背景もあるので、その理由は一つとは言えないが、連日新たなサービスが次々に生まれ、旧メディアからインターネットへと接触時間が移り変わる中、画一的で一方通行な情報を鵜呑みにせず、無数の選択肢の中から自分の趣味・趣向に合う物を選ぶ人が増えているのではないだろうか。一言で言ってしまえば、男女の破局理由ではないが“価値感の違い”だ。

 「最近の若者は出世欲がない」とも言われるが、大企業神話や終身雇用制度が崩壊し、一度や二度の転職など当たり前の今、ありがちな将来のビジョンやキャリアプランを明確に思い描くことは困難に思えてならない。人生の永遠のテーマとも言える“仕事と家庭の両立”という問題に対して、社内での出世よりもプライベートの充実を選ぶ人が増えていても、やはり“価値感の違い”であって、どちらが良い・悪いという問題ではない。

 2ちゃんねるへの書き込みから書籍化を経て、2009年11月に公開された映画『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』などもあったが、日本を代表する某ファストファッションブランドさえもブラック企業と囁かれる中、入社前に内情を見極めるのは至難の業と言える。20日よりBeeTVで配信開始となった『午前3時の無法地帯』(ねむようこ原作)の主人公・七瀬ももこもまた、そんなブラック企業に入社してしまった一人である。


 かつては人気だったカタカナ職業、イラストレーター志望のももこは苦労の末にデザイン会社に就職したが、現実は夢見たオシャレな仕事とはほど遠く、パチンコ店向けのPOPデザインに追われる毎日だ。大声で怒鳴り散らす営業のせいで仲の良かった同僚は辞め、給湯室で頭を洗う上司や、下着姿でオフィスを徘徊する男、ただ一人の理解者かと思えた先輩女子は仕事よりも恋愛第一で、ももこは孤立無援。サービス残業は午前3時になっても終わりが見えず、オフィスに寝泊まりすることも珍しくない、まさに無法地帯だ。

 どんな時でも“女子”でいることを諦めたくないももこだが、スレ違いの続いた彼氏の浮気が原因で別れてしまい、仕事も恋も思い通りに行かない。遂に我慢の限界に達し、退職を決意した時、彼女の前に現れたのは、同じビルで働く商社マンの多賀谷だった。失敗を重ねながらも着実に仕事を覚えていき、誰かに評価されることでやり甲斐を見出したり、陽だまりのように暖かいビル屋上のソファーで多賀谷との距離を縮めていく内に、ももこの心境にも変化が…。

 主人公のももこを演じるのは、モデルから女優へと活躍の幅を広げ、人気急上昇中の本田翼。個性派俳優のオダギリジョーが相手役の“オトナの男”多賀谷を、監督は『苦役列車』『マイ・バック・ページ』『天然コケッコー』の山下敦弘と今泉力哉といった豪華キャストとスタッフが担当。エンディングで流れる主題歌、moumoon「ネバイナフ」(アルバム『PAIN KILLER』収録)がドラマの後に静かな余韻を残してくれることだろう。

 慣れない職場で悪戦苦闘する新人ももこと同じく、演技を始めたばかりの本田は、好きな気持ちよりも辛いと感じる時の方が多かったと明かす。女優デビューからわずか一年で初主演に抜擢され、自分よりも経験豊富な先輩役者たちに囲まれる撮影現場に行くのはプレッシャーだったが、『午前3時の無法地帯』は初めて演技を楽しむことができた、彼女にとってのターニングポイントになったという。本作では喜怒哀楽の感情豊かに、今まで誰も見たことのない本田翼の表情を堪能できるが、敢えて理想の女優像を限定せずに色々な役に挑戦したいと語る彼女の今後にも益々期待したい。

 理想と現実のギャップに悩んだり、今の仕事に満足はしてないけど精一杯頑張っている。そんなあなたにこそ観て欲しいドラマだ。

午前3時の無法地帯 - BeeTV
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