昨年12月の総選挙での「1票の格差」をめぐって、東京高裁、札幌高裁とあいついで「違憲」判決が出ました。議員1人あたりの選挙人数の格差が最大1対2・43倍まで拡大した今回の総選挙を、投票価値の平等の観点から「看過することができない」とした判決は当然です。これだけの格差が生じたのは、現行の小選挙区制に固執した結果であり、根本的には民意をゆがめる選挙制度そのものが問われています。

 ところが、国会では東京高裁判決の翌日、比例定数75削減を狙う民主党の細野豪志幹事長が「定数削減については、通常国会中にしっかりやりきると確約いただきたい」と迫りました。自民党も、比例定数を30削減したうえで、残りの比例部分で中小政党に配慮するという案を14日の同党選挙制度改革問題統括本部で示すとしています。

 民意の正確な反映が問われているときに、現行制度のなかで唯一民意を正確に反映する比例代表部分を削減するなどというのは言語道断です。

 こうした自公民3党の動きに対し、メディアでも「3党の衆院選挙制度改革論議も定数削減論に偏っている」(「毎日」7日付)、「ここまで(格差)是正が遅れたのは、定数削減の議論が絡んだことが要因だ。消費税増税を決めた民主党政権が、国民の理解を得るためにこだわ(った)」(「読売」同前)との指摘が出ています。ただ、これらメディアの指摘も、格差是正について現行制度の枠内での修正を迫るものでしかなく、小選挙区制のもつ根本問題に触れようとはしていません。

 いま選挙制度で最も問われている問題は、有権者の投じた票が議席に正確に反映していないこと、民意をゆがめる小選挙区制そのもにあります。今回の総選挙でも、自民党は小選挙区部分で43%の得票率(対有権者比では24・67%)で79%の議席を独占するなど、「虚構の多数」を獲得しました。議席に結びつかない、いわゆる「死票」は3730万票、小選挙区全候補者の得票数の56%に達しました。

 選挙後には自民党の石破茂幹事長も「ものすごく民意が振れた。選挙制度はこれでいいのかという議論はやっていかなければ」と発言し、メディアでも「得票数と獲得議席数の隔たりの大きさに多くの有権者が違和感を覚えたのではないか」「選挙制度を根本から見直す必要があろう」(「読売」昨年12月24日付社説)、「民意をしっかり反映できる選挙制度改革を果たすことが立法府の義務」(北日本新聞同18日付社説)との指摘も出ていました。

 もともと、2011年10月から行われてきた衆院選挙制度に関する各党協議会では、民主党を除くすべての政党が「小選挙区制の弊害」を指摘するようになり、選挙制度の抜本的改革を求める意見が大勢となりつつありました。ところが、消費税増税法案の強行を狙った民主党が、「身を切る」改革と称して比例定数削減に固執し、協議会を打ち切り、比例定数削減法案を単独提出したのです。民意に背く消費税増税のために民意を切りすてる―これほどの暴挙はありません。

 しかも、その策動が破綻すると、衆院の解散をカードに定数削減の合意を迫り、自公民3党の密室談合で衆院の定数削減について「次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行うものとする」ことで合意したのです。

 民主主義の土台である選挙制度を3党だけの密室談合でとりきめる動きは絶対に許されません。同時に、合意には少なくとも「選挙制度の抜本的見直しについて検討を行」うことを含んでいます。しかも、衆院の小選挙区比例代表並立制について「見直すべきだ」と答えた人が68・2%に上った世論調査(時事通信、1月)もあります。

 いま選挙制度で求められるのは、民意を切り捨てる比例定数削減論議などではなく、民意を「鏡のように」正確に反映する選挙制度をどうつくるかという議論なのです。