部屋を借りるとき保証人がいない!どうする?
賃貸住宅を借りるときには「保証人」が必要ですが、筆者は親が定年退職をしており、保証人として認められない、と言われたことがあります。保証人を頼める人がいない、あるいは、誰かに保証人を頼みたくないという人が増えているといいますが、そんなとき、どういう方法があるのでしょうか。「快適で安全な一人暮らし」をモットーに活躍する不動産アドバイザーの穂積啓子さんにお話を伺いました。
■保証会社の利用や、クレジットカードで家賃を支払うシステムも
――連帯保証人がいない場合はどうすればいいのでしょうか。
穂積さん 「賃貸保証会社と契約して、連帯保証人の代行を委託する」という方法があります。居住用の契約条件としては、「2年間で家賃の1カ月分」や「2年ごとに、家賃1カ月分の40〜70%+契約更新ごとに1万円」、「1カ月の家賃の数%を毎月支払う」 などという例があり、保証会社によってさまざまです。
現在(2013年1月)のところ、毎月10万円の家賃の場合、2年契約で1年につき3万円〜6万円の保証料になります。これは、部屋を借りるときに、家賃、敷金、礼金、仲介手数料とは別にかかる料金であることに注意をしましょう。
――クレジットカードに入会することで家賃を保証する会社が登場していますね。
穂積さん 「保証会社が発行するクレジットカードで家賃を支払えば、連帯保証人は不要」というシステムが生まれています。借り主はそのカードで家賃を支払う代わりに、カード会社が家主に対して家賃を保証します。借り主は、支払いごとにポイントがたまるという特典もあります。
ただし、部屋を借りるとき同様に、カード会員として入会できるかどうかの審査はあります。
これまでこのシステムは、家主側にすれば、収入となる家賃の数%をカード会社に差し引かれるためあまり浸透しませんでしたが、今後は連帯保証人がいない人の急増とともに、広がって行くでしょう。
また、UR賃貸住宅では、保証人は不要のシステムを取り入れています。
――入居の条件として、「保証会社との契約」を必須としている家主も多いと聞きます。
穂積さん 連帯保証人がすでに債務を負っているなどの事例が多く、個人よりも保証会社と契約する方がスムーズだ、と考える家主側と、また、借り主側も、「誰かに保証人になってもらうのはわずらわしい。契約金ですむなら保証会社を利用した方が便利だ」と考える人が増えています。
「連帯保証人+保証会社」を条件とする家主もいます。物件によって多様ですから、部屋の内見前に、「保証の条件」を必ず確認するようにしましょう。
――保証会社との契約で注意しなければならないことはありますか。
穂積さん 仲介業者や保証会社に、契約の条件をしっかり聞くことです。金額を聞かないまま、部屋が気に入ったからと、安易にサインをして、あとから、「ええっ、そんなに高いの!?」と驚かれる場合もあります。家賃に含まれていると勘違いしている人も多くいます。
仲介業者がよく契約内容を把握しておらず、部屋探しに慣れていない人にいいかげんな説明をしてしまうという例も多く報告されています。
■「連帯保証人」は、借り主と同様に、家賃を払う責任がある
――保証人とは、どういう役割を担う人なのでしょうか。
穂積さん 賃貸住宅を借りる場合の保証人とは、「借りる人の身元を保証する人」のことです。具体的には、部屋を借りる人が「家賃が払えなくなったとき」に代わりに支払う人のことであり、また、「部屋で何らかのトラブルがあったとき」に後の処理を行う人を言います。
――「保証人」と「連帯保証人」はどう違うのでしょうか。
穂積さん 「保証人」は、借り主が家賃が払えなくなったときに、借り主に代わって請求される立場になります。つまり、催促、督促は、まずは借り主にだけされて、どうしても連絡がとれないなどの事態のときに対応し、支払う義務がある人を言います。
「連帯保証人」は、「借り主と連帯してまったく同じ義務を負う人」のことを言います。借り主が家賃が払えないときはもちろん、借り主の故意、過失での賠償責任についても、家主は、借り主と同時に連帯保証人にも請求することになります。
連帯保証人は、保証人のように「先に借り主に催促してちょうだい」と言うことができず、催促された時点で家賃を支払う、賠償をする義務があります。
賃貸住宅の契約で必要なのは、「連帯保証人」になります。部屋を借りるときには審査がありますが、連帯保証人がどういう人かは大きなポイントになります。
――身元を保証する人であれば、誰でもいいのでしょうか。
穂積さん 本人と同等以上の収入があり、社会的に安定した職位であること、本人との続柄は2親等以内、つまり親、子、祖父母が望ましいとされています。
――親が定年して無職の場合などで連帯保証人を見つけることが難しいこともありますよね。
穂積さん さまざまな事情で、ご両親が保証できない場合も多々あります。20〜30代の若い世代では一人っ子が多く、親せきに頼むのは気が引ける、まして上司や友人など親せきではない人にお願いするのはもっと気がすすまない、などと思う人が急増しています。
――筆者の親は年金生活をしています。健康で元気なのですが、連帯保証人にはなれないのでしょうか。
穂積さん 家主側の判断によりますが、やはり、安定した職業ある人が望ましいです。年金生活の方の場合、「現在の住居が持ち家か賃貸か」、「持ち家の場合、ローンの残債はどうか」、「借入金はあるかないか」、「前職について」などを聞かれるでしょう。その上で、「両親とも連帯保証人になる」などの条件を出して審査を行った事例はあります。
――友人や知人、上司という間柄は連帯保証人になりえますか。
穂積さん ほとんど認められることはありません。血縁でない場合は関係性が弱く、家主にすれば、家賃を払ってもらえるか、いざ部屋でトラブルがあったというときに、確実に保証してくれるのかという不安要素が大きいからです。
あとからトラブルにならないように、あらかじめ文書で契約の内容を受け取り、親や友人など第三者に相談して慎重に考えましょう。
――ありがとうございました。
核家族に加えて晩婚化、高齢化が加速する今、家賃を保証するシステム、支払いの方法も変容しつつあるようです。保証人と連帯保証人の違い、保証会社のシステムを知っておき、契約の方法を熟慮したいものです。
監修:穂積啓子氏。「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引主任者。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た! 〜部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子 東京書籍 1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。
(藤井空/ユンブル)