「健康診断で尿酸値が引っ掛かったから、ビールはしばらく控えなきゃ……」

 こう嘆く中年サラリーマンを一人くらいは知っているだろう。尿酸値が高くなると痛風発作を引き起こすとされ、数値を高くする原因としてビールなどが知られている。

 日本では7mg/dlを超えると、性別・年齢を問わず高尿酸血症と診断されるのだが、この基準について痛風やリウマチの専門家である西岡久寿樹氏(東京医科大学医学総合研究所所長)は、「尿酸値が7以上なら痛風のリスクが高いという根拠はない」と断じる。

「尿酸値が上がり過ぎると痛風を発症するリスクが高くなるのは事実です。しかし、具体的に尿酸値がいくつになれば痛風を発症するのかは解明されていません。痛風の治療研究が進んでいる米国でさえ、健康診断における尿酸値の基準値を定めていません。自覚症状やその他の数値なども参考にしながら、ケースバイケースで対応しているのです。

 これまでの症例から考えた目安としても、尿酸値が9〜10mg/dlもあれば注意が必要と言えるかもしれませんが、7〜8mg/dlくらいで大騒ぎする必要など全くありません」(西岡氏)

 尿酸値が高いと心疾患や脳血管障害を引き起こすから薬を飲んだほうがいいともいわれるが、その根拠も薄弱だという。西岡氏が痛風患者の死因について「薬で尿酸値を下げた患者」と「薬を飲まなかった患者」を調査したところ、薬の投与と心・脳血管障害の発症に相関関係はなかった。

「つまり、尿酸値が高いから心・脳血管障害を起こすのではなく、病気の原因となる悪い生活習慣があり、その結果として尿酸値が高くなっていると考えられます。薬を飲んで尿酸値だけ下げても、疾患のリスクはなくならないということです」(西岡氏)

 尿酸値だけを目の敵にしても意味はない。体重を少し減らしたり、カロリーの高い食事を控えたりするなどして、生活習慣を改めれば尿酸値は次第に下がるのだという。

「極端な食事制限はしなくてもいいのです。例えば、プリン体が原因と喧伝されますが、食事から摂るプリン体はほんのわずかであり、体の中で生成されるプリン体のほうが多い。ビールにもプリン体が含まれていてよくないとされるが、1杯や2杯で尿酸値が急に上がる心配はありません」(西岡氏)

 もちろん、飲み過ぎには注意が必要だ。

※SAPIO2013年3月号