『ファンタジスタ ステラ』1巻(草場道輝・著、本田圭佑・原案協力/小学館) 
本田圭佑&坂本轍平、夢の日本代表が実現! 前作『ファンタジスタ』のメンバーも奮闘。巻末には琴音姉さんのその後を描いた読み切り「カンピオーネ」も収録。

写真拡大

今夜、2013年最初の国際Aマッチ・対ラトビア戦が行われるサッカー日本代表。W杯ブラジル大会出場がかかった3月26日のアジア最終予選ヨルダン戦に向け、親善試合といえども重要な一戦です。
初招集となる大津祐樹(VVVフェンロ)やケガ明けの長友(インテル)、香川(マンチェスター・ユナイテッド)など見どころは多々ありますが、やっぱり期待してしまうので本田圭佑(CSKAモスクワ)。本田が主役になる試合であれば、結果、日本代表にとって良い結果が付いてくるのは間違いありません。

そんな本田圭佑、今年も相変わらずのエアオファーでなかなか新天地へのステップアップは果たせていませんが、全く畑違いの世界においては「主役」級の扱いで活躍を見せています。その舞台とは週刊少年サンデーで連載中の『ファンタジスタ ステラ』。そう、1999年〜2004年の5年間に渡って連載され、サッカー漫画の一時代を築いた『ファンタジスタ』が復活! このほど第一巻が刊行されたのです。
作:草場道輝はもちろん変わらずに、「原案協力:本田圭佑」のクレジットが追加。「案」だけにとどまらず、『ファンタジスタ』の世界観に本田圭佑が「本人役」で登場し、実に本田らしいセリフ回しやプレースタイルで魅せてくれています。

「パスに情報を込めろ」「ボールは疲れない」などなど、数々の名言を残したサッカー漫画『ファンタジスタ』は、ちょうど連載時(2004年)に開催されたアテネ五輪での戦いでフィナーレを迎えました。
『ファンタジスタ ステラ』はそれから6年後、2010年の南アフリカW杯から物語が始まります。主人公・坂本轍平はアテネ五輪時で18歳。つまり、1986年生まれの本田圭佑とは同級生。24歳の二人のファンタジスタが、南アフリカW杯での活躍を契機に日本サッカーをワンランク上のステージに押し上げるための戦いを繰り広げます。
もちろん、かつての仲間たちも順調に世界のフィールドで活躍中。前回連載時から主要キャラクターたちがどのような成長を遂げたのかは、現在の所属チームを見れば一目瞭然です。

近藤敦……スペインの「エスパニョール」から同リーグ「バレンシア」所属。
森川竜司……イタリア・セリエAの「キエーボ」から同リーグ「フィレンツェーナ」へ移籍。
西郷政光……Jリーグ「柏レイソル」からイングランド・プレミアリーグの「リヴァプール」へ。
沖田薫……アルゼンチンの「ボカ・ジーニアス」からブンデスリーグの「レーファクーゼン」へ移籍。
そして、イタリア「ACミラン」所属だった主人公・坂本轍平は、イングランド・プレミアリーグ「アーセルナル」へのレンタル移籍を経て、新シリーズで遂にスペインの「リアル・マドリー」への移籍を果たします(※チーム名はすべて作中名)。

前作最後の試合において、戦術の中に組み込まれるのではなく、《戦術を超えて、人とのつながりの中に生きるファンタジスタ》というポジションを確立した坂本轍平。
琴音姉さんに島でサッカーを教わり、一人でボールを蹴っていた少年時代。その後島を出て、高校、ユース、五輪代表とステップアップを果たしながら、仲間と一緒にプレーすることに喜びを感じたからこその「人とのつながり」というキーワードでした。
しかし一転、今作ではいきなり「個」の必要性を訴えます。なぜなら所属チームは銀河系軍団リアル・マドリード。今まで以上に個性の強いチームにおいて、坂本がどんなファンタジスタっぷりを見せてくれるのかに注目です。

そして今作の見どころはやはり、坂本と並んでのもう一人の主人公・本田圭佑。
例えば、かつて(そして今も)本田ボランチ待望論、なんてものが叫ばれることがありましたが、この「ボランチ・本田」に対する本田自身からの答えが連載で明らかにされていきます。
普段は寡黙で、メディアにあまりコメントを発しない本田だけに、「実はこんなことを考えていた」「こうやって問題を解決してきた」というメッセージは実に貴重です。
上記した「個」の重要性に関しても、《チームゆうんは所詮「個」の集まりや…せやからチームが強うなるには、個人がそれぞれ最強で、己のエゴを出しきって、なおかつチームとして機能する…そこを目指さなあかんねん》《次、会うまでに「個」の成長が見込めんやつは、代表のジャージを着る資格はあらへん!!》と、まさに本田節で進むべき道を示します。

また、1巻以降の展開で期待したいのが、本田圭佑と近藤敦、二人の司令塔の関係性です。
そもそも、「『ファンタジスタ』が復活! しかも本田が本人役でレギュラー出演」……と聞いて、真っ先に不安に感じたのが、本田と近藤敦の見事なまでの「キャラかぶり」でした。
どうやらこの問題点、作者自身も感じていたようで、新連載1回目に「くれぐれもオレとキャラかぶんじゃねーぞ」と、あえて近藤に言わせたところに苦労の程を感じます。
もっとも、本田自身は近藤との共演を実に楽しみにしていた節が伺えます。『ファンタジスタ』復活の契機となった作者と本田圭佑との対談において、何度も近藤へのLOVEを語っているからです。

「僕が好きなのは近藤ですね」「ホンマ近藤はかっこよかったですね。それくらいこいつのカリスマ性は凄かったですから」「自分は近藤が主役だったらと思って見てるときもありますね」(ファンタジスタ文庫版13巻より)
嫌われ役の近藤をここまで愛していたところに、本田のこだわりと特異性を感じずにはいられません。


坂本と本田、本田と近藤……いつくものレイヤーを重ねて転がっていく連載は今後どんな形で進んでいくのか。常々「W杯での優勝」を公言してはばからないビックマウス・本田は、サンデー誌上でも改めて、作者とともに目標を語っていました。

本田「漫画でも現実でも、ブラジル・ワールドカップで優勝したいっすわ〜」
草場「はい。この漫画を「予言の書」にしたいです」

スポーツニュースやスポーツ紙では決して見ることができない、素の本田圭佑が味わえるのは『ファンタジスタ ステラ』だけ!
現実の日本サッカーとどのようにシンクロしていくかも大いに期待しましょう。
(オグマナオト)