中面のそこかしこに、美女医(美人女医の意)の心配りが感じられる、『ゆるゆる糖質オフダイエット』(関由佳/主婦の友社)。実は内容みっちりの保存版ダイエット本です。

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ご存知でしょうが、ヤセるのは超大変!
「太ったね!」。僕が久しぶりに会った友人から、立て続けにそう言われたのは一昨年のゴールデンウィークのことでした。20代後半から2年で1kgずつ増量し続け、デニムは2サイズアップ。名作マンガ「スラムダンク」の三井寿ではありませんが、「落とす気がしねえ」まま10年が経過してしまい、気づけば大学生当時比較で+15kg! あわてて、2011年の6月からダイエットに取り組んだわけです。

年間365回以上乾杯していた酒を週3日に減らし、ヨガの呼吸法(ヒクソン・グレイシーで知られる「火の呼吸」)を取り入れ、ちょっとだけ筋トレを行い、代謝が上がると言われる肩甲骨の間の褐色脂肪細胞を温冷シャワーで刺激。そして炭水化物を抜いたのです。結果、最初の1か月で5kg、次の1か月で2kg、次の1か月で1kgと計8kgの減量に成功しました。
(註:生活を元に戻して1年半経過した現在、当時+4kgと半分リバウンドしています)

正直、どれがどれくらい効いたのかはわかりません。ただバキッと炭水化物を抜いた翌日は劇的に効いた実感がありました。数字が小さくなり、体感としても体が軽い。ただし、弊害も……。完全に糖質を抜くと、脳が働かなくなり、体重よりも集中力がダウンしてしまうのです。僕の場合は「あんなにキツイ思いをしたんだから」と後戻りできないようにするため、減量初期に思い切り落とす作戦でしたが、あれはキツかった……。

「糖質制限ダイエットは危険」は本当?
ところで、先日衝撃的なニュースを見かけました。「糖質制限ダイエット、長期は危険? 死亡率高まる恐れ」というニュースです。翌日以降、他紙も似たような強い見出しで報道していました。

いずれも厚生労働省研究班のレポートを引用しての記事です。ただ、ちょっとクビをかしげる記述も。「糖質制限食を5年以上続けると、死亡率が高くなるかもしれない」とか、事実関係の重要な部分に「?」や「恐れ」がついています。しかも英語で書かれた論文を僕のつたない英語力で読んだ限りでは、「糖質(≒炭水化物)制限」自体が原因かどうか特定されていません。糖質制限ダイエットをしている人の食生活を指して「繊維や果物の摂取量が少なくなる傾向があり」、「脳疾患などの危険因子になりうる、動物性タンパク質、脂肪、コレステロールの摂取量が増加」する傾向がある、と。裏を返せば、「野菜を多く摂取して、肉に制限をかければ問題ない」とも読み取れます。それにしてもこの論文、「おそらく」とか「かもしれない」というフレーズがたくさん登場します。

さらには、科学論文で重要とされる「議論」のブロックで「低炭水化物ダイエットと、今回の調査対象となった死因に明確な相関関係があるか、生物学的にはまだわからない。さらなる研究が望まれる」(意訳)だそうで。えー!? つまり「わからないことがわかった」ということですね。さっきの見出しはなんだったんだ……。というわけで、この話は終了です。

この論文の意義はともかくとして、こうした論文が書かれる理由を好意的に解釈すると、行き過ぎた健康法を検証する意味もあるのでしょう。世間では、突飛な健康法やダイエット法は定期的にブームになります。が、「この食材ならヤセる」という夢のような新食材がしょちゅう発見されるわけもありませんし、極端な手法のダイエットも続くわけがありません。むしろ、挫折の反動によるリバウンドの危険が危なくて、心労もストレスフルになってしまう恐れがこわいです。

ゆるくなければダイエットは続かない
ダイエット経験者なら誰もがご存知の通り、減量における正解は「食生活の改善」です。でも、言葉自体がどこか抹香くさいし、細かいカロリー計算も面倒くさい。自分を振り返ってみても生活は不規則だし、毎日家メシが食べられるわけでもなく、外食中心だと、栄養のバランスにまで気を配るのは難しい。というわけで、一度挫折するとココロが折れて、あとは坂道を転げ落ちるように……というのが、ダイエットが失敗に終わる定番パターンです。

そして大変長くなりました。まさかのまさか、ここまでが前フリです。本編となる本日のレビューで取り上げるのは「ゆるゆる 糖質オフダイエットー1(ごはん):2(肉):3(野菜)の見ためバランスだけで」(主婦の友社)。著者は、低インシュリンダイエットをベースとした「ZONEダイエット」を万人向けにカスタマイズした「ゆるゆる糖質オフダイエット」を提唱する美人内科医の関由佳先生です。

中面は「ゆるゆる糖質オフダイエット」の基本的な考え方+レシピから構成されています。大切なのは「食材の(ざっくり)バランス&量」、「食べる順番/食べ方」、「選びたい食材、避けたい食材」という3点。50以上のオールカラーのレシピは見本としての性格が強い印象です。最初は中面のレシピに忠実に作りつつ、慣れてきたらアレンジを加えて自分なりのメニューづくりに踏み込んでいくのが本書の正しい使い方だと思われます。

まずChapter1(第一章)で紹介される「食材のバランス」は「ごはん類:お肉・魚類:野菜を1:2:3」。その量も「ごはん類=グー」、「お肉・魚類=パー」、「野菜=両手に山盛り」と、自分の手の大きさを目安にするだけ! 面倒な「カロリー計算は必要なし!」と言い切る断固たる決意に、思わず目頭が熱くなります。

そしてChapter2が驚きの「一皿ごはん&おやつレシピ」。ダイエットの常識として、パスタのような「一皿メニュー」は、まず真っ先に切り捨てられるメニューです。ところがこの章は「関先生……!! パスタが食べたいです……」という読者の気持ちを見透かしたかのように、いきなりパスタからスタート。カレーなどを経由して、おやつのチョコレートブラウニーまで到達します。アンビリーバブルや!  しかもいずれも「ゆるゆる糖質オフ」に沿ったメニューなので、後々「なぜオレはあんなムダな時間を……」と後悔することはなさそうです。

Chapter3は「外食&中食 ゆるゆる糖質オフテクニック」。外食や中食でのメニュー選びのポイントから、注文時や食べるときのちょっとしたコツなども。女医さんのダイエット本としては異例なことに「フレンチ」「ラーメン店」「ファストフード」「牛丼店」などもフォローされています。ダイエットに限らず、マクロビオティックなども含めた健康メソッド本では、よく「著者の言いたいこと」や「理想とする食生活」ばかりが書かれていて、外食時に何を食べていいかわからなくなってしまうことも。

この章の後半にまとめられている「ゆるゆる糖質オフダイエット10のルール」には「週に一度は「フリーな日」(何を食べてもいい日)を作る」、など挫折しないようなメソッドが織り込まれているのも、とても現実的。ついついラーメンなどやらかしてしまって、後悔で心が折れそうになったとき「あきらめたらそこで試合終了だよ」と諭すかのように、やさしく支えてくれるのです。

この他にも、食材ごとの特徴や「おすすめメニュー」「NGメニュー」のわかりやすい解説が盛りだくさん。極論に走るでなく、かといって小難しくもない。とてもまっとうでわかりやすい、いい本です。この本があれば、きっとリバウンド王にはなりません!

以上、本日は一部名作マンガ調でお送りいたしました。
(松浦達也)