5000円札はこんなにレアだ

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今より収入が少なかった税理士駆け出しのころ、私は自分が使うお金を10日に一度、3万7000円ずつ下ろしていました。

多くの人は手持ちのお金が足りなくなるとその都度、適当な額をコンビニやATMで引き出しますが、それでは自分がどれくらいのペースでお金を使っているのか、わからなくなってしまいます。

10日なら10日という決まった間隔で下ろす定額のお金は、いわばその期の予算。家計簿を作って細々と記録しなくても、10日間に使っていいお金の大枠を決め、その中でやりくりするというスタイルが身につきます。

なぜ中途半端な額なのかというと、私は成功している人たちから、「5万、10万といったマルが揃う金額を下ろす人は、お金を失いやすい」と聞いていたからです。

3万7000円のうち、1万円札は1枚だけ。4枚を5000円札、7枚を1000円札として、どれも極力、新札にしてもらいます。財布の中では、お札は必ず1万円札、5000円札、1000円札の順に並べ、お札の向きもすべて揃えておきます。そうすることで「どのお札が何枚残っているか」という現在の所持金の状況が頭に入りやすくなります。

お金を使うときは、必ず少額のお札から。1000円札が7枚あれば、7000円の買い物をするときも、1万円札や5000円札は出さずにすべて1000円札で出します。

■1万円札は最後の砦

こういうとき「1万円札が残ってしまうと、後で少額の買い物がしにくくなる。今のうちに崩しておこう」と考えて、1万円札から先に使っていく人もいます。これは「手軽にお金を使いたい」という心理の表れです。

私の場合はあえて不便にして、無駄なお金を使いにくくしているのです。あくまでルールを守って、1000円札がなくなってから5000円札を使い、4枚の5000円札をすべて使ってから初めて、最後の1万円札に手をつけます。そうすることが、1枚だけの1万円札を最後まで崩さずに守ることにつながるのです。

私の考えでは、お札にはそれぞれの性格があって、もっとも少額の1000円札は流動性が高いフロー型の紙幣です。逆に高額紙幣である1万円札は入りにくく出ていきにくい、ストック型の紙幣です。

5000円札については、私は多くのお金持ちから、「1万円札が使われないよう真ん中で支える存在」という話を聞いています。1万円札は大将にあたり、5000円札はそれを守る家臣という感覚です。

下ろしたお金を10日の間に徐々に使っていくと、まず1000円札がなくなり、次に5000円札が1枚また1枚と崩れていきます。「お金がなくなっていく」という実感が生まれ、自然に「最後の砦の1万円札を守らなければ」という気持ちになってきます。5000円札はそのための、いわばブロック型のお札なのです。

5000円札が早々になくなってしまうと、「少しお金を使うペースが早すぎるんじゃないか」と感じ、逆にお金を下ろす日になってもまだ1万円札が残っていると、「大将を守りきった」という満足感、達成感が湧いてきます。

このようにお札の下ろし方や使い方に自分なりのルールをつくることは、お金に意識を向けるためのよいきっかけです。

お金に好かれる人たちはみな、お金にしっかりと意識を向け、自分なりの使い方のルールを必ず持っています。お札の性格づけのように、自分でつくったルールをゲームのように楽しみながら、お金の使い方をコントロールすることで、自然とお金に好かれ、お金がたまる行動パターンが身についてくるのです。

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税理士 亀田潤一郎(かめだ・じゅんいちろう)
学生時代に父の会社が倒産。その経験から「中小企業の経営者をお金の苦労から守りたい」と、苦節10年を経て税理士に。『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』などの著書がある。

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(税理士 亀田潤一郎 構成=久保田正志)