2012年に「エキレビ!」でレビューを書きたかったマンガ&ライトノベルのベスト5。どれも大好きな作品なので、本当は発売直後に薦めたかった……。2013年は、こんな後悔が残らぬよう、たくさんレビューも書いていきたいと思ってます。ホントだよ。

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「エキレビ!」で原稿を書き始めて一年以上。最近は、面白い本を読んだとき、「友達に薦めたい!」と思うよりも先に、「エキレビで原稿を書きたい!」と思うようになりました。でも、スケジュールの都合もあって、紹介し損ねた本もたくさんあるんですよね……。というか、インタビュー記事ばかり書いてたので、ほとんど紹介できてない!
ということで、恒例の年末年始ベスト企画として、2012年に紹介したかったマンガ&ライトノベルのベスト5を選んでみました。ジャンルもバラバラなので、順位はつけず、5つの部門に分けて紹介していきます。気になった作品は、ぜひ読んでみてください!


≪新刊が出て、嬉しかったで賞≫
『レッツ★ラグーン 2』(岡崎武士/ヤンマガKC)

目が覚めたら、そこは小さな無人島。出会ったのは、同級生の可愛い女の子。修学旅行中だったはずの自分たちが、なぜ漂着していたのか? この島はどこなのか? 多くの謎を抱えたまま、高校生の男女、2人きりの無人島生活が始まる。

男子の妄想をかき立てる夢のようなシチュエーションで幕を開けた、著者13年ぶりの新作。2010年9月に1巻が発売された後、まだかまだかと待ちわびた2巻が、2012年の7月に発売されました。中高生の頃に読んでいた『精霊使い』は、著者の病気により未完のまま終了したので、心配していたんですよね。
1巻終盤に驚きの展開が続き、終了するかに思えた山田壮太の無人島生活は、セカンドシーズンへと突入。天然系少女・衣舞瀬チカへの恋心を自覚した壮太を惑わす(?)新キャラクターも加わります。壮太は、無人島漂着現象の謎を解き明かし、今度こそ、チカと一緒に無人島から脱出できるのか?
「週刊ヤングマガジン」の読み切りとしてスタートした作品ですが、現在は「月刊ヤングマガジン」で隔月連載中。このペースだと、3巻の発売は2014年の後半以降になりそうです。2巻のラストの引きも強烈なので、待ちきれない……。


≪デビュー作とは思えないで賞≫
『夜森の国のソラニ 1』(はりかも/まんがタイムKRコミックス)

雑誌『まんがタイムきららミラク』で連載されている、ファンタジーテイストの4コママンガ。
現実世界で心に傷を負い、眠りから目覚めることを拒んでいる者たちが集まる「夜森の国」。気づくと夜森の国にいた記憶喪失の少女は、顔がある人にそっくりだったことから「ソラニ」と名付けられます。森の管理人でもある少女・夜森と暮らすことになったソラニは、さまざまな思いを抱える住人たちとも触れあいながら、少しずつ夜森や夜森の国の住民のことを知っていきます。
明るく華やかでありながら影も感じさせるストーリーと、世界観にもマッチした独特の色彩感覚。2コマぶち抜いてキャラクターを描くなど、4コママンガの枠にとらわれない自由な描写。そして、何よりも、著者の描くキャラクターの可愛らしさ。その表現力のクオリティと安定感は、マンガ家デビュー作とは思えないほどです。
9月に発売されたコミックス1巻では、連載時のカラーページをそのまま収録するだけでなく、描き下ろしのカラーページも追加。読んでいるときはもちろん、画集や絵本のように、眺めているだけでも楽しい本になっています。姉妹誌『まんがタイムきららカリノ』で連載中の『心臓の魔法』も、単行本にまとまるのが楽しみです。


≪バカップルで賞≫
『煩悩寺 3』(秋★枝/MFコミックス)

奇妙な雑貨やインテリアが所狭しと並べられた部屋「煩悩寺」を舞台に、在宅プログラマーの小山田と、OL小沢のバカップルぶりを描いたラブコメ。
5年間同棲した彼氏に振られてヤケ酒をした小沢は、マンション5階の自宅までトイレを我慢できず、下のフロアにある小山田の部屋でトイレを借りることに。そんな微妙な出会いにもかかわらず、小山田は小沢に一目惚れ。小沢も、奇人の小山田の兄が送りつけてくる珍品だらけの部屋に興味津々で遊びに行くうち、草食系の家主にも惹かれていきます。

ときに小山田の親友・島本もまじえながら、「煩悩寺」で一緒の時間を過ごし、同じ物を見て笑い合い、同じことに小さな喜びを見つける2人の姿は、本当に幸せそう。二次元世界には、際立った魅力を持ったヒロインもたくさん存在しますが、やっぱり、自分と一緒にいる時間を本当に楽しいと思ってくれる女の子が一番だよな、としみじみ感じさせてくれる作品です。特に、日常にラブコメ成分の足りない大人にオススメ。ただ、2人のイチャイチャバカップルぶりには、心が温かくなると同時に、ちょっと痛みも走りますよ。1人のときはね。
年1冊ペースでの刊行を楽しみにしていたのですが、12月に発売された第3巻で早くも完結。「まだまだ読みたかったのに!」という不満が言えなくなるくらい、綺麗なフィナーレでした。もっと著者の作品が読みたいという人には、次の一冊として短編集の『伊藤さん』を推薦しておきましょう。


≪正直、期待以上で驚いたで賞≫
『僕は友達が少ない CONNECT』(平坂読/イラスト:ブリキ/MF文庫J)

1月からTVアニメの2期も放送される人気ライトノベル『僕は友達が少ない』の初短編集。現在8巻まで刊行されている本編の主人公・羽瀬川小鷹ではなく、ヒロインやサブキャラクターの視点から描かれた13編が収録されています。
友達のいない男女ばかりが、友達を作るために入部し、残念だけど楽しい日々を過ごしてきた「隣人部」。本編では、隣人部の存在意義を根本から揺るがすような騒動が起こり、クライマックスも間近の気配。早く物語の続きを読みたい気持ちが高まっている中、発売されたのは短編集ということで、正直、肩すかしを食らった気分にもなりました。シリーズ物の短編集といえば、外伝的な内容の本が多いので。
しかし、結論から言えば、『CONNECT』の収録作は、大半がクライマックス前に読むべき物語でした。部長の三日月夜空の視点で「隣人部」の創設までが語られる「動き出した時間」。ヒロインの一人・志熊理科の印象が劇的に変化する「クオリア/もう一つの動き出した時間」。柏崎家の家令ステラが主人公の「スーパーノヴァ」。小鷹視点では描くことのできなかった、ヒロインやサブキャラクターの過去や葛藤を描くことで、本編の物語やキャラクターの見え方にも変化が。シリーズ全体の評価も大きく上昇するくらい、重要なエピソードの詰まった短編集になっています。
ただ、激しいネタバレを含むので、本編を未読の人がシリーズの入り口として読むのはオススメしません。逆に、8巻まで読んでいる人は絶対に読むべきですよ。


≪大笑いしまくったで賞≫
『俺、ツインテールになります。』(水沢夢/イラスト:春日歩/ガガガ文庫)

「この世界の全てのツインテールを我らの手中に収めるのだ!」
人間の持つ精神エネルギー「属性力(エレメーラ)」を奪うため、異世界からやってきた怪物集団アルティメギル。「巨乳属性」「貧乳属性」「体操服属性」など、あらゆる属性の中でも、最強クラスのエネルギーを秘めた「ツインテール属性」は、怪物たちの最高のターゲット。そして、怪物に「属性力」を完全に奪われたツインテール少女は、二度とツインテールができなくなってしまうのだ。
ツインテールが大好き過ぎて、男子でありながら世界最強の「ツインテール属性」を持つ高校生・観束総二は、異世界の科学者トゥアールに託された戦闘用スーツ「空想装甲(テイルギア)」を装着。強力な「ツインテール属性」で起動する「テイルギア」の力で、幼女姿のツインテール戦士テイルレッドに変身すると、愛するツインテールを守るため、怪物たちの前に立ちはだかる!

あらすじを書いていても、「新年早々、何を書いてんだ……」と反省したくなるくらい、お馬鹿な設定が本作の最大の魅力。アルティメギルの多くは、戦隊物の怪物のような姿をしていますが、「人形を持った少女」「リボン」など自分の嗜好する属性への愛を高らかに語り、人間を襲う様子は、ただの変態です。
スタイル抜群の美少女で天才科学者のトゥアールも、かなり濃いキャラクター。一目惚れした総二を狙い、隙あらば変態痴女のように迫っていきます。総二の幼なじみ津辺愛香は、武術家だった祖父仕込みの戦闘力で、それを阻止。このダブルヒロインのテンポ良い掛け合いも読みどころでしょう。また、総二の母親・未春(父親は故人)も、トゥアールに劣らぬ濃いキャラクター。登場シーンは少ないのに、強烈なインパクトを残します。
6月に発売された第1巻は、「第6回 小学館ライトノベル大賞 審査員特別賞」の受賞作。帯には、ゲスト審査員を務めた『ハヤテのごとく!』の畑健二郎さんが、「もう来週からアニメ化とかするといいよ」とコメントを寄せています。
いや、ホント、早くアニメ化すれば良いよ。
11月に発売された2巻でも、1巻の勢いは衰えていないので、ストックさえ溜まれば、現実になるのでは? 僕の脳内では、すでにCVのキャスティング会議も始まってます。
2013年の1月31日まで「ニコニコ静画」では、1巻の電子書籍の約9割(243ページまで)を無料公開中。気になる人は、ここで試し読みするのも良いでしょう。
絶対に面白いと思いますけどね。

あ、そうそう。前回のベスト企画「一巻で選ぶライトノベル、マンガの傑作!〜年末年始スペシャル■2011年ベスト10」で選んだ作品は、今回の選考対象から外していますが、2012年に新刊の出た作品はどれもオススメですよ。特に今月には5巻も発売される『四月は君の嘘』と、10月に3巻が発売された『ひまわりさん』は、今回の記事でも紹介したかったくらいで、年間ベスト級の作品。『彼女がフラグをおられたら』はアニメ化が決まったし、『ストライク・ザ・ブラッド』の面白さも衰えません。
2013年も、読むべき本が多くて大変そうです。
(丸本大輔)