日本勢が快挙達成! 「分子ロボット」が拓くナノテクノロジーの未来
11月上旬、アメリカ・ボストンにあるハーヴァード大ウィース研究所で、第2回国際生体分子デザインコンペティション(BIOMOD2012)が開かれた。
世界7カ国から集まった19の大学生チームが競ったのは、DNAやタンパク質、脂質など細胞を構成する分子を使ってつくり上げた「生体分子ロボット」のデザインだ。このBIOMOD本大会では、各チームが作成した研究を紹介するYouTubeヴィデオ、研究成果をまとめたwiki、そして会場でのプレゼンテーションの3項目が審査され、日本から出場したチームは、東北大が総合優勝、東工大が総合3位、さらに東工大と東京大・柏チームが分子ロボティクス賞を同時受賞するという快挙を成し遂げた。
細胞に突き刺さり医薬品を注入する分子注射器、タンパク質でできたレールの上を走って荷物を運ぶ輸送列車、触媒反応を利用して酸素を吹き出しながら高速で進む水中ロケット。まるで映画『ミクロの決死圏』の世界のようだが、これらは大学生たちが実際につくり上げた分子ロボットだ。大きさがおよそ30ナノメートル、一般的な細胞と比べて1000分の1以下という、まさにナノマシンだ。世界各国の大学生たちは、分子ロボット研究の先駆者たちの指導のもとで、一夏の間にロボットを設計し、つくり上げた。
優勝した東北大のチーム仙台がデザインした分子ロボット”cell gate” は、DNAでできた分子注射器だ。DNA2重らせんの束を骨格とし、脂質分子の脚を使って細胞表面に降り立ち、突き刺さって孔を開ける。さらに孔の内側に設けられたポーターという仕組みが、短い1本鎖DNA分子を細胞外から細胞内へ運び込む。チーム仙台のメンバーは、自分たちが設計した分子ロボットが設計通りの形であることを原子間力顕微鏡で観察し、さらには細胞を模した小胞に孔を開けることを確認した。参加チームがつくり上げた分子ロボットの詳細は、大会ウェブサイトで観ることができる。
これまでにつくられた分子ロボットはどれもプロトタイプにすぎないが、将来的には、診断・輸送・薬物投与といった複雑な機能を兼ね備えることで、がん細胞と正常細胞を見分け、がん細胞にのみ抗がん剤を注入する医療用分子ロボットや、生体内やマイクロ流体デヴァイス(溶液の混合・反応・分離・検出といった化学操作をマイクロスケールで行えるよう、半導体微細加工技術を利用し、流路を基板に集積化したもの。日本語版過去記事はこちら。)内の狙った場所で特定の化学反応を促進させたり、より大きな分子を組み立てたりしていく産業用分子ロボット開発への応用が期待されている。
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