岡部は社台サラブレッドクラブの有力馬の手綱を多く取るようになり、スクラムダイナ、ダイナコスモス、ジェニュイン、バブルガムフェローといった馬に次々とG?勝利をもたらし、社台の勢力拡大とともに一流騎手の座へと駆け上っていく。

 ここに、厩舎事情に縛られることなしに、一流馬には一流騎手を、という社台の姿勢が見て取れる。社台は最近、一流外国人騎手をこれでもかと重用するが、すでにその傾向はあったということになる。

 さて、馬が走ってクラブの会員が増加しても現状に満足せず、手綱を緩めないのが善哉氏の商魂たくましいところ。有名人を利用して、さらなる拡大を図ったのだ。元騎手が明かす。

「だから有名人の馬主にはいい馬をあてがった。彼らの馬が走ればいい宣伝になるからですよ。思い浮かぶだけでも、江川卓(レディゴシップ)、ランディ・バース(ダイナキングダム)、森田芳光(リアルバースデー)などの名前があがる。どの馬もオープンまでいったから、競馬ファンならば、“あぁ、そういえばいたな”と思い出すのでは」

 こんなこともあった。元騎手が続ける。

「南田洋子の持ち馬ダイナアクトレスが87年の毎日王冠を勝利したが、南田は競馬場には来たものの、わずかに口取りには間に合わなかった。それを知った善哉氏は矢野進調教師にもう一度アクトレスをウイナーズサークルに戻すように命じ、南田に口取りをさせてあげた。もちろん南田への心遣いだが、彼女が登場することによる宣伝力も見込んでのことでもあったね」

 しかし、こうした広告塔を使ったPRは、一部会員から非難を浴びることにもなる。人気沸騰後の社台サラブレッドクラブは、募集開始後すぐに応募しようとしてもなかなか電話がつながらず、つながっても希望馬はすでに売り切れ、というケースが多々あった。それなのになぜ、江川やバースはすんなりと持てるのか、というわけなのだ。

 善哉氏は間違いなく「商売人」である。時にはみずから「俺は吉田ゼニヤだ」とうそぶいた。

 だから敵も多かった。何しろ、平気で人様の馬をけなしたりもしたからだ。ある座談会でこんな発言をしたことがある。

「ミホシンザン(皐月賞、菊花賞、天皇賞制覇)は血統がよくない」

 それを知ったミホシンザン関係者が立腹したのは言うまでもない。