ステファン・ルツォヴィツキー監督
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 映画『ハンナ』 の俳優エリック・バナと、映画『トロン:レガシー』のオリヴィア・ワイルドがタッグを組んだ新作『デッドフォール(原題) / Deadfall』について、ステファン・ルツォヴィツキーが監督が語った。

 同作は、アディソン(エリック・バナ)とリサ(オリヴィア・ワイルド)の兄妹は、カジノ強盗の 逃亡中に雪道で事故に遭い車が横転してしまう。慌てた二人は、事故現場に駆けつけた警官を射殺して、二手に別れ逃亡を企てる。だが、感謝祭で実家に帰ろうとした 刑務所帰りのボクサーにリサが拾われ、二人の逃亡計画が狂い始めるというサスペンスドラマ作品。このほかに、シシー・スペイセクやクリス・クリストファーソンなどの演技派が出演し、映画『ヒトラーの贋札』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したステファン・ルツォヴィツキーがメガホンを取っている。

 ほとんどドイツで製作してきたステファン監督は、今作をアメリカ資本で製作してみて「撮影現場は、ドイツもアメリカも大して変わらないが、全く違うのは製作資金などを含めたプリプロダクション(撮影前の作業の総称)だ。現在のアメリカは(過酷なロケ地の撮影は)ある程度のスターをキャストしなければ、まず映画製作ができない。ところがドイツでは、アーティストのための公的資金により、映画を製作できるケースが多い」と明かした。『ヒトラーの贋札』が成功してステファン監督はアメリカに渡り、まずは1本子ども向けの映画を製作したが、今作のような撮りたい映画をアメリカで手掛けるまで、『ヒトラーの贋札』から5年も掛かったそうだ。

 この映画で注目すべき点は「まずサスペンス、アクション、ドラマなどの様々なジャンルがあり、さらに興味深いキャラクターたちを演じるキャスト陣も素晴らしいんだ。実は、この映画のもともとのタイトルは、『Kin(血縁、親族)』で、ストーリーも機能不全家族が描かれ、家族の衝突が血を流すほどの結末に向かっていくことになる。そのため、観客には冷酷な家族構成のひとつとして観てほしいんだ」と話した。

 今作には、エリック・バナ、オリヴィア・ワイルド、シシー・スペイセクなどのスター俳優が居る中で、異彩を放っているのが映画『ザ・レッジ -12時の処刑台-』のチャーリー・ハナムだ。「実は彼の父親がギャングの構成員だったみたいで、彼自身もこの刑務所から出所したばかりのボクサー役に共感が持てると話してくれたんだ。彼は役柄に対して規律を持ったアプローチの仕方をしていて、僕ともこの役柄についてずっと毎日話し合っていた」と語った。映画内ではチャーリー演じるジェイとオリヴィア・ワイルド演じるリサの関係にも注目だ。

 映画は、強盗の兄妹、彼らを追う警官の親子、そして強盗と出会ってしまう家族と、全く違った生き方をしてきた彼らが、機能不全家族として描かれているのが興味深い作品に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)