中・韓トップ交代が与える影響は軽微。中国はインフレと失業率が課題に

尖閣諸島および竹島の領有問題で、急速に日本との関係が冷え込んだ中国韓国。韓国は今年12月、中国は11月の共産党大会を経て、来年3月には最高指導者が交代する。それによって韓国・中国国内の経済はどう変わるのか? また、日本経済と株式市場への影響は? 日中・日韓の領有問題も含め、経済評論家の三橋貴明さんに聞いた。


韓国は今年12月に大統領選を控えている。本命2候補のうち、初の女性大統領を目指すパク・クネ氏は現大統領イ・ミョンバク路線を踏襲する新自由主義者。片や、ムン・ジェイン氏は南北統一を視野に入れた北朝鮮融和路線。三橋氏は「どちらが選ばれても未来は暗い」と話す。

「パク氏が当選すれば、相変わらずサムスンやヒュンダイは儲かりますが、配当金として所得を外国人に持っていかれる構造が続きます。失業問題、格差問題はますます拡大する公算大です。一方、ムン氏になれば北との融和路線で米国を怒らせ、対米貿易が滞り、企業業績は悪化するリスクがあります」

両氏のどちらが大統領になっても、日本への影響はあまりないという。

「パク氏の父親は日韓の国交正常化を実現した元大統領。日本に譲歩した大統領の娘と思われているだけに、竹島問題では一歩も引けない。ムン氏にいたっては、強硬な反日なので、日韓関係が戻ることは考えにくいでしょう」

韓国には強気でOK。中国から日本経済への影響は軽微

しかし、日本は韓国に対し、有利なカードを持っている。

「韓国の半導体製造ラインに欠かせない『レアガス(希ガス)』は100%日本依存。しかも代替品はありません。よって、日本が輸出をストップすると、韓国の半導体ラインが止まってしまうのです」

一方、中国では今秋の共産党大会で習近平・国家副主席が党の最高指導者に昇進、来年3月には国家主席になることが確実視されている。

「ただでさえ強硬路線の習氏は、軍部や国民の圧力から、ますます強硬な対日対応策を講じてくるでしょう」

日本製品の不買運動や、反日デモの推奨も考えられる。となると、日本の製造業は打撃、日本経済への悪影響が懸念される。しかし、三橋氏は「大和総研では、日中摩擦で日本のGDPは年間8200億円押し下げられると試算していますが、それでも日本のGDPの0.17%にすぎません。確かに資本財のメーカーは苦戦するでしょうが、トヨタ自動車のような最終消費財への影響はさほどではないでしょう」とみる。

「日本は技術革新が進み、単純な製造はほとんど人がいなくてもできるようになりました。工場を国内に戻せば、中国よりかえって安いものが作れるのです。対中摩擦で困るのは日本より中国ですよ」

中国はインフレと、外資撤退による失業率の高まりが課題

さらに、中国経済は重い懸案事項が待ち受ける。

「ユーロ危機で、中国最大の輸出先である欧州への輸出が激減しています。そのうえ、5年で食品の物価が5倍に上がるほどの深刻なインフレ問題に直面。インフレを抑制するには、金融引き締めを続けるしかありませんが、そうすると、不動産バブルの崩壊リスクが出てくるのです」

中長期的には、国民の所得を上げて内需を拡大するシナリオを描きたいが、中国の人件費に魅力がなくなると、外資が一斉に撤退する可能性が大きく、失業率の高まりが懸念される。加えて、習氏は米国寄りの新自由主義的政策を打つ公算が大きく、インフレも懸念材料だ。このような問題山積の状況から、「現在7%台まで下がってきた成長率ですが、来年はゼロ成長もありうる」とさえ言う。

「中国は上海総合指数が2000を割ったら景気後退局面に入ったといえます。一方の韓国は1円=10ウォンを割ると日本企業に勝てなくなり、逆に1円=20ウォンを上回ると通貨危機になるので、為替レートに注目したいですね。米国のQE3や大統領選の影響で、年末に向けて原油価格が上がるのは必至。韓国は、日本の商社経由で原油を買っているため、日本の商社はますます潤うでしょう」

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韓国の大統領と中国の国家主席の交代が迫るものの、韓国ではサムスンなどの躍進は変わらないでしょう。となると、サムスン電子の半導体・電子部品の販売に特化しているトーメンデバイスなどは、今後も注目に値します。

また、中国では、不買運動の影響が軽いユニ・チャーム、景気テコ入れやインフラ投資などで復活が期待されるコマツなどに注目ですね。


三橋 貴明(TAKAAKI MITSUHASHI)
経済評論家

1969年生まれ。大学卒業後、日本電気、日本IBMなどを経て、中小企業診断士の資格を取得。2008年、三橋貴明診断士事務所を設立。『グローバル経済に殺される韓国 打ち勝つ日本』(徳間書店)など、著書多数。


本吉 亮
T&Cフィナンシャルリサーチ 調査部マネジャー

日本株の調査・分析などを担当。データを重視した銘柄選びに定評がある。

この記事は「WEBネットマネー2012年12月号」に掲載されたものです。