行きと帰りで飛行時間が違うのはナゼ?




皆さんは海外旅行に行ったことがありますか?



海外旅行の経験がある人はご存知だと思いますが、飛行機で同じ区間を往復する場合、行きと帰りでは飛行時間が異なりますね。



たとえば、東京〜ニューヨーク間を往復する場合だと行き(東京⇒ニューヨーク)の方が、また東京〜パリ間を往復する場合だと帰り(パリ⇒東京)の方が短い時間で目的地まで到着します。



でも、このようなことが起こるのは一体なぜでしょうか。



■ 飛行機と偏西風との関係



日本の上空付近には、西から東に向かっていつも風が吹いています。



この風を「偏西風(へんせいふう)」と呼びますが、この影響により、飛行機が東から西へ向かうときはこの偏西風が向かい風となるため、西から東へ向かうときよりも長い時間がかかってしまうわけです。



ところで、この「偏西風」という言葉。これまでに聞いたことがある人も多いと思います。

でも、なぜ日本の上空には常時このような偏西風が吹いているのでしょう。



実は、偏西風というのは地球の自転の影響を受けている風なのです。



■ 北半球における空気の流れ



偏西風が起きる理由を説明するにあたり、まず北半球全体の空気の流れを整理しておきたいと思います。



まず赤道付近で暖められた空気はしだいに上昇を始めます。

すると、今度は地球全体の温度をなるべく均一に保とうとし、寒い北極へ向かって移動します。



しかし、北へ向かうにつれて上空の気温は下がりはじめ、この空気は冷やされるため、やがて体積は小さく、密度は高くなっていきます。



そして、北緯20〜30度付近の「亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)」と呼ばれるエリアまで達すると、今度はその重みで下降を始めます。



そのため、亜熱帯高圧帯では、下降した空気が北極方向と赤道方向に向かってそれぞれ吹き出していきます。



このとき北極方向に向かって吹く風を「偏西風」、赤道方向に向かって吹く風を「貿易風」と言います。



■ 偏西風が生まれる仕組み



上で説明したような空気の流れだけでは、単に南から北へ吹くだけになり「偏西風」とは言えませんが、ここでさらに地球の自転の力が加わります。



仮定として、赤道から真北へ向かって物体を発射したとします。

するとこのとき、その物体は北向きの速度と同時に、自転に合わせた西から東への速度も持っていることになります。



地球は球体であることから、北に向かうにつれて、その緯度における自転速度は小さくなります。

しかし、この物体が持つ西から東への速度は小さくならないため、地球の自転速度よりも先に(東に)進んでいきます。



その結果、真北へ向かったはずなのに、少しずつ真北よりも東へ逸れていくことになります。



この見えない力を「コリオリの力」と呼びます。



コリオリの力は、北半球では右に向かって働くため、北から南に向かうときには西向きに、南から北へ向かうときには東向きの力となります。



つまり、南から北へ向かって吹く風は、東向きに力を受けることで、しだいに西から東へ吹く(西よりの)偏西風へと変わっていくわけです。



■ コリオリの力を体感しよう



コリオリの力は地球の自転に限ったものではなく、回転しているすべての物体に働く力ですので、もっと簡単に体感することもできます。



まず、1kg程度のおもり(身近にあるカバンやお砂糖などで十分です)を用意してみてください。



それを両手で持ったまま、フィギュアスケートの選手のように、その場でグルグルと回転しながら、さらにその状態で前にゆっくりと腕を伸ばしたり縮めたりしてみてください。



するとどうでしょう。左回りに回転しているとすると、腕を伸ばしたときには右向きに、縮めたときには左向きに力を受けるような感じがしませんか?(自分が右向きに回転しているときはこの逆になります。)



それこそが「コリオリの力」なのです。



■ まとめ



今回は、飛行機に乗ったときの飛行時間の違いについて考えてきました。



上空を飛ぶことによって、飛行機は偏西風の影響を受けますが、その偏西風が地球の自転とも深く関係していることをお分かりいただけたでしょうか。



偏西風の影響を考えると、ニューヨークとパリに寄る世界一周旅行を計画するときには、東京⇒ニューヨーク⇒パリ⇒東京の順に移動した方が楽チンだということになりますね。



(文/TERA)



■ 著者プロフィール

TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。