Jリーグの各サポーターは、かなりナチュラルだと思う。スタンドに漂う「熱」は外国的。その点では日本代表より上だ。監督や選手には、かなり汚いヤジが飛んでいる。だが、メディアは大人しい。その熱は報道にほとんど反映されていない。
 
 世界基準ではないというより、サッカー的ではない。サッカー的な気質との相性が、根本的によくないのだと思う。芽を摘んでいる気さえする。
 
 フットサルの日本代表に三浦カズが選出されたことも、本来意見が割れる話だと思う。否定的な目で見ている人は3割ぐらいいるのではないだろうか。
 
 本来、道理から外れたおかしな話であることは事実。フットサルはサッカーとは完全な別競技で、硬式野球部と軟式野球部、アイスホッケーとローラーホッケーのような関係といっていい。サッカー選手のカズが、サッカーシーズンが佳境を迎える中、J1昇格争いを繰り広げている所属チームを離れ、フットサル選手として、フットサルの大会に出場することは、けっして普通なことではない。
 
 非現実的な世界に身を置くトリックスター。僕にはいまのカズがそう見える。スポーツの王道を行く正統派選手から、常識から逸脱した漫画的なキャラクターへ。異なる世界に転じたことを憂う人がいても不思議はない。違和感を抱かない人は、45歳で現役選手を続けていたこれまでを、すでに漫画的な話と捉えていたのだと思う。カズならオッケーというムードは、彼を色物として認めてしまうことになる。
 
 僕の場合は正直言って、それは良くないといいたくなる自分と、まっいいんじゃないのと肯定する自分とが半分ずつ存在するので、言及はこれまで避けてきたが、7対3でオッケー的なムードにある世の中より、若干厳しい見方といえる。
 
 7対3以上の勢いで、ほぼ全肯定するメディアには一言いいたくなる。その結果、「それは良くない」と、勇気を振り絞って発言する評論家は、際立つことになる。「ちょっと変わったうるさいオヤジ」と、世間から見られることになる。さらに言えば、全肯定するメディアの記事には大抵、署名は入っていない。「全肯定」と「否定」は、無署名記事対署名記事の関係にある。「否定」の意見は、より目立つことになる。ポータルサイトのトピックスに「○○氏は否定」と載ることになる。
 
 その結果「辛口」と位置づけられることになる。僕にもその経験があるので言わせてもらえば、では「甘口」は誰なのだと問いたくなる。甘口の正体が特定しにくい。甘口の意見は目立たないが、辛口の意見は目立つ。それが90対10の関係なら当然だが、70対30でも、60対40でも、さらに言えば50対50でも仕組みになっている。世の中の賛否が真っ二つに割れても、異を唱える人は目立つ。メディアに中立性がないことを証明する一件だと思う。
 
 巷の賛否が50対50でも、メディアは反応しない。一方の「熱」を吸い上げようとしない。80対20になって、ようやく重い腰を上げる。「ある方向」に、あえてズラして伝えようとする。「ある方向」がどちらかは推して知るべし。これでは世の中は良くなっていかない。面白くならない。熱は上がらない。僕はそう思うのだ。