異業種コラボ「ビックロ」の真のターゲットは日本人じゃない?

家電量販店のビックカメラとファストファッションのユニクロがコラボした「ビックロ」が9月27日、東京・新宿東口にオープン。初日には早朝から4000人が行列を作るなど話題を呼んだ。
ユニクロの柳井正(やないただし)会長兼社長は、開店前の式典で「今までにない店舗で日本で一番を目指したい」と語ったが、果たして今回の大型コラボは成功するのか。過去の異業種コラボの例を挙げつつ占ってみたい。
話を聞いたのは戦略PR会社、ブルーカレント・ジャパンの本田哲也社長だ。
「まず、『ビックロ』という名前はいい。すでにネット上でも話題になっていますし、“話題を自走させる”ことには成功したと言えます。莫大な宣伝広告費を投じることなく、ソーシャルメディアを通じて多大な認知度を得ることができたわけです」
ということは、うまくいきそうなのか?
「いや、『世界中から注目される新宿の新名所』とか言いますが、その実態は見た目を変えた、いわば『ビックロ』という仮面をつけただけのように見えます。このままでは結局、『誰のための店なんだ?』という話にもなりかねない。
小売業ではありませんが、思い出されるのは1999年に発足した異業種プロジェクト『WiLL(ウィル)』の失敗です。トヨタ自動車、花王、パナソニック(当時は松下電器産業)、アサヒビールなどの“超強者連合”で話題になりましたが、2004年には公式サイトがひっそりと閉鎖、プロジェクトも自然消滅してしまった。話題先行、消費者不在の典型例です。ビックロでも考えられる最悪のシナリオは、ただ同じビルにビックとユニクロがあるだけという状態。オープンから半年が勝負でしょう」
一方、ビックロの真の狙いは別のところにあると、流通ジャーナリスト・西川立一(りゅういち)氏は言う。
「アジアからの外国人観光客の取り込みです。日本人にとってはビックもユニクロも珍しくありませんし、そもそも家電が売れなくなっていますが、外国人観光客にとっては両者が一緒にあるのは非常に魅力的なんです。
実際、ユニクロ銀座店は外国人客がかなり多いですし、“日本家電人気”も健在で、量販店では外国人を意識した店づくりが最近のトレンド。都心の多くの店では、英語、中国語、韓国語を話せるスタッフが常駐しています」
なるほど、いまいちピンとこなかったコラボは、日本人ではなく外国人に活路を見いだそうとしてのものだったというのだ。
そういえば、東京スカイツリーや羽田空港など外国人観光客が多い場所では、屋内のつくりを下町っぽくしたり、江戸時代風の町並みにしている。
外国人を呼び込むには、何よりもベタが一番というわけか。
(取材・文/頓所直人 興山英雄)