家電と衣料品の夢タッグ、「ビックロ」誕生のウラ事情とは?
不振続きの小売業界から、“ビック”ニュースが舞い込んだ。家電量販店のビックカメラとファストファッションのユニクロがコラボした「ビックロ」という新店舗が、9月27日、東京・新宿東口に誕生するというのだ。いったいどんな店になるのかオープンが待たれるが、そもそも両社はなぜ、今回の異色大型コラボに至ったのだろうか。
まずはユニクロについて、『ユニクロ 増収増益の秘密』の著書がある、流通業界に詳しいジャーナリストの梛野順三(なぎのじゅんぞう)氏に聞いた。
「ユニクロは重大な岐路に立たされています。今年5月までの第3四半期の連結営業利益は275億円で、国内ユニクロ事業の営業利益は204億円。一方、盛んにメディアで取り上げられている海外ユニクロ事業は21億円しかない。買収などで傘下に収めた、その他のグローバルブランドでも55億円。社内公用語を英語にして外国人を積極的に採用しているグローバル企業というイメージですが、内情はかなりドメ(国内中心)な企業です。その上、海外で最も注力する中国マーケットが、ここにきて日中関係の悪化という波に襲われている」
さらに、主力となる国内事業も課題を抱えているという。
「高い製品開発力から生まれた高品質商品の爆発的な販売力がユニクロのウリでしたが、『ヒートテック』『シルキードライ』『サラファイン』以後、近年はヒット商品がないのも悩みの種です。国内販売でもっと斬新なアイデアを出していく必要がある」
一方のビックはどうだろう。“地デジ特需”のテレビ買い替え需要も昨年で終わり、家電量販店はかなり苦戦を強いられている。業界紙記者のH氏に聞いた。
「地デジ特需が終わるまでは、薄型テレビが家電量販店の売り上げの平均2割を占めていました。ところが、今はその大部分が吹っ飛んだ。ビックは、今年8月期の連結経常利益を前期比51%減の110億円と見込んでいましたが、さらに下回りそうな様子です」
またテレビ販売不振以外にも、ビックは業界内の勢力争いでかなり攻め込まれているという。
「ヤマダ電機の攻勢です。ビック池袋本店横の『LABI1日本総本店』に続き、昨年は新宿に『LABI新宿西口館』をオープン。『主要店がヤマダに個別攻撃される』と恐れ、焦ったビックは地方都市に地盤を置くコジマと資本・業務提携をしました。ところが、コジマは収益力に難があり、約200店舗のうち3年で40から50店舗を閉鎖・再配置する方針になっている。今後、ビックの足かせになるとも噂されています。地デジバブルの崩壊とヤマダの攻勢などで、ビックは完全に手詰まりの状態だったといえます」
コラボする両社には、なんとか「現状を打破したい」という強い共通目標があったというわけだ。
(取材・文/頓所直人 興山英雄)
■週刊プレイボーイ41号「謎のコラボ店 ビックロはホントに“夢のタッグ”なのか?」より