(c)New Flesh Films
 夏も終わりいよいよ秋。旅行先で美しい紅葉や、美味しい料理に舌鼓をうつのにもってこいの季節。今回カルト映画のフジモトがご紹介するのは、そんな旅先でとんでもない目にあう人々の恐怖を描いた『インブレッド』。“鬼畜変態映画の究極進化形”を名乗る、イギリス発のトンデモスプラッター映画をいち早くチェック!

インブレッド

人里離れた田舎に、社会奉仕活動として連れ出された4人の少年犯罪者たち。学校に放火したティムと、ピッキング犯のゼブ、乱暴者のドワイト、そして無口な少女サム。保護観察官に引率された彼らが辿り着いたのは、かつて石炭鉱業で栄え、隔離施設があったと噂されるひなびた村。ふとした諍いから村のチンピラに追われる身となった彼らは、村唯一のパブに助けを求める。しかし彼らを待っていたのは、狂った村人たちによって繰り広げられる、前代未聞の“殺人オリンピック”だった!次々に捕らえられ、血塗られた惨劇の晴れ舞台に上げられる彼らを待つ運命は…。(作品情報へ

とにもかくにも容赦なし。残酷描写の限界に挑む

 しょっぱなから言ってしまうが、本作は『テキサス・チェーンソー』のような、いわゆる“田舎に旅行に出かけたらすごい怖い住人たちに襲われました”系ホラーである。こういった作品では、貧困によって虐げられた“ホワイトトラッシュ”と呼ばれる住人たちが独自の村社会をつくり、迷い込んだ部外者をとんでもない目に遭わせる、というものがほとんど。そこには貧困を生み出した社会への皮肉がこめられていたりと、やや陰鬱なことが多い。ところが本作は全くそういったところがなく、むしろ強烈なギャグに精力を注ぎ込んでいる。『フル・モンティ』で炭鉱町の危機をコメディ描写で面白おかしく描いた、イギリス映画ならではといえるだろう。またただ笑えるという訳ではなく、残酷描写に対する情熱が凄まじいのも特徴だ。ホラー大好きっコなら当然期待する“首チョンパ”から、動物を使ったスリル満点の処刑、さらには単純なショットガンを使う殺害シーンにすら様々な工夫がなされているのである。その楽しみ方は、『ファイナル・デッドブリッジ』に近いと言えば伝わりやすいだろう。ただ本作の田舎独特のギミックを使う想像力や、合間合間に入ってくるちょっと抜けた台詞たちは『ファイナル〜』シリーズよりも秀逸。祭りのように騒々しく、奇抜で突き抜けた残酷表現のバリエーションの豊富さは、まさに“鬼畜変態カーニバル”と呼ぶに相応しい。

むざむざ殺されやしないよ。脅威のオバちゃんパワー炸裂!

 さて、本作がひたすら狂った村人による、暇つぶしの殺戮劇が繰り返されるだけの映画か?といえばそうではない。もちろん逃げ惑うのは都会のヤワな不良少年・少女たちや、普通のおじさん・おばさんなので、闘争心などは全く感じられず、最初はただただパニックに陥るのみ。ただしあるイタ〜いきっかけでワイルドに変貌するのが、保護監察官の一人であるケイトである。いわゆる“お節介なオバちゃん”なキャラなのだが、この人が予想外にも、鬼畜な村人たちと一歩も引かない大バトルを繰り広げるのである。そのオバちゃんパワーに興奮しない人はいないはず。そして時には若者を気遣い、ホロりとさせる行動に出ることも…。ハッキリ言って、この作品の主人公はこの人であるといっても過言ではない。観るものを熱くさせるオバちゃんパワーに、ぜひ酔いしれてほしい。そして戦うオバちゃん・ケイトの奮起と男気?に感化され、徐々に不良少年たちも、闘争心を剥き出しにし、血で血を洗う惨劇に発展していくのである。こういったホラーでは意思の強い、いわゆる健康的美少女がヒロインであることが多いのだが、あえてこのオバちゃんを活躍の中心に持ってくる、監督のセンスには拍手を送りたい。

ここだけは要注意!どうしても人を選ぶある場面…

 これだけなら誰でも楽しめる“爽やかホラー映画”とも言えるのだが、一つだけ注意すべきシーンが存在する。それは、近年公開された『ムカデ人間2』にも匹敵する、いや、ある意味それよりも“えげつない”もの。人間を縛りつけ、口からある装置を挿入、あるものを身体の中に注入していく、というチョット想像すると辛くなるような拷問である。かなり強烈なので、確実に人を選ぶ場面だ。ただし、そういったいわゆる“アレ”なものに耐性のある方なら大爆笑のシーンで、本作の見所といえなくもない。個人的な印象としては漫☆画太郎氏の漫画の世界観を、ものすごく忠実に再現したようなシーンで、ちょっとした感動すら覚えたのだが…。まあこれだけ言えばある程度は予想できるはずなので、あとは自己責任で鑑賞すべし。スプラッターは大丈夫だけど、“アレ”なのはちょっと…という方は、このシーンだけ目を閉じるというのもアリかもしれない。

 最初から最後まで、ものすごいハイテンションで、ありとあらゆる残酷シーンが繰り返されるので、やはり人を選ぶことは間違いない本作。しかし、スプラッター映画に耐性のある方にとっては、ひたすら“人体を破壊する方法”に想像力を働かせるその作風に、ワクワク感すら覚えるはず。ただ、あまりにもシンプルに作られているため、もうちょっと長尺でもいいのでは、と感じる方もいるかも知れない。前述したパワフルなケイトオバちゃんの活躍がもっとあれば、さらに振り切った娯楽作品になっていたはずだ。とはいえ、映画館でアトラクション気分で観るのにもってこいの作品であるのは確実。そして驚くべきことに、本作品の劇場公開は日本が最速。ホラー映画ファンならこの機会を逃す手はないだろう。

インブレッド』は9月29日(土)より、シアターN渋谷にて全世界先行ロードショー

『インブレッド』 - 公式サイト



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カルト映画のフジモトの所見評価

【残酷度】★★★★★

【頑張れ!オバちゃん度】★★★★★

【ワクワク度】★★★

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