『図説死因百科』マイケル・ラルゴ (著)/ 紀伊國屋書店

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アメリカでは年間に、3人がワニに食われて、30人がスカイダイビングで、40人がサソリに刺されて、143人が落雷で、1795人が救急車の事故で、3761人が自慰行為でこの世を去っているって言われて、信じられるだろうか? でもこれ、事実なのだ。

若い、といったらある程度の人数に座布団投げられそうな年齢の私も、医療の発達に過度に期待をしていて、まだまだ死ぬなんてことをあんまり考えたりはしない。そして、それはこの記事を読んでいる大半の人にも言えることだろう。

しかし、死は突然訪れる。それは予期もしない原因であり、「ええ! こんな死に方で……!」と思っているうちに息絶えるかもしれない。

そんなことを思い出したのは、この『死因百科』が原因だ。普段より人間の死には、その人の人生を垣間見ることのできるドラマがあると考えている私は、このタイトルに惹かれ、また辞書のように網羅された死因の一覧に釘付けになってしまった。

そもそも、アメリカで発売された書籍を翻訳して出版をしようと思った経緯が気になってしまったので、編集者の和泉さんにインタビューをしてみた。

「私は企画を引き継いで3代目の編集者なので、そもそもの経緯については知らないのですが、おもしろそうな本だなと思っていました。企画が立ち上がったのは2007年で、その後、事実関係の調査に非常に時間がかかり、やっと印刷に出す直前に震災が発生したため刊行を一年延期しました。2012年6月に5年越しでようやく刊行できた書籍になります」

長い! 企画の立ち上げから発行までに丸5年とは、非常に長いがこの内容の厚さとおもしろさであれば納得がいくし、またよくぞ出版をしてくれた! と若干ダークサイド要素が強い私などは感涙ものである。ちなみにもともとアメリカで出版されるまでには、多種多様なデータを統計し一冊の本にまとめるのに10年の年月がかかったそうだ。

実際に、死因の項目として並んでいるものをぱっと見ても「アイスクリーム、フライパン、禁句、毛、たまごっち、猫質、職場でキレる、ドライバー激怒症、トイレの時間、口臭、オーラルセックス、バレンタインデー、キス病、夜驚症、携帯電話、音楽業界……」などこれでは死に至らないのでは…!? と不思議になるものばかりだ。

しかし、これもまた事実である。人の死因を集めて網羅した書籍とは、一風変わった趣向であるが、どんな人にこの本を読んでもらいたいか和泉さんに聞いてみた。

「一度、自分がどのように死を迎えるか考える契機になるので、特定せずいろんな人に手にとってもらいたいと思います。また、多種多様な死因を知ることで日常生活に潜む危険にも用心できるようになるのではないでしょうか? もともとジェットコースターが好きではない私は、この本の事例をもとにジェットコースター好きの妻を制止したりして…あまりなんでも心配したらきりがないですけどね」

確かに、ジェットコースターだって100%安全な訳ではない。日常にはありとあらゆる危険が潜んでいて、それはいつ自分の身に降りかかるか分からない。

明日、突然人生に絶望してしまうかもしれないし、誰かの逆鱗に触れて襲われるかもしれない。まったく何の関係もなく妙な事件に巻き込まれるかもしれない。

人生は予期せぬ出来事で構成されているからこそ、ドラマよりさらにおもしろくまた、だからこそなかなかやめられないものだが、自分が思っているより早く途中退場することがないよう、この書籍で日常に潜む危険について知ってみるのも危機管理能力を上げるひとつの手段かもしれない。

ちなみに、自慰行為で死に至る主な原因は過度な回数ではなく、妙な道具が原因になっていることがほぼらしい。書籍によると、中年男性が行為の最中にドライヤーを使って感電死した事例があったらしいが、どう使ったのかは判明されていないそうだ。

先日、そんな話を男友達と飲んでいた際にしたところ、大いに盛り上がったので話題のひとつとしても、お勧めの書籍である。(気になっている異性に話をした際の結果については、当方は一切の責任を負いかねます)
(梶原みのり/boox)