新京報、中国新聞社など中国メディアは17日、中国とブータンは国交の樹立を望んでいるが、問題は「インド要因」と主張する論説を掲載した。

 中国の傅瑩外交副部長(外務副大臣)は8月、ブータンを訪れ同国のワンチュク国王と会談した。それに先立つ6月には、中国の温家宝、ブータンのジグミ・ティンレイの両国首相が訪問先のブラジルで会談。いずれの場合も、双方は国交の樹立について言及した。

 論説は、中国とブータンは国交は樹立されていないものの、「友好的な隣国」と紹介。ブータンの地理については「北、東、西の3方面は中国と、南はインドと接している」、「ブータン人の生活習慣は中国のチベット族と類似している。国教はチベット仏教(カギュ派)」などと紹介した。

 ブータンと中国(チベット自治区)の国境は未確定であり、両国は1984年以来、20回以上も協議を繰り返してきた。8月にブータンを訪問した傅外交副部長は国境問題についての話し合いで「1984年以来の重要な進展を得ることができた」などと説明した。

 論説は、「清朝時代、中国とブータンは国境について、臨機応変に対応しており、確定していなかった」と説明。「新中国(中華人民共和国)が成立した初期、ブータンは双方の主張に食い違いがある国境地帯の一部に監視所を設けていたが、実際にはインド軍が支えていた」と主張した。

 中国とブータンの交流については「インドで多くの反応がある」と紹介。インターネットで見られた「1970年代のシッキムと同様にブータンを処理せよ」などの意見を紹介した。シッキムは1975年に、国内の混乱もきっかけとなり、インドに併合された。

 雲南省社会科学院の楊思霊研究員は、「ブータン経済はインドの手に握られている」と指摘。「ブータンの通貨、ニュルタムは、インドのルピーと連動している。ブータンが消費する石油製品は、すべてインドからの輸入。ブータンの水力発電量の9割はインドが購入している。インドが購入をやめれば、ブータン経済は破綻(はたん)する」と紹介した。

 1949年の「インド・ブータン永久平和友好条約」には、「ブータンの外交はインド政府の意見と指導による」と明記されていた。07年の「ブータン・インド友好条約」で、外交におけるインドの「意見と指導」の条項ははずされたが、「ブータンの外交はインドの国益を損ねてはならない」と定められた。

 楊研究員は、インドのインターネットにおけるブータンに関連する強硬な意見表明を「インドの一部勢力が、1947年以前のイギリス帝国主義の政策を延長したいと意図している。しかし、すでに21世紀だ。そんな願望は心情的な願いにすぎない」と主張し、中国とブータンの国交樹立を「時間の問題」と論じた。

 楊研究員によると、中国とブータンが国交を樹立すれば「南アジア地域の戦略的相互信頼と、中国と南アジア地域の経済協力がレベルアップする。同時に国境確定の阻害要素も排除できる」という。(編集担当:如月隼人)