夏かぜは馬鹿が引く……よく聞くウワサの真相は?

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元気いっぱいでお調子者だった小学生の私に「馬鹿は風邪ひかないからな〜」と言ったA君。
「馬鹿じゃないもん!」と反論したものの、内心は「えっ、そうなの?」と、うろたえたあの頃。確かに私は風邪をひくことなく、おバカな毎日を過ごしていたのですが……。
ただのウワサか迷信か――古くから広く使われてきた“慣用句”であると知ったのは、ごく最近のこと。
慣用句辞典によれば、
【馬鹿は風邪を引かない(ばかはかぜをひかない) 】
馬鹿は冬にひいた風邪を、夏になってやっと気がつくから、と。

なっ、なんと、冬にひいた風邪をそのときは気がつかず、春を経て、夏になって気がつくという、
それくらい愚鈍である=馬鹿であるという意味だったのです! これ、驚きですよね?
私を含むおおかたの人は、その言葉通り、馬鹿な人は風邪を引かないものなのだと、半信半疑ながらも信じていたのではないでしょうか。
風邪を「ひかない」、のではなく「気がつかない」、ということだったとは!
ということは誰でも、やっぱり風邪は引くってことですね。

さて、【夏かぜは馬鹿が引く(なつかぜはばかがひく)】。
これは【馬鹿は風邪を引かない】の類語として、慣用句辞典に載っていました。

夏に風邪を引いた家族や友人、知人を見渡し、やっぱり……と、密かに思っていた人もいるかもしれませんが、こちらも、愚鈍な者は冬に引いた風邪を夏になってから、かかったのだと気がつく。馬鹿はそれほど愚鈍である、という意味とのこと。
誤解した人が多かったために、夏かぜを引く者は愚か者であるという意味も、後から加えられたようです。

しかし、本当に風邪を引いているのに気がつかずに過ごしてしまう人って、いるのでしょうか。仕事などが忙しくて、風邪を引いている暇はないと、誤魔化しているような人はいると思いますが―本当に気がつかずに済んでしまうなら、馬鹿の方が幸せですよね。
あっ、後になって気がついたときには悪化していて、やはり気がつかずに馬鹿だった! というオチでしょうか。

さらに類語には、こんなものもありました。
【夏の風邪は犬も引かぬ(なつのかぜはいぬもひかぬ)】 
暑い夏に風邪を引くのは、ばかばかしいことだ、と。

熱帯夜にエアコンを効かせすぎて夏かぜになるなど、自らの不注意によることが大半だから、引くのはばかばかしい、という風になったのでしょう。
韓国でも夏に風邪をひいた人をからかうのに【五六月の風邪は犬も引かない】と使うようです。旧暦五六月を指し、暑い季節ということ。

ちなみに犬は、人間と同じような風邪の症状が出ることはあるけれど、「風邪」と呼ぶ病気はなく、その原因も人が感染するウイルスとは違う種類のものなので、人間の風邪が犬にうつることも、またその逆もないのだそうです。

ああ、知っているようで知らないことって、多いですよね。
今回ご紹介した慣用句の意味も、目から鱗だったのではないでしょうか。

最後にもうひとつ、私が勘違いしていた慣用句をご紹介。
それは【病は気から(やまいはきから) 】。

これ、病気で弱っている人に言ったことはありませんか。
私は「気持ちをしっかり持つことで、病を寄せつけるな!」という激励の意味で使っていましたが、この“気”とは、気持ちではなく、現代医学の言葉で言うところの“自律神経”を指しているのだそうです。ゆえに「病は自律神経の乱れ=ストレスから」という意味だということが、東洋医学の観点からわかるとのこと。
私は思いっきり間違って使っていましたが、励ました相手も同じ認識だったので、良しとしますか――みなさんはいかがでしょうか。
(エキサイトニュース編集部)