テレビ東京が'15年秋をメドに、現在の虎ノ門4丁目(港区)から六本木3丁目(同)に移転する。
 かつて日本IBM本社ビルとヴィラフォンティーヌ六本木アネックスビルがあった跡地(六本木三丁目東地区第一種市街地再開発事業)で、そこに地上42階のビルが建てられ入居することになった。
 現在は本社周辺の複数のビルに関連会社が分散している。それらを一カ所にまとめて、効率を上げるのが第一の目的。さらに、放送マスターを最新設備に更新させる狙いもある。
 「テレ東は30年前、東京タワーのビルから虎ノ門の本社ビルに移転したが、いまの物件は日経新聞の所有。保有不動産といえば天王洲スタジオだけの身軽さだから、いつでも移転できる。他局ではこうはいきません」(テレビ業界事情通)

 ただし移転費用はバカにならず、180億円程度を見込んでいるという。それだけの資金が掛かるため、よほど決算がいいのか。いや、実際はさほどでもないのだ。
 先日発表した'12年3月期決算は、売り上げが1115億円、経常利益が25億円、最終利益が13億円。当初は赤字を見込んでいたが“副業”がよくて、結果として好転した。'13年3月期見込みも売り上げ1130億円で微増、経常利益が29億円、最終利益が19億円と増収増益を見込んでいる。
 それほど利益を出してはいないために、こんな声も聞こえてきた。
 「テレ東の強みは、放送事業よりも手つかずのプール資金が300億円あることです」(前出・テレビ業界事情通)

 移転の原動力となるのが、先に触れた“副業”。低視聴率でも食いつきのいいドラマを映画・DVD化し、利益を上げるテレ東マジックが貢献しているのだ。
 昨年、ドラマで放送していた長澤まさみ・森山未來『モテキ』を映画化し、興収25億円も稼いだ。また、長谷川博巳『鈴木先生』はDVD販売が好調だったため映画化し、現在、撮影中。さらに山田孝之『勇者ヨシヒコ 魔王の城』はDVDがバカ売れし、パート2が決まった。
 低視聴率ドラマでも、反響があれば別メディアで再売出しで稼ぐシステムを築いたわけだ。これでテレ東は、10数億円の実利を上げたのである。

 意外なところで稼ぐテレ東だが、今後も継続して移転費用の一部をDVDと映画から捻出できるかどうか。