――チャーリーを演じたヒュー・ジャックマンは、実生活では良き父であり、愛妻家であることが知られていますが、自分にとって理想の父親像や男性像はありますか?

長野:基本的に強い人がいいんですけど、“強い”というのは肉体的な強さではなくて、内面的にどんなことがあっても支えてくれるような、大きな父親や男性がいいなと思います。学校の男子にも多いんですけど、最近「草食系」みたいなのが流行っているじゃないですか。恥ずかしがり屋とかが多いので、もっと自分の意見をストレートに言ったらいいんじゃないかなと。格闘技をやれば外見だけじゃなく、中身も男らしくなれると思うので。世の中の男性にもっと強く、男らしくなって欲しいです(笑)。

――タイトルの『リアル・スティール』には“本当の強さ”という意味が込められているのですが、長野さんにとって“本当の強さ”とは何ですか?

長野:“強さ”の反対で、逆にどれだけ打たれても負けずに立ち直っていく、負けても「また絶対に勝つ!」と思う精神力の強さとか、「負けないぞ!」という気持ちが“本当の強さ”だと思います。

――チャーリーとマックスの親子を近くで見守るベイリーという女性が存在しますが、長野さんは自分自身のためだけではなく、誰かのために戦っているような感覚はありますか?

長野:ベイリーは「もう面倒見きれない」と言っているのに、なんだかんだ言って「もう1回だけね」と面倒見ちゃう所とかが、私の母と一緒で(笑)。「ダメだよ」と言っても、心のどこかでは「頑張って欲しい」というのがすごく伝わってきて、共感できました。私も「自分自身に負けたくない」気持ちもあるけど、お母さんが「日本一になって欲しい」と応援してくれていて、道場に連れて行ってくれたり、面倒を見てくれているから、自分が試合で勝つことによって、お母さんや教えてくれた先生たち、周りの人が少しでも喜んでくれて、恩返し出来たらいいなと思ってます。

――ヒュー・ジャックマンはチャーリー役を演じるに際し、5階級制覇を成し遂げた伝説のチャンピオン、シュガー・レイ・レナードからボクサーの肉体作りだけでなく、セコンドが果たす重要な役割について多くのことを学んだそうですが、長野さんにとってセコンドとなる存在はいますか?

長野:もちろん、監督ですね。ATOMは最後まで耐え抜いて戦いましたが、私はどちらかというと、試合が始まった時点でどんどん攻め込む戦い方の方が好きで。でも、攻め込んでしまうと自分が見えなくなってしまうので、後ろに立ってくれている監督が「ちゃんと構えろ!」とか「下がれ!」とか言ってくれることで、やっと周りが見渡せて、落ち着いてまた試合ができるんですよね。

――本作の舞台は、人間のボクシング人気が衰退して、新たに誕生したロボット格闘技が人気を集める時代背景にありますが、やる側、観る側として、空手や格闘技の人気、魅力はどこにあると思いますか?

長野:やる側だと、対戦相手と触れ合って戦うので、「負けない!」という気持ちが高まって、より白熱した試合になると思います。観る側だと、自分だけかもしれないんですけど「やられた!」とか「今押されて負けてるな」という所がすぐに分かるので、臨場感がすごくあって燃えちゃいますね! 私の通っている道場は女性の方が多いんですけど、男性だけじゃなくて、女性の競技人口も増えているんですよ。テレビとかでも注目されているように、女性でも強くなれるのが、格闘技の良い所だと思います。私が5歳で空手を始めた時よりも、今は試合の数もどんどん増えていっているし、去年はオリンピック競技候補にまで上がっていましたし。女子アスリートの中でも武道家が注目されていると思うので、この調子で競技人口が増えていって、オリンピック競技になって欲しいですね。

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